軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 きんじょさま!?

「練れば練るほど色が変わって……こうやってつけて……美味い!!」

テーレッテレー!!

「何やってんだい、あんた……」

「いや、はははは……」

大きな釡の中に大量の材料を入れて、かき混ぜながら魔女さんごっこをしていたら、マリンダさんに半眼で見とがめられた。

ちょっとやってみたくなったんだから仕方ない。

私たちは畑を浄化する材料を手に入れて戻ってきて、調薬している最中だ。

そうこうしている内に、薬ができあがった。

今回用意した土地の浄化薬には、ネルーネ草を添加している。ネルーネ草は、トリューフ草の毒素を浄化する効果があり、通常の土地の浄化薬に付与した形だ。

「っと、これを水で薄めてできるだけまんべんなく畑に撒いていってください」

「分かったよ。任せときな」

マリンダさんに薬を渡し、私はまた薬を作る。

畑は広いので一回じゃ足りない。何度も調薬が必要になる。

「あんたら、水を大量に汲んできてくれ」

「わ、分かりました」

マリンダさんが村人たちに指示を出して、薬を撒いていく。

「本当にこんなんで畑が回復するんだろうか?」

「そうだなぁ。それにモンスターが来なくなるなんて信じられん」

「でも、筋女様のいうことだから間違いはないだろ」

村人たちも半信半疑といった様子。

きんじょ様? なんだろう、それ

「おおおおおっ、なんだ、これ、萎れてた作物が艶々になったぞ!!」

「こっちもだ!! 芽が元気になった!!」

「葉が青々としているぞ!!」

作物に生命力が戻ったのは、ちゃんと効いている証。トリューフ草の成分や匂いも消えて行っているはず。この調子で全体に撒いてもらおう。

それに、ネルーネ草は、トリューフ草の効果を打ち消すと同時に、ファングボアや獣系のモンスターが嫌がる匂いも出している。

一種の獣除けとしてもしばらく機能すると思う。

その声を聴いていた他の村人たちも集まり、総出で浄化薬を撒いていった。

「お疲れ様でした。これで多分、ファングボアは来なくなりますし、作物も育つようになるはずです」

浄化薬を撒き終えると、ほんのりと香っていた刺激臭もしなくなり、弱っていた作物たちも目に見えて力を取り戻したのが分かる。

これで、この村はもう大丈夫。

『ありがとうございました!!』

ただ、浄化薬の散布が終わると、村人たちからの態度が女神でも崇拝するかのようで、少し困惑してる。

他の薬師でも同じことができたはずので、ちょっと恐れ多い。

「それじゃあ、そろそろアタイたちも帰ろうか」

「そうですね」

ただの支援物資の配達だったのに、随分長居してしまった。もしかしたら、ギルドマスターたちを心配させてるかもしれない。

早めに戻った方がいいよね。

「あの、すみません」

「なんだい?」

「せめて今日までは泊まっていってはいかがでしょうか?」

「あ~、確かにそうだね。帰るのは明日にしようか」

「そうですね」

周りを見ると、もうすぐ日が暮れそうだ。

今から出たら、夜森の中を抜けることになる。ある程度アークが間引いたとはいえ、襲われる可能性は低くない。

それなら、明日朝に出発するのがいいと思う。

アークがいれば夜でも問題ないけど、安全に気を配るのが冒険者だからね。

「今日は村を危機から救ってくださった御三方を精一杯歓待させていただきます」

「ありがとうございます」

その日、飲めや、歌えの大宴会が催されることになった。

「ふぅ、お疲れ様」

騒がしかった宴会も徐々に落ち着いてきたころ、隅っこでぼんやりと村の様子を見つめる私の所に、マリンダさんがやってきた。

「あっ、マリンダさん。お疲れ様です」

「いやぁ、本当に村一つ救っちまうとはね。驚いたよ」

マリンダさんは私の隣に腰を下ろす。

「いやいや、他の薬師がいれば、同じように解決できたはずです」

私がやったことは農学の本を読んでいれば、誰でもできることばかり。

大したことをしたわけじゃない。

「そんなことないよ。アイリスがいなかったら、この村はヤバかったさ。それに他の奴らが仮に同じことができたとしても、今こうして奴らの笑顔を守ったのは、紛れもなくあんたさ。誇っていいと思うよ、もっと胸を張りな」

そう言って、マリンダさんは私の頭を撫でた。

私たちの前では村人たちが各々楽しそうに談笑している。ここに到着した時の陰鬱とした空気はどこにもない。

確かにマリンダさんの言う通りかもしれない。

「そうですか……そうですね……」

私はずっと誰かに認めてほしいと思っていた。

生きていていいんだと、役に立っているんだと。でも、誰よりも私を認めていなかったのは私自身なのかもしれない。

前世ではずっと迷惑ばかりかけていた私。

今世では役立たずでイラナイ子だった私。

だから、自分が生きていたらダメな存在だという考えがこびりついていた。

でも、目の前の光景を見ていると、少しくらい自分を認めて上げてもいいんじゃないかと思う。

「きんじょさまぁ!!」

「きんじょさま、ありがとー!!」

そんな風に黄昏ていると、村の小さな子供たちが私の許にやってくる。

来たばかりの時は大分やせ細っていたけど、少し良くなったように見えた。

それよりも――

「きんじょ様って何ですか?」

「あー、いや、アイリスが初日に丸太を担いでいたのを見て、村の連中が最初は筋力聖女様って呼んでたんだけど、子供たちには長かったみたいでな。短くして筋女様ってことらしい、あははは……」

「なんですか、それ!?」

お昼もなんのことかと思ったら、そういうことだったんだ。

はぁ……でも、定着してしまったものはしょうがないよね。

私は変な顔をしないように子供たちと話をする。

これで予定よりも長かった旅も終わりかぁ。結構時間も経ったし、街に戻ったらマジックバッグも入荷してるかもしれない。

入手出来たら、いよいよ本格的な旅だ。

今から楽しみだな。