作品タイトル不明
24話 探索再開
密林からスコップが届いた。これで必要な物は全部揃えた。
ポーションが1本しかないのは少々問題ではあるのだが、こればかりは仕方がない。如何せん品薄なのだ。元々需要は高いのに数が少ないからあっという間に売り切れだ。しかも高いから始めたばかりの探索者は手が届かない。だからこそ治療費が無料なんだろうが。
「さて、行きますか」
両頬を叩いて気合いを入れる。数日ぶりの迷宮探索だ。気を引き締めていこう。
***
「どうもこんにちは、スコップおじさんこと中村浩士……で、うええええええっ!?」
“待ってた”
“こんちゃー”
“こんスコー”
“いきなり奇声あげてどしたん?”
“てかその格好”
“うほっ、いいおっさんw”
“やばい、掘られそうw”
同接100超え。初回がたったの3人(最終的には10人超)だったのに今日はまさかの100人超え。そりゃ奇声もあげたくなる。
そしてもう一つ。
“おっさん、何でツナギ着てんだよwwww”
ツナギを着ている事に言及する声多数。
「いやー、ちょっとした臨時収入がありまして。それでシークマンに行ったらあったんですよ、これが。買うしかないでしょう!」
“そんな力説されてもw”
“でも気持ちはわかる”
“臨時収入て慰謝料でも入った?”
「いえ、それはまだですね」
因みにこのツナギ、70万もした。表の生地にはウールバイソンという羊だか牛だかよく解らない魔物がドロップする羊毛。裏地にはジャイアントシルクワームというデッカい蚕がドロップする糸を編んだマジックシルクを使用している。下手な革鎧よりも丈夫で防御力もそれなりに高く、何より魔法のダメージをある程度防ぐ優れものなのだ。そりゃ金があるなら買うしかないだろう。
尚、当然だが慰謝料はまだ入金されていない。
「しかし同接100人ですか。まさかここまで伸びるとは思いもしませんでした」
“アーカイブと切り抜き動画のおかげだな”
“スライムのは腹抱えてワロタw”
“おっさんすげーいい顔してたしな”
“あとバグベア戦な。あれは凄かった”
“カッコよかった!”
“中には加工を疑ってたのもいたけどな”
“イェーイ、A藤クン見てるーw”
幸いあれを加工だとか難癖つける視聴者は今のところいない様である。あと名前伏せてないぞそれ。
“そういやスコップ変わってね?”
“てかめっちゃカッコいいんですけど!?”
“厨二心くすぐられるデザイン”
「あ、はい。こちらは密林で注文しました。軽く5万円超えましたが。それとヘルメットもですね。こっちはシークマンで売られていた物ですね。軍用の払い下げみたいです」
因みにヘルメットの下には例のハチマキを巻いている。
「さて、それでは行きましょうか。場所は前回同様生目古墳1号墳ダンジョン。今回は上層からです」
***
上層である。ここからは難易度がグンと上がる。
まずは魔物。表層と比べると殺意が高い。もう殺す気満々と言った具合の魔物が出る。とはいえここは表層から上層の魔物が出てきている。しかもそれを難なく倒してしまっている。だからと言って油断は禁物だが。
そしてここからは罠が仕掛けてある。ただ、露骨に人死にが出る罠はない。精々深さ2m程の落とし穴くらいだ。落とし穴の底に剣山とか竹槍とか即死する仕掛けもない。まあ運が悪いと打ち所が悪くて死んでしまう事もあるだろうが。
あ、上層にもデストラップが一つだけあった。モンスターハウスだ。上層からは通路の壁に扉があったりする。洞窟の岩壁に木製の扉とかすごい不自然だがあるのだ。大抵は何もない部屋だが、中には宝箱があったり魔物の出ない 休憩場所(セーフポイント) だったりするのだが、大量に魔物が湧く部屋がある。それがモンスターハウスと呼ばれるトラップルームだ。上層だと出現する魔物は職持ちゴブリンが殆どだが、中には表層で江藤君達を襲っていたレッドキャップやオークなんかが出現する場合もある。このモンスターハウスの餌食になった探索者は数知れない。
“ところでおっさんの適性って本当にEなの?”
あ、やっぱりきたかこの質問。
「いえ、なんか検査の装置に不具合があったそうで。計測し直したところ、適性はSSでした」
“ふぁっ!?”
“SS!?“
“上澄みもいいとこじゃねーか!”
“そりゃ強くて当然か……”
“とんでもねーおっさんがいるもんだ”
“いやー、我らおっさんの星だわ。これからも期待してる。あと収益化早よ”
“スコおじ最強! スコおじ最強!”
“いやまだ上にいるだろSSSが。あれは本当にバケモンだ。特に現会長の二斗さん”
“あの人はオカシイ。何であんなにスキルある訳? 普通1つ……途中生えたりして2つになる事もあるけど、何なのあの人”
“画像残ってないから確認出来ないけど、確か武器系だと片手剣、短槍、長弓、戦鎚。魔法系だと土、火、風、雷、氷属性魔法に回復魔法。あと収納も持ってたな”
“いや多才すぎるだろ”
“多才と言うなら夏リスのナツミもだがな”
“器用貧乏だっけ? 名前はアレだけど色んな局面に対応出来るから優秀なスキルだよな”
途中から他の探索者の話題になってしまった。そう言えば適性SSSって日本に数える程しかいないんだっけ。
「今適性SSSって誰がいましたっけ?」
“確か4人じゃなかったか? 1人は現会長の伊倉二斗”
“あと現役を引退して政治家に転向した 津名見(つなみ) 総一郎(そういちろう) さんだね。今探索者の地位向上に努めてる人”
“あの人ね。彼が首相になったら日本もっと良くなりそう”
“やはり探索者上がりだから探索者からの評価は高いね。あと声優の 織部(おりべ) 魅羅(みら) ”
“あの人もなー。再生持ちでしょ? 何歳だよあの人”
“17歳と××ヶ月”
“草”
“草”
“草”
津名見総一郎は兎も角、織部魅羅はオタク界隈だとかなりの有名人だ。声優と探索者の二足の草鞋履いてる人。声優としても実力があって公式の年齢はコメントにもある様に17歳××ヶ月。
“けど残り1人がなぁ……”
“蔵本だろ。 蔵本(くらもと) 玄弥(げんや) 。アイツ性格悪すぎ!”
“見てくれはチャラ男。性格は最悪。だけど下手に注意出来ない。適性SSSだから。何とかしてほしい”
“アイツだけは海外に行ってほしい”
“日本の恥晒すからやめろ”
“いても迷惑、他所に行っても迷惑とかどんだけだよ……”
“しかも蔵本と津名見さんって同級生らしいよ”
“うわぁ……”
“性格に天と地ほどの差がある。比較するのもなんだけど津名見さん、あんなのが同級生とか居た堪れないな”
蔵本玄弥か……会う事はないだろうけど気をつけとこ……って落とし穴だ。
「危ない危ない」
“間一髪……じゃないな。余裕で避けてるし”
“いや一瞬落ちたと思ったぞ”
“普通は落ちる。普通に引っかかってるから落っこちる。なのに何で落ちないの?”
“答え。適性SSだから”
“すげー説得力だな”
という感じで迷宮を進む。暫くして。
「お」
“魔物ハケーン”
“オークかな?”
“上層の代表的な魔物だな”
“伝承では雄しかおらず女性を犯して孕ませる魔物なんだけど、迷宮ではそんな話聞かないな”
“ん。ただの豚面の人型魔物”
まあエロゲでは定番の魔物だけど、そんな事はしないらしい。女性の敵……ではないが人類の敵には変わりない。
「さて、いっちょ殺りますか!」