軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28話 チームTMNと共闘……共闘?

「ぬううううん!」

突進してくるニードルボアを村崎さんが大盾(タワーシールドというらしい)で抑える。普通なら吹き飛ばされるどころか大怪我では済まないレベルの傷を負うのだが、村崎さんは見事に押し留め、更には。

「ふんっ!」

逆に押し返してしまった。

押し返され、バランスを崩したニードルボアは転倒。そこにすかさず。

「『ライトニング』!」

「せいっ!」

由綺風さんの魔法が飛び、浅木さんの袈裟斬りにより見事ニードルボアを討伐。

「いやはや……自分何もする事がありませんね」

“スコップ構えてただけ”

“悲報。スコおじ見せ場を奪われる”

“俺らはスコおじが活躍するところを見たいんじゃあ!”

“気持ちは解る。けどいつかきっとくる”

“座して待て、ってか”

“じゃあ全裸待機しとくわ”

“いや服着ろ”

“けど流れるような連携だったな”

“これがチームTMNか……”

“そりゃこの道10年以上のベテランだしな”

適性もあるだろうけど、それだけ長くやってれば連携も上手くなるだろう。何より見てて色々と参考になる。けどこのチームで一番凄いのは。

「周辺に魔物の気配なしっと」

佐倉さんだろう。彼の魔物探知のおかげで不意打ちどころか、逆にこちらから奇襲を仕掛ける事もある。彼がいるかいないかで大きく変わるだろう。それに。

「あ、そこ落とし穴な」

罠もあっさり見つける。まあこれに関しては罠の配置を覚えているから、らしいのだが、普通覚えられるもんなのか?

いやはや、佐倉さん様々である。

「お、ドロップ品だな。しかも……」

「肉だーーーーー!」

ニードルボア、文字通り針のような体毛に覆われた猪だが、その魔物のドロップ品は基本針猪の毛皮なのだが、今回は猪肉。それも結構デカい。

「うーん、見た感じ10ポンド(約4.5kg)ってとこかね。売るもよし、このまま持ち帰るも良し」

「そんなんお持ち帰りに決まってんだろ! にっくにく〜」

由綺風さん、大はしゃぎである。子供っぽい彼に皆苦笑する。

実際一番若いのは彼なのだが、それでも三十路前である。因みにチーム内で一番の歳上は佐倉さんだ。

「しかしやはりというか、中層の魔物出てきましたね」

「オーガが出現した時点である程度予想していたが……最早初心者向けとは言えんな」

「こうなるとボスもヤバいのが出そうだな」

因みに、基本上層のボスはオーガである。それが既にモンスターハウスに出現している時点でボスの可能性は低い。

「お。また魔物が接近してきたな。正面から……このスピードはまた猪か?」

連続でニードルボアと戦闘だ。

「すみません、今度は自分1人でやってみていいですか?」

「OKだ。危なくなったら加勢に入るが、それでいいか?」

「はい、それで構いません」

“お、ここでおっさんの勇姿が見られるのか”

“なんかオラワクワクしてきたぞ”

“なんか野菜人がいるぞw”

“てかあの質量の魔物相手にどう戦うんだ?”

“どうなんだろ? 大きさで言えば軽トラ並み、重量はそれ以上。1人で戦うとか普通ありえん”

“まあ無謀だわな”

“けどおっさんだしなぁ……”

“適性SSだしなぁ……”

“誰もおっさんの心配してなくて草”

直進の通路。猛スピードでこちらに向かってくる魔物。案の定ニードルボアだ。

腰を低く構え、スコップを腰に構えて突きの体勢を取る。

ドドド……という音と共に突進してくるニードルボア。普通なら速いスピードなのだろうが、自分にはゆっくりに見える。

ギリギリまで引き寄せ、射程範囲内に入った瞬間。

「ジャッ!」

スコップの剣先をニードルボアの鼻に突きつけ。

突進の威力もあってか、ニードルボアを鼻先から左右真っ二つに両断した。

……は? 両断?

“……”

”……”

”……”

“いやまてそうはならんやろ!”

“なんでスコップで突いただけで真っ二つになるん!?”

“いやほらおっさんだし”

“おっさんだし、で片付けられるか! 以前似たような事した探索者いたけど、武器は思いっきり無骨な大剣だったぞ!”

“なんでスコップの刃先だけでああなるねん……”

“と、とりあえず……スコおじ最強! スコおじ最強!(ヤケクソ)”

“ふぇいたりてぃ”

いや自分が一番驚いたわ。倒せるだろうとは思ってたけど、こんなグロい倒し方になるとは。

チームTMNの面々も顔を引き攣らせている。

「Flawless Victory」

「FATALITY!」

佐倉さんと暮内さんがサムズアップ。うん、悪ノリしすぎ。

***

自分が倒したニードルボアからは肉がドロップ。

「また肉……」

「前の配信の時も肉ばかり落ちてたな」

浅木さんの言う通りだが、なんか肉のドロップ率高くないですかね? あと大きい。美味いらしいけど1人分じゃない。1kg程切り分けてあとは売ろう。

“ニードルボアのドロップ品と言えば普通は針猪の毛皮なんだがなあ”

“相変わらずおっさん倒した魔物のドロップ品は肉に偏りすぎる”

“俺も食いてえ”

“潜れ”

“自力で取れ”

“骨は拾わんが”

“ちきしょー!w”

コメントも相変わらずだ。けどアンチとかいないのはいい事だ。

「それはそうと浅木さんの刀って……」

「ああ。竜の牙で造られた竜牙刀だ」

竜牙刀は刀の中でも上品質の武器だ。名前の通り竜の牙と玉鋼を合成して鍛え上げた刀だ。刀使いからしたら垂涎モノの一品だ。ただ。

「割と持ってる人多いけどな」

適性B以上の刀使いは軒並み持っている。というか下層のドラゴンを倒したら割と竜の牙を落とすそうで、それで武器を造ってもらう探索者は多い。尤も、そのドラゴンを倒すのがまた大変らしいが。

他の面々の装備品も良いものばかりだ。村崎さんの鎧と盾はアイアンゴーレムがドロップする鉄のインゴットから造られている。武器のメイスもそう。迷宮産の鉄は地上の鉄よりも上質と言われている。なんでも少量だが魔素が含まれているとかどうとか。因みに竜牙刀の素材の玉鋼もこの鉄と樹木系の魔物がドロップする木材を木炭にした物を使用している。

佐倉さんの着ている服も魔物の素材で出来ている。黒鬼の皮製の服で隠密性に優れている。その上に革鎧を着ているが、これも魔物の革を加工したものらしい。けど武器のクロスボウは市販されてる物だそうだ。

暮内さんと不知火さんの装備品は似たり寄ったり。魔法をある程度防ぐマントで、マジックシルク製だ。武器は暮内さんがフレイル、不知火さんがモーニングスター。鎖で繋いでるやつじゃなくて棘付き鉄球の付いたメイスの方。

由綺風さんはマントは暮内さん達と同じだ。樫の木の杖に魔法威力上昇の指輪を付けている。

「さすが10年以上やってるベテラン。装備品も良いものばかりですね」

「いや中村さんのツナギも良いもんだろうがよ」

「というかそのツナギを見てるとどうしてもアレを彷彿とさせるな」

「やらないか?」

「アッー!」

ノリ良いなこの人達。

“気持ちは解る”

“流石チームTMN。ノリが良い”

“ところでこのスコップを見てくれ、こいつをどう思う?”

“すごく……カッコいいです”

“草”

“草”

“草”

“みんなノリノリで草”

コメントも草の嵐だ。おじさんこういうノリは嫌いじゃないぞ。

それからは出てくる魔物達を倒しまくる。やはり中層の魔物が結構混じっててオーガを始め、先ほど倒したニードルボアに全高3mはあるヘラジカ、レイジングエルク。これまた人間よりも巨大な蟷螂、デスマンティスといった危険な魔物が跋扈している。上層の魔物以上に危険度が高い。

それらを倒しつつ、遂に自分らはボス部屋の前まで到着した。

「これ、中村さんがいなかったらもっと消耗してたな」

「遭遇率もちと高かったしな」

「本当助かる。なんならいっそ俺らのパーティに入ってもらってもいいんじゃないか」

「はは、嬉しいお誘いですけど、出来ればソロでやっていきたいので」

別に彼らを信用していない訳じゃない。皆いい人だと思う。けどそれとこれとは話は別だ。それに自分が入ったとしても今度はチームワークが崩れる。そうなると本末転倒だ。

「そうですか。それは残念です」

「けど顔見知りになれたんだし、それでいいんじゃね?」

それが一番だと思う。因みに彼ら全員とは連絡先を交換済みである。

「さて、そろそろ行こうか。準備はいいか?」

消耗品、武器や防具の状態や自身の疲労度をチェック。まだまだ余裕だ。そもそも消耗品のポーションは未だに手つかずだ。

「大丈夫だ、問題ない」

「ちょ、中村さん、おま」

「こんな時でもウケを狙ってくるとは」

「やはり適性SSは違う」

“おっさんそれフラグやん”

“けどおっさんの場合そうじゃないんだよな”

“見てる俺らの緊張感台無し”

“ワイらの緊迫感を返せw”

“けどこれでリラックス出来たんとちゃう?”

“逆に力が抜けそうだが”

“これがスコおじクオリティ”

ガチガチに緊張するよりマシだろう。

「……では行くぞ」

少し呆れている浅木さんが扉を蹴破った。