軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【記念SS】クロエ、ぬいぐるみ目覚ましを作る(2/4)

翌朝、いつも通り冒険者に叩き起こされて、薬屋の営業を終えた後、

クロエは作業机に向かって、真剣な顔で設計図を書いていた。

(いい感じの物が作れそうだわ)

この1年、古代魔道具を分解しまくって、新しい知識を手に入れた。

それを応用すれば、最強のぬいぐるみ目覚ましを作れるに違いない!

(やるわよ!)

彼女は、定規やコンパスなどを使いながら、熱心にぬいぐるみの内部設計を始めた。

骨組みや構造を考案し、紙にどんどん書き込んでいく。

そして、大体の設計が終わり、彼女は考え込んだ。

(大枠はこれでいいとして、問題は搭載機能よね)

以前のぬいぐるみには、歩行機能とダンス機能が付いていた。

5分以上鳴って起きないと、ベッドの上で激しめのダンスをするのだ。

お腹をキックされるなど、相応のダメージは受けるが絶対に目が覚めるので、とても重宝していたのだが……

(前と同じっていうのも、芸がないわよね)

それに、前のものは、無理矢理起こされた感じがあって、目覚めがあまり良いとは言えなかった。

もうちょっと自然な感じで目覚めるような目覚ましを作りたい。

(どんな機能がいいかしら……)

彼女がうんうんと唸っていると、

チリンチリン、と裏門のベルが鳴った。

裏庭に出て門を開けると、そこには紺色のローブ姿のオスカーが立っていた。

どうやら様子を見に来たらしい。

「どうぞ、お入りください」

中に招き入れると、彼は、ふと机の上の設計書に目を止めて、不思議そうな顔をした。

「これは……、ぬいぐるみ……の中身か?」

「はい、昨日言っていた目覚ましを作ろうと思って」

オスカーが、なるほど、という顔をした。

「そういえば、廃教室にあった君の部屋に、ぬいぐるみがあったな。目覚ましということは、音が鳴るのか?」

「ええ、まあ、そうするのもアリなんですけど、それだけだと、ちょっとつまらないかなあと思って」

そして、クロエはオスカーに尋ねた。

「オスカー様ってどうやって朝起きてます?」

オスカーは寝坊するというイメージが全くない。

なんなら、10分前には起きているイメージだ。

彼の起きる技術を取り入れれば、最強のぬいぐるみ目覚ましが出来上がるのではないだろうか。

そんなことを考えるクロエではあったが、オスカーの答えは予想外のものだった。

「基本的に、前日に〇時に起きる、と3回唱えて寝るようにしている」

「……え?」

「3回唱えて寝ると、起きられるんだ」

オスカー曰く、騎士は睡眠の訓練もするらしく、

寝る前に念じれば目覚ましなしでも起きられるらしい。

クロエは呆気にとられた。

まさか、この世の中にそんなことができる人間がいるとは思わなかった。

(この人、本当に同じ人間なのかしら)

驚くクロエに、オスカーが「参考になれずに済まない」と申し訳なさそうな顔をする。

そして、ふと思いついたように口を開いた。

「ただ、目覚ましは使ってはいないが、起きられるように工夫はしているな」

「工夫?」

「ああ、早く起きる時はカーテンを開けて寝るようにしている」

オスカー曰く、部屋が明るいと目が覚めやすくなるらしい。

「あと、窓を開けておいたりもするな。鳥の鳴き声でも目が覚めやすくなるからな」

クロエが、なるほど、とうなずいた。

「窓とかカーテンを開けると目が覚めやすいのはあるかもしれませんね。この前、うっかり窓とカーテンを閉めて寝たら、気が付いた時には翌日の夕方でした」

「……そこまでいくと違う気もするが、明るさとか音は重要だと思うぞ」

「そうですね」

なるほどなるほど、とうなずくクロエ。

その後、ぬいぐるみ目覚ましの材料を買うために、2人は街に出た。

春の光に包まれた街は、どこかのんびりとしている。

クロエの横をゆっくりと歩きながら、オスカーが口を開いた。

「どこへ行くんだ?」

「まずは道具屋でぬいぐるみを買って、その後冒険者ギルドで魔石を買おうと思います」

通りの端にある道具屋に到着すると、しっとりとした雰囲気の色気のある美人――看板娘のナタリアが笑顔で迎えてくれた。

「いらっしゃい、ココさん。何かお探し?」

「うん、ぬいぐるみとかある?」

ナタリアが目をぱちくりさせた。

「あら、珍しいわね。こっちよ」

ナタリアについて店の奥に行くと、そこには大小さまざまなぬいぐるみが並んでいた。

「こんなにいっぱいあるんですね」

「女の子へのプレゼントに人気なのよ」

クロエは慎重にぬいぐるみをながめた。

中に骨組みを入れることを想定しながら、じっくりと選ぶ。

そして、

「これください」

手に取ったのは、抱えるほどの大きさのピンク色のウサギだった。

耳が長く、持ち上げるとゆらゆらと揺れる。

「可愛いの選んだわね。ラッピングする?」

「ううん、このままで大丈夫」

クロエは、ほくほく顔でぬいぐるみを抱き締めた。

大きさといい形といい、申し分ない。

(これはいい物が作れそうだわ)

そして、ふと思い出して尋ねた。

「ナタリアさんって、毎朝どうやって起きているの?」