作品タイトル不明
もうこれ解放されてますよ!
一日経った午後のこと。俺は電車に揺られてある都市に向かっている。
以前約束してた、葵ちゃんからギルドを紹介してもらうのが目的だった。
「あ、いててて……」
ってか飲み過ぎた。玲奈のやつは以前よりチャット送ってくるようになったし、最近あいつ疲れてんのかな。
でも社会に出たら、きっとストレスでみんな大変なんだろう。このままでいいのか俺。
いくつか就職面接受けたけど、落ちまくっちゃうのは経歴か人柄がダメなのか……またはどっちもなのか。
うう……考えてたら気分が悪くなってきた。
とりあえず今は気持ちを切り替えよう。しばらくして目的地の駅に辿り着き、改札を出ると人で溢れかえってる。
ああ、こういう所にちょっと前まで、満員電車に揺られて通ってたっけ。
そんな記憶を思い出しながら、俺はギルドに辿り着いたわけで。
ビルの看板には【探索者ギルド リベリオン】って書かれている。反乱とか起こしちゃいそうな名前してる。
「お久しぶりです!」
「久しぶり! いやー、なんていうか、すげー豪華なギルドだよね」
もしかしてなんかの要塞? って思うほどごっついビルの中に入った俺は、久しぶりに葵ちゃんと再会した。
今日は制服姿みたいだけど、こんな可愛い子と青春過ごせる男子は、マジで幸せだなと思う。そのくらいアイドル感が凄まじい。
「はい! 実はここ、とっても有名なランカーの皆さんが沢山いるんですよ。これから景虎さんのことを紹介しますね」
「あ、ああ。ありがとう」
その後は受付に二人で行って、紹介してもらったことを説明し、諸々の用紙を提出した。
「では探索者カードの掲示をお願いします」
「はい。どうぞ」
「ありがとうございます。では確認しますね」
にこやかな受付嬢さんにカードを渡した後は、しばらく待ち時間になった。
病院の待合室に似たような場所にいるけど、人の流れが半端じゃない。
そういえば葵ちゃんは、どうやら俺の配信で気になることがいっぱいあるらしい。
「私、景虎さんの配信で知らない単語がいっぱい出てきて、すっごく興味があるんです!」
「なんか最近、よく言われるんだよね。でも、俺も知らないからなー。AIに言われてるだけだし」
「ミリアさんですよね?」
そう。最近では俺と一緒に、AIミリアのことも話題になっているらしい。声が可愛いとか綺麗だとか、めちゃくちゃ頼れるとか。最近のAIって凄えや。
「今度の雑談なんですけど、私もチャットにお邪魔してもいいですか?」
「来てくれんの? すげー盛り上がるし大歓迎」
「ありがとうございますっ。そういえば、ハイチャはもう解放されたんですか?」
「ああ、そういえば解放してない。ってか、申請もまだだったかも」
やっべ! と俺はすっかり忘れていた大切なことを今更思い出した。
ハイチャとは、ハイパーチャットの略であり、別名投げ銭とも呼ばれる。
要するにチャット欄でお金を投げてもらえる超ありがたい機能なんだけど、登録者数が一千人を超えていないと解放されない。
しかもハイパーチャットは、解放するために申請をしなきゃいけなかったんだ。忘れてたぁ。
ミリアには「今日こそ申請しなきゃ!」とか言ってたんだけど。マジ忘れっぽいわ俺。
「じゃあ今度の雑談まではお預けですね」
「うん。帰ったらすぐ申請……ってか今やるか」
スマホでUtubeアカウントにログインしてみる。申請自体は超めんどいけどスマホからでもやれるはず。
……と思っていたら、なんか妙なマークがアカウント名についてる?
「あれ、なんだろうこれ?」
「あ、もうこれ解放されてますよ! 私と一緒です」
そう言いつつ、白いスマホから同じ画面を見せてくれる葵ちゃん。確かに一緒だ。
「いつ申請したっけ? あれ、もしかして……ミリアがやってくれてたのかも」
「え、凄い! そんなことまでしてくれるんですか?」
「あ、そうだった……思い出した! 申請しておきますか? って聞かれてたわ」
あの時はあまりにも眠くて、申請お願いしたことすら忘れてた。
「凄いですね。それって便利すぎます!」
葵ちゃんはもう衝撃を受けまくってるみたい。すると、さっきの受付嬢がちょっぴり慌てた顔でこちらにやってきた。
「あ、あの。景虎さん、少々宜しいでしょうか」
「はい」
なんだか不穏だな、とか思って受付に向かうと、彼女が焦った顔で探索者カードを凝視していた。
「他の招待制ギルドに在籍されておりましたでしょうか?」
「いえ、在籍したかったけど、できませんでした」
「本当ですか……この実力で?」
「はい」
「探索者レアリティが、以前のデータと違っているのですが」
「あ、はい! 上がったんです」
「……上がっ……た??」
なんかビックリしたりされたり、俺にはもうよく分からん。
とにかく手続きは進めてくれるみたいなんだが、もう少し時間がかかるらしい。ざわつきが広がってるみたいで落ち着かない。
席に戻ると、葵ちゃんもキョトンとしてた。
「珍しいです。あの受付嬢さんが、あんなに驚くなんて」
「ヤバい経歴でも見つかったのかなと思った」
「え? 何かブラックな経歴があるんですか?」
「いや、何もないけど……しばらくプー太郎だからさ」
学生を前にして、情けない大人の姿を見せるのはしんどいもの。でもとにかく登録は完了したらしく、俺はリベリオンの一員になった。
「おめでとうございます! 親切な人がいっぱいいますから、きっとこれから楽しいですよ」
「葵ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう。じゃあ今日は——」
そろそろ帰ろうかな、と言いかけたところで、凄まじい視線を感じまくった!
な、なんだ!? どうした?