軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 3

【給食】本日のメニュー:Sランクドラゴンのハンバーグ(魔力増強剤入り)

地獄の体育(ブレス回避訓練)を生き延びた生徒たちは、ゾンビのような足取りで食堂へと辿り着いた。

だが、その扉を開けた瞬間、彼らの表情が一変した。

「な、なんだこの匂いは……!?」

漂ってくるのは、暴力的なまでに食欲を刺激する肉の香り。

香ばしい焦げ目、濃厚なデミグラスソース、そして炊きたての米の甘い香り。

そこは学校の食堂ではない。三ツ星レストランの厨房だった。

「並べ。順番だ」

カウンターの奥で、割烹着姿の鬼神・龍魔呂が仁王立ちしていた。

その手には、巨大なお玉が握られている。

「今日のメニューは『特製ハンバーグ』だ。付け合わせは黄金キャベツの千切りと、エリクサートマトのマリネ。残したら殺す(比喩ではなく)」

「は、はいぃッ!!」

生徒たちは震え上がりながらも、トレイを持って並んだ。

皿に盛り付けられたのは、子供の顔ほどもある巨大なハンバーグ。肉汁が滝のように溢れ出している。

「い、いただきます……!」

一人の魔族の少年が、震える手でハンバーグを口に運んだ。

その肉は、カイトが昨日狩ってきた「エンシェント・ファイアドラゴン(古代火竜)」の希少部位を、龍魔呂が三日三晩叩いて筋繊維を破壊し、極限まで柔らかくしたものだ。

パクッ。

ジュワァァァ……!

「ッ!!??」

少年の目がカッ! と見開かれた。

美味い。

美味いとかいう次元ではない。

噛み締めた瞬間、ドラゴンの生命エネルギーが爆発し、胃袋から全身の血管へと駆け巡る。

ドクンッ!!

「う、うおおおおおおッ!!?」

少年の体から、赤いオーラが噴出した。

痩せっぽちだった腕の筋肉がムクリと膨れ上がり、額の角がニョキニョキと伸びていく。

「ち、力が……力が湧いてくるぅぅぅッ!!」

「俺もだ! 筋肉が唸っている!」

「魔力が……魔力が溢れて止まらないよママァ!」

食堂のあちこちで、スーパーサイヤ人のような 覚醒現象(レベルアップ) が発生した。

ハンバーグ一口で、彼らのスペックは昨日の自分を遥かに凌駕してしまったのだ。

「おかわりぃぃぃッ!!」

「おう、食え食え」

龍魔呂は満足げに頷き、次々とハンバーグを放り込んでいく。

「育ち盛りだ。Sランクドラゴンの肉には『魔力増強効果』と『肉体活性化』のバフがある。体育で減ったスタミナなんぞ、これで釣りが来るわ」

その横で、アレン(勇者の息子)は既に五皿目を平らげていた。

「おいし~! 龍魔呂おじちゃんのハンバーグ最強~!」

「アレン、お前は食い過ぎだ。……まあいい、将来有望だな」

龍魔呂は口元を緩め、アレンの頭に角砂糖を乗せてやった。

「すごいなぁ……みんな、元気いっぱいだね」

食堂の入り口で、カイトがその光景をニコニコと眺めていた。

生徒たちは体が発光し、一部は 種族進化(エボリューション) を遂げているが、カイトには「子供がすくすく育っている」ようにしか見えていない。

「カイト殿……これは『給食』ではありません」

隣で胃薬を飲んでいるルーベンスが、幽霊のような声で突っ込む。

「これは『ドーピング』です。もしくは『魔改造』です。あの子たち、入学時と比べて戦闘力が5倍になっていますぞ」

「え? ご飯を食べて大きくなるのは普通でしょ?」

「大きくなるスピードと方向性が異常なのです!!」

ルーベンスは頭を抱えた。

この学校、卒業する頃には生徒全員が「魔王クラス」になっているのではないか。そんな怪物を世に放っていいのか。

だが、そんな懸念をよそに、子供たちの笑顔は輝いていた。

「学校ってすごい! 美味しい!」

「明日も来たい! 体育は嫌だけど給食は最高!」

地獄と天国のアメとムチ。

カイト分校は、こうして生徒たちの心を(胃袋から)鷲掴みにしていった。

しかし。

その平和な(?)ランチタイムに、ついに冷徹な足音が近づいていた。

「……信じられませんわ」

食堂の入り口に、純白のスーツに身を包んだ美女が立っていた。

手には六法全書。

瞳には絶対零度の正義感。

最強の弁護士、リベラ・ゴルドである。

「未認可施設での集団食事提供……しかも、食材の衛生管理および成分表示が不明瞭。これは食品衛生法、および薬事法に抵触する恐れがありますわね」

彼女は眼鏡をクイッと押し上げ、カイトを指差した。

「そこの貴方! この施設の責任者ですわね? お話を伺いましょうか!」

ついに、カイト農場に「法」のメスが入る。

だが、彼女はまだ知らない。

この給食を作っている料理人が、かつて数千人を屠った元・処刑人であり、これから出される「プリン」の味が、彼女の信念を揺るがすことになろうとは。