作品タイトル不明
雑談配信をするよ!
いやーマジ大変だった。
いろんな人たちに群がられた俺は、登録しただけで結局帰ったわけで。
葵ちゃんにも心配されたけど、まあ無事家に帰れたから良かったわ。今度の探索で潜る人を探しているけど、そんな余裕なかった。
ってか、どうして俺があんなに騒がれたんだろう。この世は不思議だらけだ。
葵ちゃんとは逸れるみたいになっちゃったけど、後でチャットが来た。
葵ちゃん:すみません、すっごいバタバタしちゃいましたよね
:ああ、全然大丈夫! こっちこそなんかごめん。
葵ちゃん:とんでもないです。あの、ところで景虎さんは、ダンフェスには参加されるご予定ですか?
:ダンフェスって、あの特大イベントだよね。俺とかが参加していいのかな
ダンフェスのことは知ってるけど、流石に俺みたいな新人じゃ厳しくね? と思っていたが、葵ちゃんはそうは思ってないらしい。
葵ちゃん:景虎さんならきっと活躍できますよ!
:そ、そうかなー。
葵ちゃん:絶対そうです。良かったらまたギルドでお会いしましょう
:ああ、じゃあね
どうやら相当買い被られてしまったみたいだ。まあ、参加できるならしたいけど。あまりに慌ただしい一日に翻弄された俺は、家に帰るとさっさと寝てしまった。
◇
そんな大変な目にあった次の日、俺は雑談配信をすることにした。
今回はノートPCで配信をしてみる。スペックの低いやつなので、普段より画質は悪くなってしまうがしょうがない。
一応PCにゴーグルも繋いだ。ミリアのサポートがあるとやっぱり助かるし。
「よし……もうちょっと……」
『配信スタートです』
「うわ!? び、ビックリしたぁ。お、こんばんはー! カゲチャンネルです」
いつも唐突なAIボイスに驚きつつも、雑談配信は無事スタートした。画面を見ると、もうコメントが沢山届いてるっぽい。
:ばんわー!
:うお、今日は雑談かー
:とうとうこの日がキター!
:待ってたよぉおおカゲチャンネルぅう!
:三日前から待機してたお
:こんばんは
:ばんちゃー
:初めての雑談じゃね?
:聞きたいことが山ほどあるんだわ
:意外にもイケメン
:どんな雑談になるか楽しみ!
:いえーい!
:カゲちゃん!
:葵チャンネルから来ました
:これが話題のあの人か
:こんばんはーーー!
:やあ
:き、来たあああああああ
:イケメンじゃん
やっば。挨拶だけでこんなにチャット欄が賑わうなんて、予想以上だったんだけど。
でも、ここで怯んでいる場合じゃない。
「みんな、今日は配信に来てくれてありがとう。今回は以前から希望してくれてた、雑談配信をするよ! それで、どうすっかな。まずは自己紹介か」
ちらっと同接を見たら、もう十万を超えちゃってる。以前よりも人が増えるペース早くね!? なんか心臓がドキドキしてきちゃったし。
「名前は竜牙景虎。歳は二十二で、今年大学を卒業したんだ。でも入ったばっかの会社で速攻クビになっちゃってさ。それでしばらくダンジョン探索で生活を凌いでたっていうか。思ったより稼げるからビックリしてるっていうか」
うーん。何を喋っていいのか分からん。とりあえずは簡単なプロフィールを伝えてみたんだけど、場が冷えちゃうかなぁ。
しかし、チャット欄を見るとそんなこともなかった。というか、めっちゃ沢山質問が来てる!?
:意外と普通w
:サブスクってなんですか?
:ミリアちゃんについて詳しく
:今五月だけど、一ヶ月くらいでクビになったってこと?
:会社クビになるの早すぎて草
:レベル幾つ?
:探索者レアリティは?
:召喚ガチャって何?
:探索者昔からやってたの?
:こないだのダンジョンキーについて教えて
:つーかサブスクの話が謎すぎて、早く聞きたかったんよ
:レベル幾つ?
:彼女いますか?
:葵ちゃんとはどういう関係?
:みんな質問しすぎだろw w
:リベリオンに入ったって噂だけどマジ?
:そういえば、アイと知り合いだって本当?
:自己紹介を聞くだけだと、なんか悲惨
:AIミリアちゃんは?
:葵ちゃんを助けた時、ノエル有栖川とは会った?
:質問ラッシュやばすぎて草
:やっぱ一番気になるのサブスクなんだよなぁ
……な、なんだよこれ。
ここまで質問責めにあうなんて思ってなかった俺は、チャット欄を呆然と見ていて喋りが止まってしまう。
「あ、あー。どっから答えればいいのかな。サブスクはその、配信機材のゴーグルを買った時に登録したんだよ。月三千円で、すげーお得だって店員のおばあちゃんに勧められて。ログボとかもあるし、かなり得してる! ってか、サブスクって普通にあるらしいよ。知らない?」
:海外にはあるってこと?
:三千円の割にはサービス良すぎないか??
:店で登録したんかw
:え、そのお店めっちゃ気になる
:ないない。サブスクなんて見たことないって
:ええええ?
:ログボって……アプリじゃないんだから
:やっぱおかしい!
なんか誰も信じてないんだが。この後も反論の嵐がコメント欄に吹き荒れてる。
「なあミリア。みんなサブスクなんて知らないって言ってるぞ」
『探索者用のサブスクは、まだまだ世間に浸透しておりません。視聴者の反応は予想の範疇と言えます。あと数ヶ月もすれば、おそらくサブスクは常識になるでしょう』
最近ミリアにそう言われると信じてしまう自分がいる。なんか怖い!
でもAIの割にはいつも気を使ってくれてる感じがするし、詐欺とかだったらこんな優しくないよなぁ。
それにサブスクがあったから、今までダンジョンでヤバイ敵にあっても生き残れたわけで。
とか考えていたら、続いてこんな質問が目に止まった。
:進化の洞窟とやらに行ったらしいけど、実際進化(?)できたん?
進化……ああ、あれか。
「進化っていうか、上昇したよ! サブスクの機能で探索者レアリティがRからSRに上がったんだ。この前のイカの王冠を使った!」
この時、チャット欄が数秒間止まった。
あれ? 俺なんかまずいこと言った。そう焦りを感じた時、今度は猛烈なチャットの爆撃が来た!
『同接が二十万を超えました。また、ハイパーチャットが多数届いています』
「え、え、え!?」
自分の配信なのに、まったく理解できない状況になっていく。
ってか、まだ雑談始まって十分も経ってないぞ?