軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 9

【指名手配】マッハ1の逃走劇

「動くな! 天魔窟警察だ!!」

「重要参考人として署まで同行を願う!」

ドカカカカッ!!

重厚な足音と共に、全身をミスリル合金で武装した『警備ゴーレム部隊』が、リビングになだれ込んできた。

彼らの電子アイが、赤く明滅して三人をロックオンする。

『対象A:ルナ・シンフォニア(主犯)。対象B:リーザ(共犯)。対象C:キャルル(共犯)』

『容疑:大規模通貨偽造、および経済撹乱罪。……推奨:即時拘束』

「ひぃぃッ!? 共犯!? 私まで!?」

キャルルが絶叫した。

冤罪だ。完全に巻き込まれ事故だ。

だが、現場にいて、偽造金貨(元・石ころ)がテーブルにある以上、言い逃れはできない。

「あわわわ……アイドル生命が……ファンクラブが……!」

リーザが泡を吹いてパニックになる。

「あら、賑やかねぇ」

ルナだけが、優雅に紅茶のカップ(中身は空)を持ったままだ。

「くっ……! こうなったら……!」

キャルルは覚悟を決めた。

捕まれば、懲役数百年か、あるいは死刑。

そうなれば、素敵な旦那様との結婚生活も、貯めた結婚資金も、全て水の泡だ。

「逃げますよ!! 舌を噛まないようにしてくださいッ!!」

キャルルは瞬時に『電竜石』をフル稼働させた。

バチバチバチッ!!

彼女の全身から、青白い稲妻が激しく放電される。

ウサ耳が逆立ち、赤い瞳が極限集中モード(キリング・アイ)に変貌する。

「えっ? きゃっ!?」

「あら?」

キャルルは両脇に、ルナとリーザを米俵のように抱え込んだ。

小柄な身体からは想像もつかない剛力だ。

「玄関は塞がれてる……なら、空だッ!!」

キャルルが狙いを定めたのは、ペントハウスの巨大なガラス窓。

『対象、逃亡の恐れあり! 制圧せよ!』

ゴーレムたちがスタンロッドを振り上げる。

だが、遅い。

今のキャルルの体感時間において、ゴーレムの動きは止まって見える。

「私の 人生設計(ライフプラン) を……邪魔するなぁぁぁぁッ!!」

キャルルが安全靴で床を爆発的に蹴った。

月影流・緊急離脱奥義――『 脱兎(ダット) ・マッハジェット』ッ!!!

ドカァァァァァァァァァンッ!!!

室内でソニックブーム(衝撃波)が発生した。

その衝撃だけで、迫りくるゴーレムたちが吹き飛び、リビングの高級家具が粉砕される。

パリーンッ!!!

強化ガラスが粉々に砕け散り、三人の姿が天魔窟の夜空へと射出された。

「ぎゃあぁぁぁぁぁッ!? 顔が! アイドルの顔が風圧でぇぇぇ!?」

リーザの顔の皮が、凄まじいG(重力加速度)と風圧で後ろに引っ張られ、とんでもない変顔になっている。

「ふふっ、すごいわ! ジェットコースターみたい!」

ルナは風圧防護結界を瞬時に張ったのか、一人だけ髪も乱れず楽しそうに笑っている。

「笑ってる場合ですかぁぁぁ!!」

キャルルは涙目で空気を蹴った。

空中三角跳び(エア・ライド)。

天魔窟の岩壁を、音速の連続ジャンプで駆け上がっていく。

キィィィィィィン……!!!

赤い稲妻を纏った流星が、天魔窟の出口(巨大換気口)へと吸い込まれていく。

『緊急通報! 緊急通報! 犯人グループ、エリア外へ逃亡!』

『速すぎて追跡不能! 繰り返す、速すぎて追跡不能!』

警報サイレンが鳴り響く中、キャルルたちは夜の闇へと消えていった。

「うわぁぁぁん! さようなら私の3LDK! さようなら温泉! こんにちは逃亡生活ぅぅぅ!!」

キャルルの悲痛な叫びだけが、残響(ドップラー効果)となって夜空に残された。

目指すは、人里離れた場所。

食料があり、隠れられる場所。

……そう、かつてお世話になったSランク人参の生産地、「カイト農場」へ。