軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四章 学園生活と地下アイドル

王立学園に神々が登校した件

大陸の中央部に位置する学園都市「アカデミア」。

その中心にそびえ立つのが、各国から選りすぐりのエリート魔術師や騎士志望者が集う最高学府、『王立魔法学園』である。

その威風堂々たる正門の前に、一台の馬車が到着した。

「わあ……! 大きいなぁ! お城みたいだ!」

馬車から降り立ったカイトは、尖塔が立ち並ぶ白亜の校舎を見上げて感嘆の声を上げた。

彼の認識では、今日は「近所の学校に野菜の作り方を教えに来た」だけの、ちょっとした出張授業だ。

だが、周囲の認識はまるで違っていた。

カイトの後ろからゾロゾロと降りてきた面々。

ジャージ姿だが神々しいオーラを隠せない女神ルチアナ。

派手なドレスで扇子を仰ぐ魔王ラスティア。

ねじり鉢巻に葉巻を咥えた竜神デューク。

黒いスーツにサングラスをかけた強面の鬼神龍魔呂。

そして、カイトの肩に乗る始祖竜ポチ。

――どう見ても、国を一つ二つ滅ぼしに来た「魔王軍(物理)」である。

「お、おい見ろよ……あの一行」

「すげぇ魔力だ……。何者だ?」

門番の学生や、通りがかりの生徒たちがざわめく。

彼らはカイトたちを「他国のVIPか、伝説の冒険者パーティ」だと思い込み、恐怖と好奇の視線を向けていた。

「それではカイト殿、参りましょうか」

引率役(兼・胃痛係)の魔族宰相ルーベンスが、眼鏡を押し上げて先導する。

正門には、入校者の魔力を測定するための関所があった。

「と、止まれ! 部外者の立ち入りは許可証が必要だ!」

門番の教官が、震える声で立ちはだかった。

カイトの背後にいる龍魔呂の殺気(ボディガードとしての職務熱心さ)にビビっているのだ。

「あ、これ招待状です」

カイトが学園長からの手紙を差し出す。

教官はそれを確認すると、少し安堵したように頷いた。

「な、なるほど。特別講師の方々か……。しかし、規則ですので『魔力測定』を受けていただきます」

教官が指差したのは、台座に置かれた巨大な水晶玉だった。

「この『真実の水晶』に手をかざしてください。魔力量に応じて色が変わり、危険人物でないかを判断します」

「へえ、身体検査みたいなものか。ハイテクだなぁ」

カイトが感心していると、後ろからルチアナが欠伸をしながら割り込んできた。

「あー、面倒くさい。とっとと終わらせて学食に行きましょうよ。私、お腹空いたわ」

「こらルナちゃん(偽名)、順番を守りなさい」

「いいじゃないのよカイトォ。ほら、触ればいいんでしょ?」

ルチアナは適当に水晶玉に手を置いた。

教官が鼻で笑う。

「ふん、そんな態度で……。この水晶は王立研究所が作った最高傑作。生半可な魔力では光りもしな……」

カッッッ!!!!

言葉は、閃光にかき消された。

ルチアナが触れた瞬間、水晶玉が太陽のごとく発光したのだ。

青、赤、金、虹色――色は目まぐるしく変わり、水晶の内部で何かが臨界点を超える音がした。

ピキッ。パキキキキッ……。

「え?」

教官が目を見開く。

そして。

ドォォォォォォォォンッ!!!!

水晶玉が爆発四散した。

ただ割れただけではない。溢れ出した神気が衝撃波となり、正門の鉄格子を吹き飛ばし、校舎の窓ガラスをビリビリと震わせた。

「け、煙い……」

土煙が晴れた後。

そこには、粉々になった水晶の破片と、呆れた顔のルチアナが立っていた。

「あら。 脆(もろ) いわね、これ。100円ショップで買ったの?」

「ひぃぃぃっ!? こ、国宝級の魔道具がぁぁぁ!?」

教官が腰を抜かして絶叫する。

カイトは慌てて頭を下げた。

「す、すみません! うちの連れが乱暴にしちゃって……! あの、弁償します!」

カイトは懐から、お詫びの印として「ジャガイモ(S級)」を一袋取り出した。

「これ、うちの畑で採れたジャガイモです! これで許してください!」

「ジャ、ジャガイモ……?」

教官が混乱の極みに達した時、校舎の奥から一人の老人が血相を変えて走ってきた。

「お待ちくだされぇぇぇッ!!」

長い白ひげを蓄えた、魔法使い然とした老人。

この学園のトップ、マーリン学園長である。

彼は爆発音を聞いて窓から外を見た瞬間、そこにいる「顔ぶれ」を見て心臓が止まりかけたのだ。

(そ、創造神ルチアナ様に……魔王ラスティア!? それに竜神デュークまで!? 世界の支配者が揃い踏みではないか! 終わりだ……この学園は今日で地図から消える……!)

学園長は、カイトたちの前まで来ると、躊躇なく地面に滑り込んだ。

ズザァァァーッ!

見事なスライディング土下座である。

「よ、ようこそお越しくださいました! 王立魔法学園へ! お出迎えが遅れ、万死に値しますぅぅッ!」

額を地面に擦り付ける学園長。

それを見た生徒や教官たちは、再び絶句した。

あの大魔法使いマーリン様が、一介の農夫一行に土下座している?

「えっ? いや、頭を上げてください!」

カイトは驚いた。

水晶を割ったのはこちらなのに、なぜ謝られるのか。

しかし、すぐにポジティブな解釈が脳裏をよぎる。

(そうか……。これが『教育者の鏡』ってやつか!)

カイトは感銘を受けた。

(水晶を割ったような失敗も笑って許し、ゲストに対して最大限の敬意を払う……。なんて礼儀正しい学校なんだ! さすが王立!)

「学園長先生、感動しました! こんなに歓迎してくれるなんて!」

カイトは学園長の手を取り、無理やり立たせて握手をした。

「水晶の弁償は、このジャガイモでチャラにしてください!」

「は、はい……! ジャガイモ……ありがたき幸せ……!」

学園長は涙目だった。

ジャガイモ一つで許されるなら、安いものだ。国が滅ぶよりは。

「さあ、案内してください! 生徒さんたちに、野菜の素晴らしさを伝えないと!」

カイトは笑顔で正門をくぐった。

その後ろを、神々が悠然と歩いていく。

すれ違う生徒たちは、本能的な恐怖で道を空け、直立不動で敬礼した。

カイトはそれを見て、「みんな挨拶がしっかりしてて偉いなぁ」とニコニコ手を振り返した。

こうして、伝説の特別授業が幕を開けた。

だが、この学園のエリートたちはまだ知らない。

「野菜作り」という授業が、ドラゴンを召喚したり、校庭を魔界化したりする、命がけのサバイバル実習であることを。