軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第148話 馬車と米

街から少し離れた場所で、レインが機械仕掛けの馬と近未来感のある箱馬車の屋形を取り出し、扉を恭しく開いた。

「マスター、こちらにお乗りください」

「これは?」

「馬型のゴーレムが引くゴーレム馬車になります。御者はいてもいなくても自動で走ります。魔力を補充すれば、延々と走れる設計です。もっと高性能な馬車を作ることもできるんですが、現在資材不足と機能修復中のため、こちらが唯一ご用意できる乗り物となっております」

「おお〜」

私たちはさっそく屋形に乗り込んだ。

空間拡張されて広くなっているわけではなく、六人くらいが余裕をもって乗れる程度の空間が広がっていた。

各々自由に席に腰を下ろすと、レインは乗らずに外から扉を閉めて、御者台に座った。レインの姿は前についている小窓から見えている。

座席はフカフカで背もたれもしっかりと体を包み込んでくれる。包容力が高い。

レインが手綱でゴーレムホースに合図を出し、小気味の良い音が聞こえた直後、馬車がスーッと動き始めた。

「全然揺れないね」

エリアの馬車はそれなりに揺れたけど、この馬車は本当に走ってるのか少し不安になるくらい振動がない。

それに、明らかに普通の馬車より速度が出ていて、景色がスライドするように流れていく。

窓から入ってくる風が気持ちいい。

「寝やすそうだ」

「ピヨピヨピ!!」

アークは向かい合う席と席の間で気持ちよさそうに寝そべり、エアは席の上で楽しそうに飛び跳ねている。

歩いて旅をするのもいいけど、マナビアは景色が変わらないので、こうやって馬車に揺られて速度重視で移動するのも良いよね。

アークなら一瞬じゃないかと思われるかもしれないけど、初めての道を一瞬で踏破してしまうのは味気ないので、基本的にやるつもりはない。

普通に歩いていけば、第三の独立都市まで一週間くらいかかると聞いている。でも、この馬車ならしっかりと休憩と睡眠をとっても一日か二日で着きそうだ。

人をダメにしそうな心地の良い座席に座り、しばらく馬車に揺られていたら、気持ちよくなっていつの間にか眠っていた。

「おい、起きろ」

「ん? 何?」

「腹が減った」

目を擦って体を起こすと、アークがお腹を鳴らしていた。

太陽が真上のあたりから降り注いでいるのを見ると、もう良い時間になってるみたいだね。

「それじゃあ、休憩を挟もうか」

「承知しました」

小窓からレインの返事が聞こえてきて、道から外れて馬車が停車した。

「どうぞ」

「ありがとう」

レインのエスコートで馬車を降りて、すぐにお昼ご飯の準備に取り掛かる。

お昼の目玉はもちろんお米!!

日本のお米じゃないから普通に炊くのは微妙かもしれない。でも、それでも炊かずにはいられない。

なぜなら、日本人として生きた私の心がご飯を食べさせろと叫んでいるから。

日本のお米じゃなくても気にならず、それでいて美味しく食べられて、その上今一番食べたいものといえば、そう、カレーだ。

「コンロと鍋はお任せください」

レインが十以上の鍋と寸胴とコンロを亜空間倉庫から取り出して並べた。

魚介類を手に入れたから今日はシーフードカレーも追加。

シーフードカレー、ビーフカレー、チキンカレー、ポークカレーの四種類を作れるだけ作り、ご飯も炊けるだけ炊いていった。

「まだか? もう我慢ならんぞ」

「ピピィ!!」

「未知の食事に興味があります」

食いしん坊たちは料理に目が釘付け。涎を垂らしながらカレーが盛られる様子をジッと見つめている。各々に一種類ずつのカレーライスを差し出した。

自分の分も盛り付け、レインが設置したテーブルセットに腰を下ろす。

「いただきます」

「うむ」

『いただきます』

『ピピッ!!』

私の挨拶に合わせ、みんなも同じように挨拶をしてカレーに口をつけた。

「これだよ〜!!」

『これは美味い!! この前のパンも悪くなかったが、これには及ばんな!!』

『ピピピピピィ!!』

「これは食べるのが止まりません」

その瞬間、皆の顔がだらしなく緩む。

しょうがない。だって美味しんだもの。やっぱりカレーはご飯に限る。

『……』

全員が無言になってひたすらにカレーライスをかっこむ姿は、第三者が見れば異様な光景に映ったかもしれない。

近くに誰もいなくてよかった。

『おかわり(ピピピピ)!!』

そして、ものの数分で全員の声が重なる。あっという間に皿がすっからかんになってしまった。

レインが私の代わりに盛り付けを行い、再び全員の無言で食べ始める。

何度も繰り返していたら、カレーもご飯も綺麗さっぱり消えてなくなってしまった。余るかと思っていたけど、むしろ足りないくらいだった。

少しだけご飯に不満はあるものの、充分合格点があげられる出来に仕上がったはず。次は日本のお米で食べられるといいな。

皆まだ物足りなさそうな顔をしているけど、流石にもう一度作るのは辛い。お昼はこれで終わり。また夜のお楽しみだ。

食後のお茶をしてお腹を落ち着かせ、私たちは馬車に乗り込んで旅を再開した。