軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第89話 見た目で判断するのは危険

「ただいま」

「アイリスお姉さん、おかえりなさい。あの……そちらの方たちは?」

孤児院に戻ると、ソフィーちゃんをはじめとして、子供たちが見知らぬ大人たちを見て警戒している。

「この人たちは、皆の指導をしてくれる冒険者の人たちだよ。良い人たちだから安心してね」

自分が死んでも誰かを逃がそうとする人柄と、律儀に恩を返そうとするシルドさんたちが悪人だとは思えない。

実際に話してみてもそんな印象はなかった。良い人たちのはず。

「お前たちがアイリス嬢ちゃんが言ってた子供たちか。俺はシルド。後ろにいる仲間も含めて全員Cランク冒険者だ。よろしくな」

シルドさんとその仲間たちが各々挨拶をする。

「Cランク冒険者……」

「すげぇ……」

冒険者としての風格を漂わせるシルドさんたちを見て、子供たちが目を輝かせた。

明らかに私と会った時と反応が違う。

「私もCランク冒険者だけど?」

『え?』

ちょっとだけ悔しくなって口を挟むと、皆が「嘘でしょ?」という顔になった。

ぐぬぬ、解せぬ。

「おいおい、お前たち。アイリス嬢ちゃんは俺たちよりも強いんだぞ? 見かけで判断してたら足元をすくわれるぞ?」

見るに見かねたシルドさんがフォローしてくれた。

でも、それってつまり私の見た目が弱そうって言ってるのと変わらないんだけど?

「えぇ〜、でも、姉ちゃんって弱そうじゃん。強いのはアークとエアだけだろ?」

「あー、そういえば、確かに。あの時もアークが助けに入ってくれたな」

ロビンの言葉に、シルドさんが思い出しながら意見を翻す。

言ってることは事実だけど、なんだか納得いかない。

「ブルルルルッ(ぐわっはっはっはっは)!!」

「ピピピピピッ」

その様子を見ていたアークが、堪えきれないとばかりに大笑いし、背中に乗っているエアも、良く分かっていないけど楽しそうに笑う。

『ちょっとひどくない?』

『ひどくなど……ぶはっ……あるまい……くっくっく、あーっはっはっ――』

アークに念話しながら睨んだら、さらに笑い転げた。

ふぅ、どうやら私の力を見せる時が来たみたい。

「シルドさん、模擬戦しましょうか」

「お、おい、嬢ちゃん、顔が怖いぞ? じょ、冗談じゃねぇか、なぁ?」

シルドさんが焦ったように仲間たちに同意を求めると、全員首を縦に振った。

このままじゃ、私はアークとエアにおんぶに抱っこのお荷物認定されてしまう。それはちょっと許せない。

「それじゃあ、百歩譲って私の攻撃を一発だけ受ける、でもいいですよ?」

「何?」

挑発したら、シルドさんが片眉を吊り上げた。

良い感じに効いてるみたい。

「こんな小娘の攻撃一つ受けられない臆病者だ、なんて言いませんよね?」

「いい度胸じゃねぇか、嬢ちゃん。いいだろう、その挑戦受けてやるよ」

シルドさんはこめかみをぴくぴくさせながら私の提案に乗った。

こんなこと言われたら、いくら人の良いシルドさんでもイラッとしちゃうよね。ふっふっふ、私の試みは成功。

私はシルドさんに一発攻撃をすることになった。

孤児院の庭でシルドさんと対峙する。

『おい、やめた方がいいのではないか?』

アークが何やら心配そうに念話で声を掛けてくる。

『アークも私の攻撃が効かないと思ってるの?』

『そうは言っておらん。むしろ、逆だ。本当に手加減できるんだろうな?』

確かにアークの言いたいことは最もだ。

私の拳は遺跡の入り口の門を壊し、足は地面を割る。そのまま攻撃すれば大惨事になるのは見えている。でも、私だって日々成長している。

そのくらいの手加減ならできるはず。

『大丈夫だって。盾の上から軽く攻撃するし。いざとなったらポーション使うから』

『はぁ、我は忠告したからな』

念話の声に呆れが滲んでいた。

でも、流石に心配しすぎたと思う。

「準備はいいですか?」

「あぁ、いつでもいいぞ」

「それでは行きますね」

私が軽く地面を蹴って距離を詰めた。

「なっ!?」

シルドさんが目を大きく見開く。

ただ、盾役だけあってすぐに盾を構えた。

「驚いてる場合じゃないですよ? ちゃんと防いでくださいね?」

「何!?」

私は中指を親指に引っ掛けて輪を作り、シルドさんの盾の前に突き出した。

そう、いわゆるデコピンだ。

――ドンッ!!

「ぐっ、ぐわぁああああっ!?」

私が中指を弾いて盾に当てた瞬間、シルドさんが吹き飛んだ。

踏ん張って堪えようとしたけど、無理だったみたい。

「あっ、やば……」

ただ、私のデコピンの威力が予想以上に強すぎたみたい。

すぐには止まらず、柵を突き破って、ようやく地面に落ちた。

吹き飛ばされたシルドさんが起き上がる様子がない。

ちょっとやりすぎちゃったかも……。

そばに駆け寄って顔を近づけて様子を窺う。

呼吸もしてるし、怪我もなさそうだ。

私はホッとため息を吐いた。

『はぁ……だから言ったであろう』

後ろからアークの呆れるような念話が聞こえてくる。

私のデコピンを受けたシルドさんの盾は、無残に割れていた。

「それじゃあ、これからダンジョンに行くよ」

『イエス、マム!!』

シルドさんの意識が戻った後、皆に怯えられてしまった。

おかしい、こんなつもりじゃなかったはずなのに……。