軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 調合無双

薬師の一人が荒い口調で罵った。

「はぁ!? 素人は黙ってろ!!」

他の薬師たちも目を吊り上げて私を見ている。

命という失ったら二度と戻らない尊いものが天秤に乗っている状況。それも、必死になって薬を作っていたのにもかかわらず、こぼれ落ちそうになっている。

そんなところに、私みたいなどこの馬の骨とも分からない人間が急に現れれば、逆上するのも当然。私だって彼らの立場なら同じような気持ちになると思う。

でも、それでも私は薬師の端くれ。

少なくともお爺さんが認めてくれるくらいの薬は作れる。

「私も薬師です。回復ポーションなら作れます!!」

「お前のように若くて実力のない薬師はなんの役にも立たん!! 出ていけ!!」

「出ていきません。バッツさんは私のポーションを買い取ろうとしてくれました。それなりには効果はあるはずです」

「なんだと!?」

私の言葉に薬師たちがざわついた。

今は一刻を争う。

だから、申し訳ないけど、お爺さんの名前を借りさせてもらった。

その効果は覿面だ。

「ワシもこの子に手伝ってもらった方が良いと思うぞ?」

勝手に名前を使ったにもかかわらず、お爺さんも私を擁護してくれる。

「バッツさん、あんた、何言ってるのか分かってんのか!?」

「実際に作った場面を見たわけではないが、ギルドマスターに渡した回復ポーションはこの子が本来ワシの店に売るはずだったものだ。その品質はワシが確認済み。あそこまで品質の高い魔法薬は見たことがない。ワシでもあれほどの魔法薬は作れん。それに、この子の薬草の処理は完璧だった。相当な技術を持っているのは間違いない」

「ま、魔法薬だって!? こんな子供が!?」

お爺さんに集まっていた視線が私に移った。

「そうだ。しかも、たった一晩で五十本分の回復ポーションを作ったという。手伝ってもらう余地は十分にあるのではないか?」

「魔法薬を一晩で五十本……まさかそんなことがあるはず……」

お爺さんは皆の前で頭を下げた。

「少なくともワシはこの子を信じている。ワシに免じて手伝わせてやってくれ」

まさかそこまで信頼してもらえるとは思っていなかった。

「お願いします!!」

お爺さんがそうしてくれた以上、私も隣で深々と頭を下げる。

「わ、分かりました!! バッツさんにそこまでされちゃあ、断れねぇよ。嬢ちゃん、どれだけ実力があるかしらねぇが、足だけは引っ張るなよ!!」

「はいっ!! ありがとうございます!!」

どうにか私も薬を作らせてもらえることになった。

「お爺さん、ありがとう」

「ワシは人を救える可能性が一番高い選択をしたにすぎん。礼は不要だ」

「それでもお礼が言いたかったんです」

「ふんっ、勝手にしろ。それよりもすぐに取り掛かるぞ」

「はいっ!!」

お爺さんにお礼を言った後、薬師の案内に従う。

急いで回復ポーションを作って、怪我人を助けなきゃ。

「お前はここで薬を作れ」

「分かりました」

私は材料がすでに用意された場所で薬を作り始めた。

いつも通り、刻み、磨り潰し、混ぜる。

今の私にはもう雑音は届かない。

「常に魔力を流し込みながら、正確に作業しているだと!?」

「な、なんだ、あの精密な動きは!?」

「どうして分量も計らずに正確に調合できるんだ!?」

ただひたすらに調合の工程をこなす。そして、五分後に一本目が出来上がった。

「できました」

「あ、あぁ……」

私は近くにいた人に回復ポーションを渡してすぐに次の薬を作り始める。

なんだかぼんやりしていた気がするけど、気のせいだよね。今はそんなことよりも、もっと作らないと。

「たった五分で作り終えただと!?」

「我らでも一本数十分は掛かるというのに!?」

「信じられん!!」

なんだか周りが騒がしいけど、それどころじゃない。

「刻むのは最低限、磨り潰しはもっと短縮……」

私が今までの工程を整理して、調合中の行動を最適化していく。

「バカな、連続で調合しただと!? どんな薬師だって休息が必要なはずだ!!」

「魔力は一体どうなっている!?」

「凄まじい調合技術と速度だ!!」

先ほどよりも完成に掛かる時間が短くなった。

もっと、もっと早く!!

全神経を集中してどんどん無駄を省いていく。

「どうなっているんだ!? どんどん調合速度が上がっているぞ!?」

「もはや手元の動きが見えん!!」

「あの嬢ちゃん、一体何者なんだ!?」

私はただひたすらに回復ポーションを作り続ける。

五分が四分、四分が三分、三分が二分へと短縮していく。

『おいっ、ずっと魔力を流し続けてるぞ? 大丈夫なんだろうな?』

『大丈夫だよ』

アークが心配してくれたけど、何も問題ない。多分これも超健康の効果だと思う。

全ての無駄を省いた結果、私は一分で一本のポーションを作れるようになった。

今はこれ以上早くするのは難しそう。

このスピードを維持しながらポーションを量産していく。

「もう夜中だぞ!?」

「いったいどれだけ魔法薬のポーションを作り続けているんだ!?」

「化け物か!?」

まだだ……まだ止まるわけにはいかない。

「誰も死なせない、誰も不幸にさせてたまるか……あっ……」

でも、手元を探ると、もう材料が全てなくなってしまっていた。

「誰か、材料を!! もっと材料をください!!」

私は急いで周りの人に訴えかける。

『……』

でも、辺りは静まり返っていて、誰も何も答えてくれない。

何? どうしたの? なんで誰も協力してくれないの!?

「お願いです!! このままじゃ……このままじゃ、人が死んでしまう!!」

「お前さん、もういいんじゃ……」

私が必死に訴えかけていると、そっと肩に手が置かれた。

振り返ると、お爺さんが諦観を含むような表情で私を見ている。

「え……」

もしかして……もしかして間に合わなかった? もう誰か死んじゃったの? 私の調薬が遅いから? 一分で薬を作るのに満足したから?

頭の中をマイナスな考えが埋め尽くす。

「もう作らなくていいんだ」

「どうしてそんなことを言うんですか!!」

私はカッと頭に血が上って、お爺さんに詰めよった。

たとえ、誰かが死んだとしても他の人は諦めちゃいけないでしょ!?

「いや、もう全員助かっとるんだ。お前さんのおかげでな」

「へ?」

今の私はさぞ間抜けな顔をしていたに違いない。