軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

わたくしと義弟の思い出14

アダルベルト様に引きずられながら去って行くテランス様を見送ってから、紅茶を飲みつつ一息つく。挨拶に来る『お友達』も徐々に少なくなり、『もう一杯紅茶をお願いしようかしら』なんて考えながらのんびりと過ごしていると……

「ウィレミナ姉様……その」

なぜか真剣な表情のナイジェルに、話しかけられた。

「なによ、ナイジェル」

「ウィレミナ姉様は……ああいう男がお好みなのですか?」

ナイジェルの質問の意味が理解できず、わたくしは首を傾げた。

ナイジェルがわたくしから視線を逸らす。その視線を追うと、その先にはアダルベルト様とお話をしているテランス様の姿があった。アダルベルト様の妹君の、マルタ嬢もいらっしゃるわね。彼女は線の細い美少女で、楽しそうによく笑う方だ。令嬢としては品がない行為だけれど……品にこだわって愛想笑いしかしないわたくしよりも、ああいう屈託のない女性の方が殿方には好まれるのだろう。

アダルベルト様は、マルタ嬢とテランス様を婚姻させたいのかもしれないわね。整った見た目の二人は、とてもお似合いだ。

「ウィレミナ姉様、答えてください。ああいう男がお好みなのですか?」

なぜか悲壮な表情で、ナイジェルがまた訊ねてくる。

……『ああいう男』って、テランス様のことかしら。

「……テランス様は素敵だけれど、好みとは少し違うわね」

周囲に人が居ないこともあり、ついそんな本音が零れてしまう。するとナイジェルは、その大きな瞳をまん丸にした。

「では、どのような男性がお好みなのです?」

やけに食いつきがいいわね。なんなの? 義姉の好みがそんなに気になるのかしら。まぁ……教えてあげても別にいいのだけれど。

「王宮近衛騎士団の団長の、マッケンジー卿のような方が好みね」

わたくしは胸を張って堂々と答えた。するとナイジェルの大きな瞳が限界まで瞠られる。

「マッケンジー卿ですか? あの、筋肉質で熊のように大きな体躯をお持ちだという噂の?」

ナイジェルは震える声で言うと、眉間に深い谷底のような皺を刻んだ。なによ、その不服そうな態度は! マッケンジー卿はとても素敵な方よ。前に王宮で会った時には『愛らしいですな』なんて言いながら、大きな手で頭を撫でてくださったんだから! 子供扱いされているのは……わかっているわよ。それでも嬉しかったの。

「あの大きなお体、とても素敵よね。男らしさの象徴ですもの」

「マッケンジー卿は、御年五十歳だったと思いますが」

「ええ、五十歳ね。お年は少し上だけれど、それも彼の魅力よね」

年齢が作った額や口元の深い皺が、本当に素敵なの。白髪交じりの灰色の髪もたまらない。

……いつか彼がわたくしを攫ってくれないかしら、なんて。時々してしまう妄想が脳裏をよぎる。あの鍛錬の成果が詰まった逞しい腕で抱き上げられたら、どんなに素敵なことかしら。そして深い皺が刻まれたお顔で、優しく微笑んでもらうの。ああ、想像だけでときめくわ!

思わずにんまりとして頬を染めていると、微妙な表情をしたナイジェルからの視線が刺さる。わたくしは慌てて表情を引き締めた。

「と、とにかく。わたくしをしっかりと守ってくださる殿方がいいの!」

「なるほど。頼りになる筋肉質で年上の男性がお好みなのですね。……これは困ったな……」

ナイジェルは小声でぶつぶつとなにかを呟いてから、大きく深いため息をついた。……本当に変な子ね。