軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 4

【開戦】速すぎて見えない迎撃戦

『やっちまえ! 所詮はウサギ一匹だ!』

『囲んで叩き潰せぇぇ!!』

リザードマンたちの怒号と共に、数十本の槍や剣がキャルルに向かって突き出された。

全方位からの同時攻撃。逃げ場はない。

普通なら串刺しになる絶体絶命の状況だ。

だが、キャルルは不敵に笑みを浮かべ、腰のホルダーから二本の棒状武器を抜き放った。

カシャンッ!!

鋼鉄製の『ダブルトンファー』が展開される。

「――遅いです」

キャルルは回避しなかった。

逆に、最も攻撃の密度が高い正面へと、自ら飛び込んだ。

ガギンッ!!

キィンッ!!

金属音が連続して響く。

キャルルはトンファーを巧みに操り、リザードマンたちの斬撃を正面から受け止めるのではなく、斜めに滑らせて「受け流した」。

『なっ!? 剣が滑る!?』

攻撃の軌道を逸らされたリザードマンたちが、勢い余って前のめりになる。

その一瞬の隙――キャルルにとっては何秒もの猶予に等しい。

「失礼しますね。…… 懐(ふところ) 、お邪魔します!」

キャルルは流れるような動きで、体勢を崩したリザードマンの懐へと潜り込んだ。

ゼロ距離。

相手の息遣いが聞こえるほどの至近距離だ。

「さあ、歯を食いしばってください!」

キャルルの右膝に、ピンク色の 『闘気』が収束する。

彼女の太ももの筋肉が、バネのように収縮し、そして爆発した。

「月影流・顎砕き(あごくだき)ッ!!」

ドゴォォォォォォンッ!!!

闘気を纏った鋭利な膝が、リザードマンの下顎をカチ上げた。

硬い鱗も、頑丈な顎骨も関係ない。

圧倒的な運動エネルギーが頭蓋を貫通する。

『ゴブェッ……!?』

リザードマンの目が飛び出し、数本の牙が宙に舞う。

巨体が垂直に浮き上がり、そのまま後方へと吹き飛んだ。

「次ッ!」

キャルルは止まらない。

着地と同時に回転し、トンファーの先端で横合いから迫る敵の鳩尾を突く。

ズドンッ!

「まだまだぁ!」

怯んだ隙に、今度は左の安全靴が閃く。

「月影流・鐘打ち!」

鉄芯入りの回し蹴りが、別のリザードマンの側頭部を捉え、兜ごと粉砕した。

『ば、バカな……! 速すぎる! 目で追えん!』

『こいつ、本当にただのウサギか!?』

リザードマンたちが戦慄する。

彼らの視界に映るのは、戦場を縦横無尽に駆け巡るピンク色の残像と、次々と宙を舞う仲間の姿だけだ。

キャルルはトンファーで血を振り払い、キラキラした瞳で言った。

「ふふっ、いい運動になりますね! 龍魔呂さんに褒められるまで、一匹たりとも通しませんよ!」

その背中は、可憐な少女のそれではなく、歴戦の武人の風格を漂わせていた。

だが、その余裕も束の間。

大地を揺らす、重い足音が響き渡った。

『……退け、雑魚ども』

ズシン……ズシン……。

現れたのは、全身を黒光りするミスリルアーマーで固めた、通常の三倍はある巨体のリザードマン。

ボス格、ジェネラル・リザードである。

『俺の部下たちを随分と可愛がってくれたようだな、嬢ちゃん』

「む……ちょっと硬そうですね」

キャルルが警戒して身構える。

最強の安全靴vs最強の鎧。

矛と盾の激突が始まろうとしていた。