軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91.次の目標

「グルルッ……」

「ガウッ!」

「ガァッ!」

四方を大きな狼の魔物で囲まれている。それぞれが出方を窺い、隙が出るのを待っている。だけど、そんな隙は出来ない。

「ルイには絶対に手出しさせないから」

その魔物をアマリアお姉様の鋭い目で睨みつける。地面にはすでに五体以上もの魔物の死体が転がっているため、魔物が警戒して中々攻撃してこない。

だったら、こちらから仕掛けるしかない。

「アマリアお姉様、私に任せて」

地面に手を付くと、四属性金属リングに魔力を通す。使う力は土。地面にその力を流すと、魔物の手足を標的に定める。

「いけっ!」

土魔法を地中で走らせ、魔物の足元から石が盛り上がる。そして、その手足を絡めとり固定した。

「ギャンッ!?」

「アマリアお姉様、今だよ!」

「ナイス、ルイ!」

魔物たちは足を取られて、身動きが取れなくなった。そこへ、アマリアお姉様が一気に距離を詰める。そして、その首を刎ねた。

「私も!」

地面から手を離し、魔物の首元を狙って、風魔法を放った。風は刃のように走り、そして、魔物の首を刎ねた。

よし、次も――と思って他に視線を向けると、他の魔物は全てアマリアお姉様によってあっという間に倒されていた。

それを見て、私は頭を抱えた。

「もう、私の訓練にならないよー!」

「だって……あんなに数がいたんじゃ、いつルイが襲われるか分からないし……。もっと、安全に戦える状況じゃないと」

「それだと、訓練にならないじゃん!」

「訓練も大事だけど、ルイの方が大事よ! もし、怪我でもしたらと思うとっ!」

逆切れしてきた! アマリアお姉様はこういう時は頑固だからなぁ……。

「そんなこというんだったら、私一人で行くから!」

怒ったようにその場を後にしようとすると――。

「あぁ、ごめんなさい、ルイ! 私が悪かったから! ちゃんと、協力するから!」

その後をアマリアお姉様が泣きながら追いかけてきた。守ってくれるのは嬉しいけれど、限度っていうものがあると思うんだよね。こうして怒っては見るけれど、結局は許しちゃうんだけどね。

四属性金属リングを作った後、私は魔法の訓練をしていた。一人で魔法を放ったり、アマリアお姉様と一緒に魔物を討伐したり。そんな毎日を送っていると、魔法の扱いにも長けてきた。

自分でもちゃんと魔物と戦えるようになっていると実感していた。これならば、強い魔物がいる遠い場所に行くことが出来る。

その時がようやく来た。

「みんな、聞いて」

夕食の時間。食事が終わると、私は真剣な表情で家族に声をかけた。

「私、サンドリーナ乾燥地帯に行きたいの」

そういうと、家族が驚いた顔をした。

「そこは灼熱の地と呼ばれる、砂の海。気温は体温を越え、日中は強い日差しが照りつける場所だ。並みの人間がいくような場所じゃないぞ」

「そんな辛い場所にどうして?」

「……何か目的があるのかい?」

「これを見て」

私は一枚の紙を差し出した。そこには、二つの絵と説明文が書かれている。

「そこに住むカイザルスコーピオン、そこでしか取れない天水のサボテンっていうのがあるんだ。それを取りに行きたいの」

「それが何かの素材になるのか?」

「カイザルスコーピオンの毒には神経を麻痺する成分が。天水のサボテンには正常な機能に戻す成分が含まれているの。この二つを組み合わせることによって、イザベルお母様の神経の痛みを正常に戻すことが出来ると思う」

王都にいた際、余った時間で薬師協会の資料室に籠っていた。その時に出会った素材だ。この二つの素材を見た時、ピンと来た。これならば、お母様の一部分を治すことが出来る。

「そ、それは本当か!?」

「錬金術があれば可能だと思う」

「そ、そうか……。とうとう、イザベルの体が……」

ロザンお父様は嬉しそうに微笑んだ。だけど、すぐに顔が引き締まった。

「だが、サンドリーナ乾燥地帯は厳しい環境だ。今のルイが行ったところで、環境に耐えられないだろう。とてもじゃないが、行かせられない」

「大丈夫。それなら、手は打ってある。このレシピ帳を見て」

私はレシピ帳を見せた。

「これは……【冷感クリーム】?」

「そう。熱さを凌ぐために、体感の温度を下げるクリームだよ。これがあれば、外の気温が高くても耐えられる」

「そんなものまで考えていたのか……。確かに、感じる気温が低ければ、ルイでもサンドリーナ乾燥地帯で活動する事が出来るだろう」

「ね? これがあるから、活動出来るよ。だから、行ってもいい?」

もう一度お願いをすると、ロザンお父様は腕を組んだ。しばらく考えた後、ゆっくりと目を開く。

「分かった。だけど、条件がある」

「アマリアお姉様を連れていくこと?」

「それもそうだが、別のことだ。サンドリーナ乾燥地帯は周りの景色が同化しており、素人が足を踏み入れると、方向感覚が失われて迷ってしまうんだ。だから、原住民の力を借りなさい」

原住民?

「サンドリーナ乾燥地帯にはウルルミ族と呼ばれる原住民がいる。その原住民の力を借りれば、サンドリーナ乾燥地帯を自由に行き来することが出来るだろう」

……なるほど。その土地を歩くには、その土地になれた人がいる方がいい。

「原住民が住む町がある。その町に俺の知り合いがいる。その知り合いを訪ねるといいだろう」

「じゃあ、お願いをすれば?」

「……まぁ、そのために必要なものがある」

「必要なもの?」

「そいつは酒が好きでな。地方各地の酒を飲み歩いてぐらいだ。だから、知り合いの力を借りるためには、変わった酒を用意すればいい」

なるほど。協力を得るためには、お酒を造ればいいのか。

「錬金術で変わった酒を作ることは出来るか? きっと、この世に一つしかない酒になるだろうから、それを渡せば快く引き受けてくれるぞ」

「錬金術でお酒……。分かった、やってみる」

サンドリーナ乾燥地帯に行くために作るものは冷感クリームと変わったお酒。冷感クリームは素材を集めるだけだけど、変わったお酒はレシピから作らなくちゃ。

よし、イザベルお母様の体を治すためにレシピを作って調合だ!