作品タイトル不明
27話 すり合わせ
「改めてありがとう、助かったよ。私がチームTMNのリーダー、浅木だ。よろしく頼む」
浅木さんが手を差し出してきたので握手する。見てくれは何というか普通? 妙に親近感が湧くぞ。
「いえいえこちらこそ。中村です」
“これが普通なんだよこれが”
“あれが探索者の普通と思われても困る”
“流石にそーは思とらんやろ”
“おっさん常識人だしな。アレが特殊な事くらい理解してるだろ”
江藤君達のことを指してるのだろうが、酷い言われ様である。いや擁護は出来んが。
「ちゃんとコメント見てて助かった。俺は佐倉、スカウトだ」
スカウトと言うにはガタイが良い。無精髭生やしてて葉巻が似合いそうである。
「村崎。助かった」
「悪いね、彼口下手なもんで。オレは暮内、バッファーだ」
村崎さんは自分より背が高くドッシリしている。暮内さんはよく言えば頭が良さそう、悪く言えばインテリ眼鏡。
「不知火です。ヒーラー担当です」
「僕は由綺風! よろしくな!」
不知火さんは物腰が柔らかく、由綺風……さんは子供っぽい。背も低いし。
「しかし本当に間に合ってよかった」
「まあな。自慢じゃないが色付きも倒せたんだが……消耗の事を考えると、な」
「撤退も視野に入れてたしな」
恐らく事実だろう。膠着状態だったのが良い証拠だ。これが実力不足だったら色付きどころか普通のオーガですら厳しかったに違いない。その辺ベテランの探索者だろうというのが伺い知れる。
“しかしセーフポイントがモンスターハウス化かぁ”
“迷宮の悪意を感じる”
“そもそも上層なのに中層の魔物が出るのがおかしい”
“いや表層に上層の魔物が出てる時点でおかしいだろ”
“原因なんだろね”
“迷宮の成長ちゃうん?”
“迷宮門崩壊の可能性も……?”
成長も 迷宮門崩壊(ゲートブレイク) も可能性として充分にあり得るか。その事を浅木さんに伝えると。
「成程、確かにあり得るか。けどそれだと 休憩場所(セーフポイント) がモンスターハウスになるのは解せん」
「あ、言われてみれば確かに」
迷宮にも不文律というか、ルールがあるらしく、こんな変遷はあり得ないらしい。基本新たな層、ここの場合は下層が出来るのが一般的だ。稀に通路や部屋の配置といった形状が変わる事もある。しかし形状はそのままに休憩場所がモンスターハウスになるのは殺意が高いというかなんというか。
「迷宮も生物……魔物の一種という説があります。栄養になる者、人間をなるべく引き寄せようと最初から難易度が高い迷宮にしない、魔物を倒した恩賞としてアイテムや武具を出す、という説があるんです」
と不知火さん。
“あ、なんかそれ聞いた事ある”
“迷宮生物論だっけ?”
“そうそうそれそれ”
“ガイア理論みたいなもんか”
“これかなり議論されてるよな”
“で、これに乗っかってるのが迷宮保護団体と魔物愛護団体”
“アイツら迷惑すぎだろ”
“もっと酷いのあるぞ。迷宮を崇拝している宗教団体”
“うへぇ”
そういや最近SNSとかで「魔物を倒すなー」とか「迷宮を荒らすなー」とか言ってる人いるな。宗教団体に至っては迷宮門崩壊は神の祝福だとか言ってるヤバい人までいる。
魔物に殺されたら天国に逝ける、魔物を殺す者は地獄に堕ちるとかもう訳解らん。
閑話休題(それはさておき) 。
「取り分だけど……色付きの魔石とドロップ品は中村さんの物でいいかな?」
「問題ねえぜ」
「異論ない」
「同じく」
「右に同じ」
「殆ど無傷で倒せたしな。異議なーし」
「いやいやいや、流石にそれは貰いすぎですよ? 自分が倒したブルーオーガの魔石だけで充分ですよ」
自分が倒したのはブルーオーガのみ。だからその魔石だけでよかったのに、まさか色付き全部とか言い出すとは。
「中村さん、これは私達からの感謝の気持ちだ。貴方が救援に来なかったらもっと消耗してた。その礼だ」
「中村さん、受け取ってくれや。出ないと俺らは感謝も出来ない恥晒しになっちまう」
“そんな事はないと思うが……”
“受け取れおっさん。その方が互いにスッキリする”
“消耗の激しい状態での探索は死への危険が高まる。それを防げたんだ、素直に受け取れ”
“TMNに恥かかすんな”
コメントも浅木さん達の味方なのか受け取れというコメントばかりだ。
「……解りました。ありがたく頂戴します」
「おう、受け取ってくれや」
彼らの厚意を無碍にするのもアレだし、結局自分が折れた。お金はあって困る物でもないし。
因みにドロップ品は灰鬼の皮と黒鬼の皮。どちらも防具に使う素材で結構高値で売れるとの事。灰鬼の皮は硬く、ある程度の魔法も防ぐ為、加工するとかなり強い鎧や盾になり、黒鬼の皮を使った防具は隠密効果を得られるとか。そりゃ高く買い取ってもらえる訳だ。
***
その後は互いの情報をすり合わせる。
チームTMNは昨日もこの迷宮に入っており、表層を調べていたそう。魔物に関しては自分の時とほぼ同じだがボスは違った。
「ホブゴブリンにゴブリンソルジャーが3、アーチャーが2、メイジが1、普通のゴブリンが5だな」
「数多くないですか?」
「ギリ想定内だな。それに統率する奴がいなかったから楽だったぞ」
うーん、ボスに関しては自分の時が特殊すぎたのか……
上層もあまり変わらない。中層の魔物が出てきたのは今のところこの場所だけだそうだ。
「でもこれからは中層の魔物が出現してもおかしくないでしょう。階を降りる毎にその可能性は高くなると考えた方がいいですね」
「ま、中層の魔物くらいならまだ大丈夫だろ。下層の魔物は流石に厳しいが」
「出ないとも限らんしな」
「うおーい、おっかない事言うなよ。もうドラゴンはコリゴリだっての!」
皆が苦笑する。
なんと彼ら、ドラゴンを倒した事があるらしい。全長10m程の、レッサードラゴンらしいが、それでも凄い。ただ、その一戦でボロボロで、探索を切り上げたとの事だ。曰く「アレが限界」だそうだ。
「で、提案なんだが、俺達と組まないか? いや是非組んでくれ」
二つ返事で頷いた。