軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【開廷】被告人・創造神。罪状『職務怠慢』および『公金横領』

食堂での騒動を終えたリベラは、その足で本丸である「校長室」へと向かった。

学校の 責任者(カイト) があの様子だ。トップである校長も推して知るべしだが、まずは挨拶と現状確認が必要だ。

「失礼しますわ。ゴルド商会のリベラです」

ノックをし、重厚な世界樹の扉を開ける。

そこは神聖な学び舎の頂点。

さぞかし威厳ある空間が広がっている……はずだった。

「うぃ~……ヒック。いけるわね、この芋焼酎……」

「……は?」

リベラの思考がフリーズした。

執務机の上には書類の山……ではなく、空になった一升瓶と、大量のスナック菓子の袋。

そして、校長の椅子でだらしなく足を投げ出し、ジャージ姿でスルメを齧っている創造神ルチアナの姿があった。

「あれぇ~? 誰ぇ~? 飲みなら参加費払ってよねぇ~」

「……これは?」

リベラの後ろからついてきたカイトとルーベンスも、部屋に入ってくる。

「何よぉ、私の勝手でしょ。校長室は私の城よぉ」

ルチアナは悪びれもせず、スルメを「クチャクチャ」と噛み千切った。

その瞬間。

リベラのこめかみに、青筋が「ピキピキ」と音を立てて浮かび上がった。

「職務中に……飲酒、ですか……」

リベラの周囲の空気が凍りつく。

教育者としてあるまじき行為。いや、社会人として終わっている。

「ルチアナ! 貴様!!」

たまらず事務長ルーベンスが怒鳴り込んだ。

「その酒と大量の菓子はどこから持ってきた! 天界からの配給は先週止めたはずだぞ!」

「え、えっとぉ……これはその……私のポケットマネーで、地球から通販を……」

ルチアナの目が泳ぐ。冷や汗がダラダラと流れ始める。

「嘘ですね」

冷徹な声と共に、天使長ヴァルキュリアが部屋の隅から現れた。彼女の手には一冊の帳簿が握られている。

「監査の結果、帳簿に不審な出金記録があります。『教材費:300万ゴールド』。……すべて、地球の商社への送金記録と一致しました。つまり、学校の運営費です」

「ま、まさか!? ば、バレた!?」

ルチアナは顔面蒼白になり、焼酎の瓶を取り落とした。

ガシャン! と瓶が割れる音が、彼女の社会的地位の崩壊音のように響く。

「……ルチアナ」

カイトが悲しげに眉を下げた。

「酷いよ。子供たちのための教科書代を、お酒に変えちゃうなんて……信じていたのに」

「あ、ああっ! 違うのカイト! これは、その、私の脳細胞を活性化させるためのガソリンで……!」

「言い訳無用ですわ!!」

リベラが叫んだ。

その瞳には、かつてないほどの正義の炎が燃え盛っている。

「カイト様の……そしてこの学校の未来のために! 貴女の罪、法の下に裁かせていただきます!」

リベラは右手を高く掲げた。

女神ルチアナから(面白半分で)与えられた、最強にして最悪のユニークスキル。

まさか、その最初の犠牲者が授与者本人になろうとは。

「スキル発動――【 天上天下唯我独尊(ザ・コート) 】ッ!!」

キィィィィィィンッ!!

世界が反転する。

校長室の壁が消え、空間が歪み、そこは無機質で神聖な「法廷」へと作り変えられた。

「な、何これ!? 魔力が……使えない!?」

ルチアナが慌てて魔法を使おうとするが、指先から火花一つ出ない。

物理法則も、神の権能も、カイトの概念干渉すらも無効化される、絶対公平なる法の結界。

ダンッ!!

高い壇上で、巨大な木槌(の代わりに聖槍グラニ)が叩きつけられた。

「これより、被告人ルチアナの『業務上横領』および『職務怠慢』に関する裁判を開廷します」

裁判官席に座っているのは、黒い法服をまとったヴァルキュリア。

検察席には、鋭い眼光のルーベンス。

弁護人席には、リベラ。

そして被告人席には、檻に閉じ込められたジャージ姿のルチアナ。

陪審員席には、ポカンとしているカイト、ポチ、そしてアレン(5歳)がランダム選出されて座らされていた。

「さて、被告人」

検察官ルーベンスが眼鏡を光らせ、領収書の束を突きつけた。

「この大量の『お菓子代』および『酒代』。これらは全て学校運営費から流用されたものですね? 証拠は全て揃っています。……さあ、罪を認めなさい!」

「ひぃぃッ! だ、だってぇ! ストレスが溜まってたんだもん!」

ルチアナが檻の格子を掴んで泣き叫ぶ。

圧倒的に不利な状況。

だが、リベラは静かに立ち上がった。

「異議あり(オブジェクション)。検察官、被告人を追い詰めすぎですわ」

「なっ……リベラ殿!? 貴女がスキルを発動したのでしょう!?」

「ええ。ですが、私は弁護士。どんな罪人にも弁護を受ける 権利(ライツ) はあります」

リベラはニッコリと笑い、被告人席のルチアナに向き直った。

その目は「罪を憎んで人を憎まず」の慈愛に満ちている。

「安心なさい、ルチアナさん。貴女が『ダメな神様』であることは事実ですが、法は貴女を見捨てません。……さあ、戦いましょう。私たちの正義のために!」

「リ、リベラちゃぁぁん!!」

ルチアナが縋るように叫ぶ。

こうして、カイト農場史上初となる、神をも裁く「法廷バトル」の幕が切って落とされた。