軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第88話 助っ人

「それじゃあ、私はギルドに報告に行ってくるから待っててね」

「分かりました」

子供たちと一緒にダンジョンに潜る前に行くところがある。

それは冒険者ギルド。

理由は、二十階で遭遇したマーダーベアについて報告するため。普段出現しないモンスターだと聞いていたし、ちゃんと伝えておいた方がいいよね。

孤児院の子供冒険者たちと一度別れて、ギルドへと向かう。

中に入った途端、見覚えのある顔の冒険者が私に近づいてきた。

「アイリス嬢ちゃん、探したよ」

「シルドさん、無事に帰ってこられたんですね。良かったです」

二十階で助けた冒険者のパーティの盾役、シルドさんだ。

その後ろにはパーティメンバーが全員揃っている。ちゃんと生きているみたいでホッとした。

「あぁ、おかげさまでな」

「それで、どうかしたんですか? 私を探していたみたいですけど」

「マーダーベアの件、ギルドに報告してな。嬢ちゃんからも報告してほしくてよ」

「そういうことでしたか。私もちょうどそのつもりでした」

「おぉ、そうか。助かるよ」

シルドさんが受付嬢に話しかけると、なぜかギルドマスター室に通され、そこで昨日の顛末を説明することになった。

応接室あたりでサクッと話すだけだと思っていたのに。

「これは、ウチで買い取らせてもらってもいいかね?」

「はい、勿論です」

報告した後、マーダーベアは、イレギュラーの証拠として冒険者ギルドに買い取ってもらうことになった。

ダンジョンでは、マーダーベア以外にもその階層にいるはずのないモンスターが現れる現象は、たまに起こることらしい。

今回もそのうちの一つだろうとのこと。当事者同士の確認もとれたということで、イレギュラーの対応に関する報酬を貰った。

今回もかなり大きな金額だったので、孤児院に回るように手配してもらう。

これで少しは孤児院の運営が楽になったらいいな。

「アイリス嬢ちゃん、待ってくれ」

「シルドさん、どうしました?」

孤児院に戻ろうと思っていると、シルドさんに話しかけられた。

もう報告は終わったはずだけど……。

「言っただろ、助けてくれた礼はちゃんと払うってな」

「あ、そういえばそんなこと聞いたような? でも、全然大丈夫ですって」

「あのなぁ……。アイリス嬢ちゃんは大したことしてないみたいに言うけど、本当に凄いことなんだからな? 嬢ちゃんがやってくれたことは、絶対に他の誰にも成しえないことだ。あの時、生き残っていた俺たちはもう生きることを諦めていた。とにかく、他の誰かを巻き込まないように必死だった。それなのに、嬢ちゃんはあっさりマーダーベアを倒すわ。もう死んだと思った仲間を治療してしまうわ。今でも夢なんじゃないかって思ってんだからな? もし、助けたのが悪い奴だったら、奴隷にして一生こき使うって言われても文句言えないくらいの偉業なんだぞ?」

特に欲しい物もないし、遠慮しておこうと思ったけど、シルドさんが呆れたようにまくし立てる。

「そ、そうですか……」

そんなに凄いことをやっていたという感覚はなかった。

魔導銃(エーテルバスター) のヤバさは一目瞭然なんだけど、私は体が頑丈で多少薬が作れるだけなので、ヤバさをなかなか認識できないんだよね。

もう少し気を付けた方がいいかも。

「それで、嬢ちゃんには金を支払いたいと思ったんだが、正直、してもらったことの大きさを考えると、いくらになるのか想像もつかない。むしろ、俺たちの稼ぎでは一生かかっても払えない金額になりそうだ。だから、足りない分は嬢ちゃんが何かしてほしいことがあれば、それに協力させてもらおうと思ったんだ」

「なるほど」

「何か俺たちにできることはないか?」

「そうですね……」

私にはアークもエアもいるし、お金も十二分にあるから何も困ってない。

強いて上げれば、最高の性能を持つアイテムバッグやマジックテントの家バージョンみたいなアイテム、そして自動運転の馬車なんかは欲しい。

でも、シルドさんたちはCランク冒険者だと聞いている。Bランクの空鳴でも持っていなかったので、そういうアイテムは、多分もっと上位の冒険者じゃないと手に入れられないと思う。

「あっ」

考えを巡らせていると、一つの案が思い浮かんだ。

「なんだ? なんでも言ってくれ」

「私と一緒に子供たちの引率をしてもらえませんか?」

私は、孤児院の経営状況が悪いこと、子供たちが真っ当に生きていくには冒険者くらいしか選択肢がないこと、初心者狩りが横行していること、などを説明し、子供たちが冒険者として活動するための指導をしてほしいと頼んだ。

「なるほどな。分かった。それがアイリス嬢ちゃんの願いなら従おう」

「本当にいいんですか?」

あっさり了承くれたけど、子供たちに付き合えばシルドさんたちの稼ぎが減る。

無理強いはしたくない。

「あぁ。アイリス嬢ちゃんには本当に感謝しているんだ。それくらいで役に立てるならいくらでもやるさ。それに、これでも俺たちも中堅と呼ばれる冒険者だ。それなりに名前も通っている。アイリス嬢ちゃんの願いに応えられるはずだ」

シルドさんが嬉しそうな表情をして他のメンバーたちを順番に見ながら言った。

彼らもシルドさんの言葉に同意するように頷く。

シルドさんたちは本当に心から私に協力したいと思ってくれてるみたいだね。それなら迷う理由はない。

「そうですか。それではお願いできますか?」

「任せてくれ」

こうして私は、シルドさんたちと一緒に子供たちの自立支援をすることになった。