軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第95話 慢心のツケ(子供視点)

「へへへ、ファングボアも楽勝だったな。これで俺たちも一人前だ」

「嬉しいのは分かるけど、まだダンジョンの中なんだからね」

「はいはい」

俺はすっかり舞い上がっていた。

だって、ファングボアといえば子ども扱い卒業の証みたいなものだからだ。

パーティでファングボアを倒せたら、一冒険者として扱ってもらえる。

この街ではそんな風潮があった。

「グレイウルフが来たよ」

「了解」

斥候役のベイスの言葉に気持ちを切り替えて戦闘準備をする。

しばらくすると、グレイウルフの群れがやってきた。

ソフィーの魔法とミザリーの矢が二体のグレイウルフを足止めし、残った個体が俺たちの許にやってくる。

盾役のロンが引きずっていたファングボアの死体を置き、皆の前に立って攻撃を引き受け、その隙に俺とベイスがトドメを刺していく。

足止めで仲間と勢いを失った個体は各個撃破。

あっさり全滅させることができた。

「楽勝だな」

もうすっかり慣れたもんだ。

「また来る!!」

「なんだって!?」

でも、今回は一度の戦闘では終わらなかった。

別の方向からまたグレイウルフの群れがやってくる。

「ロビン、いいから構えて!!」

「わ、分かってるっての!! 二人とも頼んだぞ」

「任せて」

「うん」

とはいえ、ただのグレイウルフ。

お互いに声を掛け合うことで簡単に対処できた。

そのおかげで魔石が増えていく。

これだけあれば、装備代なんてまたすぐ稼げそうだ。それに、下の子たちにたくさんお土産を買って帰れるかも。

この時の俺はそんなことを呑気に考えていた。

「来たよ……!!」

「またか!?」

「何かおかしくない!?」

ただ、少しずつ状況が悪くなっていく。

進むたびにグレイウルフの襲撃の頻度がどんどん上がっていった。まるで俺たちのところに、この階層のグレイウルフが全て集まってきているみたいに。

誰かがグレイウルフを操っているようだった。

それでも俺たちは、しっかりと声を掛け合い、それぞれの役割を果たし、連携を取ることで、グレイウルフたちを全て倒すことができた。

『はぁ……はぁ……』

その代わり、俺たち全員が疲労困憊になってしまった。

まさかこんなに何度も戦うことになるなんて思わなかった。

ダンジョンでは何が起こるか分からない。

シルドさんたちに口をすっぱくして言われた言葉。確かにその通りだ。今までこんなふうにグレイウルフの群れに何回も襲われたことはなかった。

もう少し続いたらヤバかったかもしれない。

その光景を思い浮かべるだけでゾッとする。

そこでようやく俺は、自分が慢心していたことに気づいた。

これからはもっと気を付けないと。

「あれぇ、今日の獲物は優秀だなぁ?」

そう思った矢先、どこからか人の声が聞こえてきた。声がした方を見ると、ガラの悪そうな男が、獲物を見るような目で俺たちを見ている。

「ベイス?」

「わ、分からなかった」

斥候役のベイスは首を横に振る。

それはつまり、相手の方がベイスより格上だということだ。

「おいおい、駆け出しごときに後れを取るかよ」

呆れたように肩を竦める男。

「あんたは何者だ!!」

「本当に分からないのか?」

その男は、へらへらした態度で俺たちを見下すように笑みを浮かべた。

この街では初心者狩りが横行している。

その話は聞いたことがあった。でも、自分には縁遠いものだと思っていた。

「もしかして……初心者狩り……?」

「やっと分かったのか。確実に仕留めるためにも、獲物はしっかり弱らせないとなぁ?」

男は舌なめずりをしながら俺たちを値踏みするように見つめる。

「あのグレイウルフもお前が?」

「あぁ、そうだぜ」

何度も襲ってきたグレイウルフは、こいつが何らかの手で誘導したものだった。

俺たちをいたぶるように弱らせるために。

「くっ、お前ら、逃げろ!!」

そんなことにも気づかずに呑気なことを考えていたなんて――でも、今は後悔している暇はない。

「はーっはっはっは。逃げられると思ってるのかぁ?」

男は手を広げて俺たちをあざ笑う。

俺たちが逃げようとした方向に別の男が現れた。

そうだ。考えれば当たり前のことだ。初心者狩りは一人じゃなかった。

「ちっ、皆こっちだ!!」

俺は皆を連れて、まだ残っている道に逃げ込んでいく。

「い、行き止まり!?」

でも、それは間違いだったことに気づいた。

なぜならそこは袋小路だったからだ。

むしろ、俺たちはそこに誘い込まれていたんだ。初心者狩りの連中はダンジョンの構造を完璧に把握したうえで、俺たちを狙っていたに違いない。

あぁ、くそっ……全部俺のせいだ。

俺が挑発になんて乗らずにちゃんと休んでいたら、初心者狩りに会うこともなかった。アイリス姉ちゃんたちに話をしていれば、助けに来てくれたかもしれなかった。俺が慢心しなければ、皆をこんなことに巻き込まずに済んだ。

後悔ばかりが頭をよぎる。

「ほらほらっ、もう逃げないのかぁ?」

「くそぉっ!!」

逃げられないことを分かっていて、男が馬鹿にするように笑う。

こうなったら、一か八か攻撃を仕掛けるしかない。

「甘いなぁ」

「ぐはっ」

でも、あっけなく返り討ちにされてしまった。

戦闘力が違い過ぎる。

「ほら、どうした、かかってこいよ!!」

「うぉおおおおっ!!」

俺以外は全員萎縮してしまって動けそうにない。

俺が……俺がどうにかしないと!!

「おらぁああっ」

「ぐわぁああああっ」

でも、俺はすぐにボコボコにされてしまった。

くそっ、ここまでか……。

「おいおいっ、もう終わりかよ。張り合いがないなぁ……まぁいい。それじゃあ、いただくものをいただきますか」

初心者狩りの凶刃が、俺たちに振り下ろされようとしていた。