作品タイトル不明
第172話 街へ戻ろう
「う゛う゛ーん!! それじゃあ、そろそろ街に戻ろっか」
昼食を食べ、のんびりと過ごしたあと、私は背伸びをしながら呟く。
あれから数日間、私たちは外でアウトドア生活をして過ごした。
日中は水遊びをしたり、運動をしたり、薬草を取ったり、まれに出てくるモンスターを倒したりしていた。
精神的なストレスは完全に発散されたと思う。
「そうですね。ドレスの受け取りがあるのでちょうどいい頃合いかと」
「我は外の方がいいのだがな」
アークは狭苦しい空間が嫌なのか、不満そうに鼻を鳴らした。
私も気持ちは分かる。この数日間外で過ごしてみて改めてそれが分かった。
でも、オークションにだけは参加してみたい。
「窮屈な思いをさせてごめんね」
「ふんっ、あと数日くらい我慢してやらんこともないわ」
「ありがと」
私がギュッと抱き着くと、アークはそっぽを向いてしまった。
しっぽが揺れているので嫌がってはいないはず。
「ピピィッ」
「はいはい、エアもね」
エアが自分も仲間外れにしてほしくなくて飛んでくる。
「ピヨピヨ~」
アークと一緒に抱きしめると嬉しそうに鳴いた。
「さて、後片付けしようか」
「マスター、それは私にお任せください。ゆっくりお待ちください」
「あーうん、分かった。お願いするね」
レインは身の回りの世話に一家言あるようで、片付けを一切やらせてくれない。
前にいつもやらせるのは申し訳ないと思って手伝おうとしたら、断固拒否された。
それから、片付けは任せるようにしていたけど、ストレスと一緒に頭から抜け出てしまったみたい。
私がぼんやりしてるうちに、レインがまるで分身しているような速度で片付けを済ませていた。
「そういえば、オークション会場には馬車で乗り付けないといけないんだっけ? 普通の馬車持ってないんだよね」
ドレスで着飾り、歩いて会場にいこうと思っていたのに、それは禁止だった。
「お任せください。普通の馬車に偽装することも可能です」
「そうなんだ。それじゃあ、任せようかな」
そんなことができるなら最初に来た時も使ってもらえばよかったな。
「お帰りなさいませ!!」
少し反省しながら街へと戻ると、門番に温かい笑顔で迎え入れられた。
その足でドレスを作ったお店に向かう。
「お待ちしておりました。ドレスは完成しております。最後に不具合がないか、ご試着いただけますでしょうか?」
「分かりました」
ドレスは出来上がっていたので最終確認を行った。
「どこか苦しい所や動きにくいところはございませんか?」
「はい。大丈夫です」
人の良さと同じように良い感じの仕上がり。文句のつけようがない。ここに頼んで本当に良かったと思う。
ひとつだけ言うのなら、「ちょっと派手過ぎない?」っことだけど、デザイナーさんのセンスを信じて何も言わなかった。
白を基調として、銀色の刺繍があしらわれていて、私の瞳の色であるエメラルドをアクセントにしたドレスだ。
「マスター、お似合いです」
「レインもね」
「ありがとうございます」
レインもこう言ってるし、きっと大丈夫だよね。
「かしこまりました。お着替えが終わりましたら、お包みいたしますね」
「よろしくお願いします」
着替え終わった後、ドレスを受け取って店を後にした。
久しぶりに女将さんのいる宿へ戻る。
「あらっ、おかえりなさい。もういいのかしら?」
宿の扉を開けると、いつもの気怠い感じで出迎えてくれた。
なんだか実家に帰って来たような安心感を覚える。
「はい。大分スッキリできました」
「それはよかった。オークションの開催がすぐだけど準備はできてるかしら?」
「大丈夫だと思います」
ドレスコードも揃えたし、お金もある。参加登録も前に済ませている。
後は参加するだけ。何も問題ない。
「そう。何か足りない物があったら言ってちょうだい。可能な限り揃えてあげるわ」
「ありがとうございます」
女将さんが優しすぎて感謝しかない。
オークションまでの間、私たちは宿から一歩も出ずにのんびりと過ごした。