軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

義弟と姫君1(ナイジェル視点)

「パーティーに、ですか。エメリナ様と私が?」

「ええ、そうよ」

詰め所の一室で、二人きりになった瞬間。

エメリナ様の口から出た言葉を聞いて、私は眉間に小さく皺を寄せた。

そんな私の様子を見て、エメリナ様も眉間に深い深い皺を寄せる。……まるで深い谷底のような皺だな。

「そう。招待をされているものの何件かに、一緒に行ってほしいの。まだ公表はされていないけれど……お母様の懐妊のことは、貴方も誰かから聞いているのではなくて? 王宮の一部の人間には周知の事実になっているから、王妃様も当然……知っているはず。今は少しでも、お母様から王妃様の目を逸らしたいの。貴方と私が『婚約も近いかもしれない』なんて噂になれば、王妃様の気がお母様から少しだけでも逸れるでしょう?」

ご側室の子――そして私の従妹であるエメリナ様はそう言うと、大きなため息を吐いた。

この従妹は伸び伸びと育てられたせいで、姉様と違って感情を隠す術に長けてはいない。私とパーティーへ行くことがよほど嫌なのだろうことが、その表情からはありありと察せられる。

礼儀としては、もっと隠すべきだと思うが。

いや、私も人のことを言えない顔をしているのだろうけれど。

数年前。

マッケンジー卿とともに就いた護衛の任の際に、エメリナ様に『貴方が私の従兄?』と話しかけられた時には本当に驚いた。

誰に聞いたでもなく、情報を集め自力でその結論にたどり着いたらしい。さすがマッケンジー卿の遠縁というべきなのか……

彼女とはその時からの付き合いだ。最初は友人付き合いを装い秘密を外部に漏らさないか監視していたのだが、その人品に信用を置けると確信してからはふつうの親戚付き合いをさせていただいている。

そんな付き合いを経た結果、私が『王女のお気に入り』というはた迷惑な噂が立ってしまった。その上に……『婚約間近』なんて面倒な噂が上塗りされるのか。

「たしかに王妃様の気は、ご側室とそのお腹の子から逸らせるでしょうけれど」

――私に送られている暗殺者たちは、王妃様の手の者だろう。

ガザード公爵もマッケンジー卿も、今ではその確信に至っている。そしてその尻尾を掴もうと奔走中だ。その試みは、海千山千の女怪相手にはなかなか上手くいっていないが。

ご側室にも権力欲がないわけではない。ご側室は儚い見た目の女性ではあるが、公爵家の出の王妃様と堂々と渡り合えるような女傑なのだ。彼女にも……私を暗殺する動機はある。

だけど――

『王弟殿下にそっくりですね。ご無事で……よかったです』

エメリナ様に連れられてお会いした時。そう言って笑った彼女の表情に……嘘はないように思えた。

しかし、エメリナ様とパーティか。

――嫌だな。

そんなシンプルな言葉が、胸の内に生まれる。

「不満そうね?」

「……姉様に、妙な誤解をされたくないので」

「…………本当に、相変わらずね。私だって想い人がいるのに、貴方とパーティーに行くなんて死んでも嫌。だけど仕方ないじゃない」

エメリナ様はそう言うと、小憎らしい表情でふんと小さく鼻を鳴らした。