軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話 聖女セレスティアとは何者なのか(レインアルド Side)

レインアルド Side

「陛下、やはりさっさとあの王女を始末するべきではないのでしょうか」

側近のクオンが二人になったところで言い寄ってきた。

「どこに耳があるかわからないから陛下はやめろと言っただろう」

「申し訳ございません。レインアルド様」

「ここではリヒトだ」

「はい」

忠義に厚いのはいいのだが、すぐに感情的になるのはどうにかならないものなのか。

今回も私一人で行くと言ったのに、ついてくる始末。

私がここにいる理由は聖女セレスティアという者と接触するためだ。

何度かその聖女セレスティアという者と接点を持とうと人を送るが、誰も会うことが叶わずに戻ってくるのだ。

ここに来てわかったことだが、恐らく敵意のあるものは近づけないのではないのか。

現にクオンが何度か聖女の存在を見失っているのだ。

「第六王女か。かなりの財を持っているという噂も本当のようだ」

半年間過ごすように与えられた天幕は、かなり広いものだった。ただの護衛に与えるものではない。

それに一通り中を見回ったが普通はキッチンやトイレやバスまでつくことはない。

それこそ王族に与えられるような代物だ。

「この天幕を陛下……リヒト様に与えたことには感心しております」

……私の正体に気づいている? まさかな。

「ですが、王族としてはありえない行動ばかり、兵と同じ食事を食べ、あのようなことを口にするなど……」

クオンが煙たがっているのも仕方がないが、あの姫は王族なのだ。

何がこの場に足りていなかったのか理解して施しを行っているのだろう。

契約書にサインをしたあとに、着いてくるように言われたのだ。

「ここで、食事の提供を行っています」

示されたところには給仕の女性たちが、兵士に食事を配っているところだった。

長いテーブルの上に鍋や大きな皿が並べられ、兵士たちがトレイを持って順番に並んでいる。

それが私には不思議でならなかった。

「なぜ並ぶのです?」

「え? 並ばないでどうやって食事を提供するのですか?」

「好きなように取っていけば、時間がかからずにすみますよね」

「うーん? それだと好きなものしか食べない人が出そうなので却下です。身体をつくるにはたくさん食べることも必要ですが、色んなものから栄養を取ることも必要ですから」

そう言って姫自身もトレイを持って並びだしたのだ。

「侍女に任せないのですか?」

「え? ライラに二つも持たせるのですか?」

「盛大に落とす自信があります」

普通は姫の分だけ用意すべきことで、使用人の分は別という発想がないのだろうか。

だが、その答えはすぐにわかった。

使用人である侍女と共にテーブルの席についたのだ。普通ではありえない。

「使用人と一緒に食事を?」

「何か問題でも? それに、ここで偉そうぶっていてもなんにもなりませんよ」

これが、聖女セレスティアとして慕われている理由なのだろうか。

「あと、お酒とタバコなどの嗜好品は買えます。甘味は早い段階で売り切れるので、あのような行列になっています」

食事をとりながら説明してくれるが、金を取るのか?

「嗜好品は個人の好みですので、購入してください。あと、お金はここで落としていってください」

ん? これは前払いの金貨三枚を回収しようという魂胆なのだろうか。

いや、そもそも人集めの段階でばらまいているので、そういう意味ではないのだろう。

「それから、腕に赤いリボンを結んだ女性がいます。彼女は夜の相手をしてくれます。お金次第で、キープもできます」

「は?」

「彼女たちは夫を戦争で亡くして生きるために、この仕事を選びました。だからと言って暴力とかは駄目です。そんなおバカさんの一物は私がちょん切ります」

その言葉に周りから悲鳴が上がっている。姫君とあろうものが脅し文句だとしても、そのようなことを言うべきではない。

「因みに十五人ほど施行されております。姫様のお力のおかげで、予後は全く影響なく暮らしておいでです」

侍女の言葉を聞いた者の心の声が聞こえたような気がする。絶対に影響がないということはありえないと。

「今まで王城でぬくぬくと暮らして来たものが、そのようなことができるはずないだろう」

クオン、第六王女の資料を渡したはずだが、読まなかったのだろうか。読んでないのだろうな。

「それはですね。神の奇跡で消滅させましたので、私が直接何かをしたわけではありません」

そう言って、今までちぎって食べていたパンに齧り付く姫。

再びどこからか、悲鳴が聞こえてくる。

そして、早食い競争のように周りの兵たちが急いで食べだし、逃げるように去っていった。

確かに姫からは全く魔力を感じられない。だから、何かしらの魔法を使うようには見えない。

そして侍女と言えば、そこまで魔力量は多くなく、姫の代わりに何かをするには、能力不足なのだ。

神の奇跡とはやっかいなもののようだな。

そうして、休むようにと豪華すぎる天幕を与えられたのだ。

「やはり、あれは聖女を騙った偽物でしょう。さっさと始末して帝国に戻るべきです」

「クオン。ここに潜らせていた者がいるだろう。こっそりと連れてこい」

「はっ! 聖女もどきを始末する算段ですね!」

いや、報告を聞きたいのだが。

「マジ、天国っす!」

一般兵に扮し潜り込ませていた者の第一声がこれだった。

「去年の秋からいるんっすけど、レアーナちゃんがチョーかわいんっす!」

何の報告なのだろうか。

敵の内情を知りたいのだが。

「ファスト軍曹。陛下に何の報告をしているのだ。貴様がすべきは得た情報の報告だ」

「はっ……とは言っても、飯が美味いっす。三日に一度は肉の塊が出るっす! それから七日に一度は休みがもらえるっす! レアーナちゃんに会うために頑張れるというものっす!」

これは懐柔されていないか?

「はぁ……他の情報はないのか?」

「そおっすね。一度、肩に大怪我したっすけど、聖女様が優しく治してくれたおかげで、どんな過酷な戦場でも耐えられるって感じっす」

ここまで聞いて流石におかしいと感じてきた。

なんだ? まるで洗脳されているみたいではないか。

「聖女暗殺の任も言い渡していたが、聖女と接触したときにやろうと思わなかったのか?」

「……それ無理っす」

いい切ったということは、実行しようとしたということか。

「なぜだ?」

「潜り込んだ者の内で生き残っているのは俺だけっす。あとは全員、死んだっす。あ! 今日はたまたま非番なので後方にいるっす! 明日からはまた前線なので、俺はレアーナちゃんのところに行くっす!」

ファスト軍曹は逃げるように天幕から出ていった。

送り込んだ者が全員死んだだと?

暗殺専門部隊の者もいたはずだが。

これは、やはり普通ではない何かがあるのではないのか。

「人の命を奪う神とは何なのだろうか」