軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【記念SS】クロエ、ぬいぐるみ目覚ましを作る(3/4)

「ナタリアさんって、毎朝どうやって起きているの?」

急な質問に、ナタリアが目をぱちくりさせた。

「どうしてそんなことを聞くの?」

「朝起きられないから、何とかならないかなーと思っていて」

ナタリアが心底驚いたように目を見張った。

「まあ! ココさん気にしていたのね! てっきり開き直って冒険者を下僕代わりに使ってるんだと思っていたわ!」

「……うん、まあ、一応ね」

クロエは目を逸らした。

昨日チェルシーに同じことを言われた気がする。

ナタリアが、指を顎に当てて考え込んだ。

「そうねえ。私はスープの香りで目が覚めることが多いかしら」

家族で住んでいるため、母親が作るスープの香りが目覚まし代わりになっているらしい。

クロエが、なるほど、とうなずいた。

「確かに、美味しそうなスープの香りって目が覚めますよね」

「そうなのよ。特に朝はお腹が空いているから。あと、お母さんに『おはよう』って言われると、起きなきゃって思うわね」

そう言いながら、ナタリアがテキパキと会計を済ませる。

そして、買い物が終わって「またきてね!」と見送られて店を出ると、オスカーが待っていた。

「ずいぶん可愛らしいぬいぐるみを買ったな」

「はい、気に入ったんです」

クロエが嬉しそうにぬいぐるみを抱える様子を、オスカーが微笑ましそうにながめる。

その後、2人は歩いて冒険者ギルドに向かった。

「あら、ココさん」

制服姿の眼鏡をかけた真面目そうな若い女性――いつもお世話になっているギルドの受付のお姉さんが笑顔で迎えてくれる。

「今日はどうされました?」

「空の魔石を幾つかください」

「はい、少々お待ちください」

お姉さんが空の魔石が入っている箱を出してきてくれる。

そして、選んだ魔石をお姉さんが袋に入れてくれているとき、クロエはふと尋ねた。

「いつも、朝どうやって起きていますか?」

手を動かしながら、お姉さんが不思議そうな顔をした。

「急にどうされたんです?」

「僕、朝起きられないから、何とかならないかなーと思っていて」

お姉さんが思わずといった風に手を止めると、驚いたように顔を上げた。

「ココさん、気にされていたんですね。てっきりそういうこと気にしない方かと思っていました」

「……うん、まあ、一応、気にしてはいる、かな」

クロエは目を逸らした。

何だかみんなに同じことを言われている気がする。

お姉さんが、考え込んだ。

「そうですね……、私は目覚ましで起きた後に、冷たい水で顔を洗います。冷たい水って目が覚めますから」

なるほど、とクロエがうなずいた。

そういえば、昔怒った姉に、水をぶっ掛けられて起こされたことがあるわ、と思い出す。

(確かに、あの時は一気に目が覚めた気がする)

その後、クロエはお礼を言って冒険者ギルドを出ると、オスカーと共に買い物を再開した。

金物屋、鍛冶屋などで買い物をすると、大きな荷物を抱えて薬屋に戻る。

そして、オスカーに「ありがとうございました」と丁寧にお礼を言った後、

クロエはいそいそと作業台の上に買ってきたものを並べた。

これから魔道具を作ると思うと胸が高鳴る。

(さあ! 作るわよ!)

そんなクロエを見ながら、オスカーが口角を上げる。

その後、クロエはオスカーに依頼された毒の解析を進めながら

その合間にぬいぐるみ目覚まし作りに没頭した。

ぬいぐるみの背中部分を丁寧に切って骨組みを入れ、機能を作り込んでいく。

そして、ちまちまと作ること、約1月後。

「で、できた!」

ついに、ぬいぐるみ目覚ましが完成した。

見かけは太ったピンクのウサギのぬいぐるみだが、

中身は、オスカー、ナタリア、ギルドの受付のお姉さん、の3人の起きるノウハウが全て詰め込まれているという、驚きの超高機能目覚ましになっている。

(3人の知恵と技が詰まっているんだもの、間違いなく最強の目覚ましよ!)

ちなみに、買った時よりも太っているのは、寝ぼけて投げつけても大丈夫なように、綿を増やしたからである。

これにより攻撃力も、いい感じで弱まった。

クロエは、ずっしりと座るピンクの太ったウサギを抱き締めると、嬉しそうに 頬摺(ほおず) りをした。

「あなた、とても可愛くて素敵よ」

クロエは思った。

これは明日の朝が楽しみだわ、と。

しかし、クロエはこれを使うことができなかった。

この日の夜、黒ローブの男たちがクロエを攫いに来たため、急遽オスカーと共に国に帰ることになったからだ。

(※Web版目次『第二部 10.黒ローブの男たち』

(せっかく作ったのに、残念だわ……)

オスカーと共に馬に乗って帰国しながら、がっかりするクロエ。

しかし、このぬいぐるみ目覚まし時計は、意外な活躍をすることになる。

クロエが、サイファの街を出た翌日。

隣の『虎の尾亭』の看板娘のチェルシーが、クロエから預かった鍵で薬屋に入った。

目的は、作ってある薬を冒険者ギルドに渡すためだ。

そして、冒険者ギルドに薬を渡した後、

彼女は、戸締りを確かめるために家の中を見て回った。

1階の窓を閉め、階段を登って2階の住居部分に上がる。

そして、

「ん?」

彼女は、クロエの寝室の棚の上に

ピンクの太ったウサギのぬいぐるみが置いてあることに気が付いた。

(第4話に続く)