軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第11話 なぜ、私が治療しなければならないのかしら?

私は長椅子に腰掛け、ライラの淹れてくれたコーヒーを飲んでいます。

その横で何故か皇帝が座り、書類に目を通しています。

テターニア王国を制圧したという将軍の報告書ですね。

これ私の横で読むものではないと思います。

「セレスティア様」

皇帝から名を呼ばれてビクリと反応してしまいました。

様付け!

「あの……皇帝陛下からそのように呼ばれると困ります」

「皇帝陛下など、今までどおりリヒトとお呼びください」

正体を知ってしまった今、呼べるはずないではないですか!

壁際に立っている使用人の女性たちやクオンからの視線が痛いです。

「しかし皇帝陛……」

「リヒトです。セレスティア姫」

「ふぉっ!」

様付けが困ると言えば、次は姫! ……それはちょっと……

「その呼び方は好きではありません」

ライラが私を姫しか呼ばないのは、そうお願いしたからです。

名の後に姫をつけられると、身構えてしまいますから。

「そうなのですか? では、ティア姫。私のことは今までどおりリヒトですよ」

ティア! これはこれで私がなんだか恥ずかしいです。

しかし、セレスティア姫と呼ばれるより百倍ましです。

「わかりました。リヒト様」

「呼び捨てでいいと申しましたのに」

……それはいろんな意味で絶対に無理!

「それでティア姫のお戻りを王族の方々がお待ちだそうです。如何なさいますか?」

「……敬語もやめて欲しいです。それは王族を集めるようにと、そちらから要望をだしているのでしょう?」

「いいえ、ティア姫はここで滞在していただくと決めていましたので、招集からは外されています」

ああ、皇帝であるリヒトが私の側にいたので、煮るなり焼くなり好きにできるという意味ですね。

それで、王族の招集から外れていたと……でも、戻ってくるようにと伝令が来ましたわよ?

「しかし、昨晩戻ってくるようにと伝令がありましたよ?」

「おそらく、これの件だと思います」

リヒトは報告書のある部分を指して言いました。

って! それって私に見せていいやつではないですよね?

そこには、第二王子が意識不明の重体とありました。

はぁ……これは王族として戦ったものの負けたというやつですわね。それがどうして私が戻ることになるのですか?

「これがどうしたというのです?」

「治療して欲しいのでしょう」

「……治療? 私が? 第二王子を? 王太子の腰巾着を? 穢れ姫とか言って泥水を被せてきたり、虫の死骸を投げつけてきたり、冬の池に突き落としたりしたアレを私が助ける?」

冬の池は流石に嫌でしたので、身体の周りに結界を張って、派手に落ちた風を装って、第二王子と当時第一王子に凍るような冷たい池の水をかけてやりましたけどね。

まぁ、そういうのがあり王城にいたくなくて、父王に土地が欲しいと言ったのです。

逆らうことが許されない二人からのいじめから逃げるためです。

「ほぅ」

温度のないリヒトの声に肌がざわつきます。金色の瞳を細めている姿に、ゾクッと悪寒が走りました。

「それでは、ティア姫は国に戻られないでよろしいでしょうか?」

そう聞かれると違うと言いたい。

王族として、私はその場にいなければならないでしょう。

そう、今後テターニア王国がどうなるか決定されるその場にです。

「私も王族です。国がどのような形になるかは見届けなければなりません」

「わかりました」

戻りますが、第二王子の治療は致しませんわよ。

それから、リヒトと一緒に朝食をとり、その後城内を案内するというのを断り、私はよくわからない部屋に閉じ込められてしまいました。

えっと、先ほどまで侍女長という人が城内を案内してくれていたのです。

そしてライラは私の侍女として色々覚えないといけないことがあると別の人に連れて行かれたので、私の側にはいないのです。

さて、ここはどこなのでしょう?

確か部屋にも浴室があるけど地下には大きな浴場があると言われ案内されたのです。確かに大きな浴場はありました。

そして、その近くに書庫があると言われ、ここが書庫になりますと扉を開けられたあと、背中を押されて部屋に閉じ込められてしまったのです。

暗すぎて何の部屋かわかりません。

「えーっと…… 光よ(リレイア) ……っ! 眩しい!」

私が光を灯す魔法を使えば、視界が真っ白になるほどの光が放たれてしまいました。

「もっと弱く空間がほのかに光る程度」

いつもこうやって調整しないと、普通の魔法が使えないのです。調整が難しい転移は、私が爆心地みたいになってしまうのですけどね。

淡い光に満たされた空間は、本当に書庫でした。しかしあまり使用されていないのか、埃が舞っています。

後ろを振り返ると、入ってきた扉があり、ドアノブを回しても回らないので、やはり閉じ込められたみたいです。

それよりも、先に空気を綺麗にしたいです。

埃臭いし、カビの匂いも混じっていて、動くと咳込みそうですもの。

「空気清浄」

あ、空気だけ綺麗にするはずが、部屋全体が色鮮やかになった気がします。

「おお! 床に怪しい模様。壁に同じ模様があるから、場所のマーク? その側に魔法陣もある……見たことあるなぁ。これは短距離転移で荷物を運ぶときに使っていたやつと似ている……ということは、書庫内を転移陣移動できるとか? ……まぁ、私は魔力がないからこういうのは使えないんだよね」

大きな独り言を言いながら、私は書庫の中を歩いて、見たことがない本に心を躍らされていたのでした。

こうして、皇城での初日は、地下の書庫で本を読み放題で終え……終わらなかった。

「セレスティア様を閉じ込めた者は始末しておきましたので、ご安心ください。今後はこのようなことが起きないように私が案内させていただきますね」

笑顔で恐ろしいことを言うリヒトに、全く安心ができないのでした。