軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第65話 二重トラップ

「あちゃー」

「これは戻れそうにありませんね」

その光景を見ていたバルドスさんたちが「しまったなぁ」という顔をしている。

「多分、罠を解除するのがトリガーね。二重トラップだったみたい」

ロナさんの言葉を聞いて私が壊した水晶玉が思い浮かんだ。

「あっ、もしかして私が原因ですか?」

「えっと、まぁ、一応そういうことになる……かな?」

ロナさんは言いづらそうに視線を逸らす。

ロナさんは斥候を担当していて、そういうことに詳しい。つまり、私があの水晶玉を壊したことで崩落トラップが発動してしまったらしい。

助けることに夢中になって他のことが見えていなかった。

「すみません、全然気づかなくて……」

「いやいや、アイリスが助けてくれなきゃどっちみちモンスターの腹の中だったんだ。感謝こそすれ、間違ってたなんて思わないぞ」

「そうですよ。私たちも気づかなかったと思います。それに、こうして生きているんです。これからどうにでもできます」

バルドスさんとリースさんがフォローしてくれる。

『二重トラップはお前のせいではないだろ』

『ありがと』

『ふんっ』

アークも念話で励ましてくれた。

「それはそれとして、これからのことを考えよう」

そうだ。ここはまだダンジョンの中。反省は後からでもできる。今は早くここから抜け出さないと。気持ちを切り替えよう。

「そうですね。これからどうしましょうか」

「あそこは上階に戻るための唯一の道だったはずよ。先に進むしかないわね」

「後何階あるか分からないけど、そうするしかないかな……」

彼らはこの階層で稼いでいる冒険者だけあって、様々な情報を持っている。まとめると、先に進んでボスを倒す以外、現状ダンジョンから出る方法がないらしい。

力技で崩落した瓦礫を殴ることも考えたけど、ダンジョン自体への影響がどうなるか分からないので、やりたくない。

ただ、希望がないわけじゃない。モンスターの強さを考えると、後一、二階でダンジョンは終わるんじゃないかという話みたい。

でも、次の階層に行って戻ってきた冒険者がいないため、どんな状態異常が待ち受けているのか分からないとか。

私とアークだけならなんとでもなるけど、セインさんたちはそうはいかない。それなら、私とアークが先行するのがよさそう。

「すみません、私とアークだけで先に進んでもいいですか?」

「はぁ? 何を言ってるんだ?」

提案したら、バルドスさんは当然として全員が困惑した顔になった。

「次の階にはどんな状態異常が待っているのか分からないんですよね?」

「そうだ」

「多分ですが、私とアークにはその状態異常は効きません。それが一番リスクが少ないと思います。問題なければ一度戻ってきます」

「アイリスに状態異常が効かないのは本当だよ。それは俺が保証する」

セインさんが私の言葉を裏付けるように口を挟む。

「ううむ……それが一番安全か。分かった。申し訳ないが、アイリス、頼めるか?」

「分かりました」

今後の方針が決まったので、私たちは六階の階段を目指して進んだ。

「はぁっ!!」

「よっと!!」

「アイシクルランス!!」

モンスターの対応は任せてくれというので、五階に出てくるモンスターは『空鳴』に任せている。

「なんだか体がめちゃくちゃ軽くないか!?」

「ホントホント。敵が止まって見えるよ」

「魔力の威力も上がってるね」

「考えられるのは……アイリスさんのポーション、でしょうか」

戦闘が終わると、なぜか『空鳴』の人たちにジッと見つめられた。

「えっと、どうかしましたか?」

「……いや、なんでもない。先を急ごう」

気になって聞いてみたけど、彼らは全員首を横に振った。

なんだったんだろう……まぁ、いっか。

「そういえば、五階は何が売れるんですか?」

「あぁ、こいつらの素材がかなりの高値で取引される。なんでも、錬金術の材料として重宝されるんだとか」

バルドスさんが倒したばかりのモンスターを指さして言った。

「へぇ、アシッドスライムの核も高かったですもんね」

「それに比べても五倍くらいは稼げると思う。アシッドスライムの酸みたいに厄介な攻撃をしてくるわけでもないしな」

「五倍ですか!! それは凄い」

私が一日アシッドスライムを狩って得た報酬が金貨千六百枚くらい。単純に五倍にしたら、八千枚。

金貨一枚一万円くらいだから。約八千万円。四人で割っても二千万。どひゃー!! そりゃあ、一階でアシッドスライムなんかを相手にしてる場合じゃないよね。

「あそこが六階への階段だ」

状態異常にさえ気を付ければ、そこまで危険がないようで、ポツリポツリと会話をしながら進んでいるうちに階段にたどり着いた。

「皆さん、ありがとうございました」

ここまで何もすることなく来れたのは彼らが露払いしてくれたから。彼らは確かにBランク冒険者と呼ばれるだけの力や経験を持っていたと思う。

「何言ってんだ。アイリスに世話になるのは俺たちだっての」

「ホントホント。こっから先はアイリスに任せるしかないんだから」

「仲間を助けてもらった上にここまでしてもらって悪いね」

「皆の言う通りです。それにしても、本当に大丈夫ですか?」

心配そうな『空鳴』のメンバーに対して胸を叩いて答えた。

「はい、任せてください」

「くれぐれも気を付けてくださいね?」

「分かりました」

私は階段を下りて六階層へと足を踏み入れた。