軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第25話 誰も受けない依頼

翌日、四日目の建築現場が終わった後、冒険者ギルドにやってきていた。

『うーん、どうしようかな』

『別の依頼を受けるのか?』

『うん、昨日みたいに困ってる人がいるかもしれないからね』

『ふんっ、お人好しめ』

ご老人みたいに誰にも受けられてない依頼があるかもしれない。

「あっ」

そう思って掲示板を眺めていると、一つの依頼が目に入った。

「これ、もう何日も張りっぱなしみたい」

それはFランクの孤児院の修繕や庭の整備の依頼。

その依頼料は本当に微々たるもの。Gランクの依頼よりも少ない。これじゃあ、誰も見向きもしないのは当然だと思う。

でも、困ってる人がいるなら、私はこの依頼を受けたい。

すぐに受付嬢さんに依頼書を渡し、受理してもらった。

「えっと……こっちの方だと思うんだけど……」

『ふんっ、全く世話が焼けるやつだ。人間の子供の匂いはあっちだ』

「え、ホント? ありがと」

地図を貰ったけど、結構入り組んでいて中々たどり着けない。アーク嗅覚のおかげでどうにか目的の孤児院にたどり着くことができた。

「これは……確かに修繕が必要そうだね」

『ボロボロだな』

そこにあったのは、いかにも雨漏りしてそうな見た目の建物。

「おい、あんた、ここに何の用だ!!」

ぼんやりと建物を見ていたら、男の子が警戒心を露わにしてこちらを見ている。

「私、ギルドの依頼を受けてきたの」

「はぁ!? あの依頼を!? 誰の差し金だ?」

「誰って、冒険者ギルドだけど……」

なおさら怪しまれたみたい。孤児院はかなり廃れた区域にある。もしかしたら、治安が悪いのかも。

どうしよう……。

「こらっ、何やってるの!!」

「げっ、院長先生!!」

困惑していると、大人が出てきてくれた。子供たちが逃げるように散っていく。

女神さまの助けだ。

「ごめんなさいね、あの子たち、やんちゃで」

「いえ」

ふくよかで母性を感じさせる女性で、いかにも孤児院を切り盛りしていそうな雰囲気を出している。

「私はここの院長をやっているエメラと言います。あなたはどちら様かしら?」

「私、ギルドの依頼を受けてこちらに来たんです」

「まぁ、あの依頼を受けてくださったの?」

エメラさんも目を丸くする。

依頼を受ける冒険者はいないと思ってたみたい。

「はい、お力になれればと思いまして」

「でも、あなたみたいな細腕だと怪我してしまうんじゃ?」

「大丈夫です。これでも毎日建築現場で働いてますから」

私は力こぶを作ってみせる。

見た目は全然筋肉ないし、ぷにぷにだけどね。

「そうなの? それじゃあ、お願いしてもいいかしら?」

「分かりました」

半信半疑と言った表情のままのエメラさんに、資材や大工道具が置いてある場所まで案内され、私は修繕作業を始める。

『ちょっと天気が崩れそうだね』

『雨の匂いがする。急いで終わらせろ』

『そんなことまで分かるんだ』

『我にかかれば、この程度造作もない』

アークが得意げに答える。

徐々に空に黒い雲が広がり始めている。雨が降る前に終わらせよう。

私は作業の速度を上げた。

「うわぁあああっ、姉ちゃん、すげぇ!!」

「力持ち!!」

「カッコいい!!」

もくもくと作業していると、子供たちの声が――

振り返ると、私を警戒していた子供たちがキラキラとした目をして私を見ていた。

「どうかしたの?」

「姉ちゃん、そんなに細いのにすげぇな!!」

「お姉さん、冒険者なんだよね!! どんな仕事してるの?」

「ねえちゃ、お話して?」

超健康パワーで大きな資材を運び、次々と作業を進めていく私の姿が、どうやら彼らの琴線に触れたみたい。なんだか急に懐かれてしまった。

でも、今はお仕事中。放棄するわけにもいかない。

こんな時は頼れる相棒に任せよう。

『アーク』

『ふんっ、人間に触られたところでなんともならん。勝手にしろ』

『ありがとね』

傍で寝そべっているアークが体を起こし、こっちにやってくる。

「お仕事、終わるまで待っててね。このアークと遊んでていいよ」

「ホントか!?」

「やったぁ!!」

「わんちゃん!!」

子供たちは嬉しそうにアークに抱き着いたり、撫でたりしている。

子供たちをアークに任せ、私は黙々と作業を進めた。

気づけば、あっという間に夕方。

ちょうど作業もひと段落ついた。

「あの犬、全然捕まえられねぇ……」

「あとちょっとなのに……」

「はやいはやい!!」

子供たちはアークに遊んでもらって退屈せずに済んだみたいだ。

「こほっ……こほっ」

「ん?」

子供たちの中に、少し顔を赤らめ、咳をしている子供がいた。

「大丈夫?」

「……うん」

ぼんやりしていて、頭を触ると少し熱くなっている。

多分風邪の引きはじめだと思う。

「これ飲んでみて」

私は、一つだけ分けてカバンに入れていた、栄養ドリンクを子供に渡した。

「これは?」

「お薬だよ」

その言葉を聞いた子供の顔が苦虫を噛み潰したように歪む。

「にがいのいや」

「大丈夫。甘くて美味しいから」

「ほんと?」

「うん。嘘じゃないよ」

半信半疑と言った様子で子供が栄養ドリンクを口に含む。

「おいしい!!」

「でしょ?」

味に関しても散々言われたから、子供でも飲みやすくなっている。

風邪の引きはじめなら栄養ドリンクを飲めばすぐに良くなるはず。

「あぁ~、なんか美味そうなの貰ってる!!」

「ホントだ!!」

「ずるーい!!」

声を聞きつけて他の子どもたちが私の方に駆け寄ってくる。

「風邪の引き始めみたいだから、お薬飲んでもらったんだよ」

「そうなの?」

「うん、ごめんね」

お薬と聞いて皆が苦虫を噛み潰したような顔になった。

風邪を引き始めた子といい、よっぽど苦い薬を飲んでるんだろうな。

「もしかして……姉ちゃん、薬師なのか?」

一番年嵩の子がさっきまでの無邪気な雰囲気をひっこめて真剣な顔で聞いてくる。

「そうだけど? それがどうかした?」

「な、なぁ、助けてくれ!!」

突然の剣幕に少しびっくり。

「えっと、どうしたの?」

「病気で苦しんでる子がいるんだ!!」

そんな話を聞いて黙っていることはできない。

「……詳しく教えて?」

「分かった」

話を聞くところによると、昔は元気に遊んでいたけど、病気になってからずっとベッドで寝たきりの子がいるみたい。

私に薬を作って助けてほしい、ということだった。

「まぁ!? こんなに綺麗になって!!」

話を聞いている最中に、エメラさんの驚く声が聞こえてきた。

「できる範囲で修繕と庭の整備を行いました。これで大丈夫ですか?」

「まさかこんなに綺麗にしてもらえるとは思わなかったわ!! ありがとうね!!」

やっぱりこうやって人の笑顔を見るのは嬉しい。

それはそれとして話を切り替える。

「いえ、お仕事ですから。それで、失礼ですが、この子から病気の子がいると聞いたんですけど……」

「あら、どうして話したのかしら……」

その瞬間、エメラさんは表情を曇らせた。

とても心を痛めているのが分かる。

「私、一応薬師なので」

「そういうことですか……分かりました。詳しく説明しますね」

私の職業を聞いたエメラさんは、意を決した様子で語り始めた。