軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 人助け

「それじゃあ、嬢ちゃん、後二日頼むぜ」

「はい、任せてください」

今日も建築現場の仕事は昼前には終わった。

皆が口々に感謝の言葉を告げて去っていく。

超健康、様様だね。

皆がいなくなったところに、ちょうどよくアークも戻ってきた。

「終わったか」

「おかえり。うん、お金も入ったし、マジックバッグを買いに行こっか」

「貯まったのか?」

「そう。臨時収入があったからね」

朝、緊急対応報酬の金貨百枚を貰ったことで、所持金が金貨三百枚を超えた。

色々買ったから本当にギリギリ。でも、宿には十日分の宿泊費を払ってるし、後二日働けば、建築現場の報酬も入ってくる。その上、正式な報酬も貰える。

今日マジックバッグを買ったとしても生活は成り立つはず。

「こんにちは~」

「あらっ、この前のお嬢さんね。今日はどうしたんだい?」

雑貨屋に行くと、店主のお婆さんが私を出迎えてくれた。

「金貨三百枚貯まったので、マジックバッグもらえますか?」

「あらあら、それはタイミングが悪かったねぇ」

「え?」

お婆さんの言い様に嫌な予感がする。

もしかして……。

「実は昨日、在庫が売り切れてしまったよ。売れ筋商品の一つだからねぇ。再入荷までしばらく掛かると思うわ」

「なん……だっ……て……」

嫌な予感は的中した。

私はその場に崩れ落ちる。

まさか売り切れるなんて思わなかった……。

でも、少し考えれば、分かることだよね。マジックバッグは確かに高価だけど、持っているだけで相当便利になるアイテムだ。お金さえあれば、買わない手はない。

「いつもはこういうことはしてないんだけどね。あの爺さんの紹介だし、昨日鉱山の奴らを助けてくれたんだろ? 次入荷したら特別にとっておいてあげるよ」

「本当ですか!?」

お婆さんの提案を聞いて、どうにか気持ちを建て直して立ち上がった。

「あぁ、だから、次まで我慢しておくれ」

「ありがとうございます。必ず買いに来ますね!!」

「待ってるよ」

これで次に入荷されたら、確実にマジックバッグが手に入れられる。

それまでは今のバッグでやりくりするしかないか。

私とアークは雑貨店を後にした。

『はぁ……』

手に入るのは確実になったけど、落ち込むのは止められない。

『全く、この程度のことでウジウジしおって』

『そうだけど、今日手に入ると思ったからがっかりもするよ。アークだって、狙っていた獲物に捕まえる寸前で逃げられたら、がっかりするでしょ?』

『我はそのような失敗はしない!!』

『例えばだよ、例えば』

アークに愚痴りながら街を歩く。

「うわぁあああっ」

叫び声が聞こえた方に視線を向けると、ご老人が今にも大きなタンスに押し潰されそうになっていた。

「危ない!!」

――ダンッ

私の体が勝手に動いて地面を強く蹴る。

次の瞬間には、ご老人とタンスの間に入ってタンスを押さえていた。

「ん? ワシは無事……なんか?」

「大丈夫ですか?」

状況が呑み込めず、キョロキョロと周りを見回すご老人に話しかける。

「もしかして、お嬢さんが助けてくれたのか?」

「はい。たまたま見かけたので」

「ありがとうね」

「どうしてこんなことに?」

スキルがある世界とはいえ、ご老人が人より大きいタンスを運ぶのは無理がある。

「いやぁ、冒険者ギルドに引っ越しの手伝いの依頼を出しておったんじゃが、誰にも受けてもらえなくての。一人でやろうと思っておったんじゃ」

「それは流石に……」

「ワシャア、この街に伝手がないからのう。仕方あるまい」

悲しげに苦笑するご老人。

放っておけそうにない。

「……分かりました。その依頼、私が引き受けます」

「嬢ちゃんが?」

「見ててください」

私は軽々とタンスを持ち上げてみせる。

「なんと!?」

「これなら受けても大丈夫ですよね?」

「ワシは文句はないのじゃが……いいのかい?」

「ちょうど体を動かして気分転換がしたかったですし、むしろ助かります」

このまま宿に戻ったところでマジックバッグのことでウジウジと悩んでしまうに違いない。それなら、このお爺さんのお手伝いをしたい。

「そうかい。それじゃあ、よろしく頼むよ」

「分かりました。依頼を受けてくるのでちょっと待っててください。一人で運んじゃだめですからね?」

「分かっておるよ」

ご老人と話をつけ、アークに念話を送る。

『アーク、お爺さんが無理しないように見ててね』

『ふんっ、この人間は見ていなければ死んでしまいそうだからな。我は弱者に寛大ゆえ、見ていてやろう』

『ありがと』

私は急いで冒険者ギルドに行って、引っ越しの依頼を受けて戻ってきた。

「それじゃあ、始めますね。どこに運んだらいいか、指示してもらえますか?」

「分かった」

指示に従い、馬車の荷台に乗っていた荷物を運び出し、家の中に配置していく。

「お嬢さんは一体何者なんじゃ!?」

軽々と家具を運ぶ私を見てご老人が目を剥く。

「ちょっと力持ちなだけの冒険者ですよ!!」

私はニッコリと笑って荷物を運び続けた。

「信じられん……ほんのわずかな時間で引っ越しが終わってしまうとは……」

「こういうお仕事は慣れてますから」

建築現場で運ぶ仕事は慣れてるし、超健康のおかげで重さも感じないから、このくらいはなんでもない。

「人は見かけによらんものじゃな。今日は助かった。報酬に色を付けさせてもらう」

「いいんですか?」

思いがけない言葉に無意識に聞き返してしまう。

「うむ。お嬢さんはそれだけの仕事をしてくれたんじゃよ」

「ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきますね」

今まではランクのこともあって、こういう仕事は受けられなかった。でも、人から直接感謝されるなんて良い仕事だと思う。

こういう仕事も受けてみようかな。