作品タイトル不明
第140話 腹が減っては
『何!? どうやって入ったのだ?』
「普通に入れたよ」
私はアークに出たり入ったりして見せた。
幕の内側には予想通り水は入り込んでなく、空気があってとても澄んでいる。
『なんだと?』
アークが結界に触れると、私と同じようにすり抜けてきた。エアも同じだ。
浄化のオーブで綺麗にしてから、エアに水分を飛ばしてもらった。
「ピピッ」
「よしよし」
エアが私の胸に飛び込み、頭を押し付けてくる。
可愛い。エアの頭を撫でる。もふもふはいつでも最高。
それにしてもこの膜は不思議だね。人の侵入は拒まないのに水の侵入は拒む。どういう仕組みなのかな。
「いつまでそうしておるのだ。とりあえず、我は腹が減ったぞ」
「もうっ、食いしん坊なんだから。まぁ、探すのに時間がかかったもんね。でも、こんなところで料理しても大丈夫かなぁ」
改めて辺りを見回すと、伽藍とした街並みが広がっていた。
崩れている建物が多い。ただ、経年劣化ではなく、なんらかの力で破壊されたように見える。人の気配もないし、街自体は滅んだか、放棄されたのかな。
ただ、ここは地上の街とは違い、碁盤のように道が伸び、統一規格の建物が規則正しく並んでいる。似たような建物が沢山あるから多分家かな。
石やレンガではなく、コンクリートみたいな黒っぽい不思議な建材で造られていて、壁にはまるで回路のような模様が描かれている。道にも同じように模様が描かれていて、その模様は全て繋がって、どこかに向かって伸びている。
なんとなく何らかの回路みたいに見える。それに時折、光の線が走っていた。
もしかしたら、模様は何らかの意味があるのかもしれない。電力か何かが今も通っているのかな。こういうのを見ていると、ワクワクしてくるね。
「なんの気配もない。問題ないであろう」
「ふーん、まぁいっか」
ここを見つけるのに何時間もかかったし、泳いでお腹が減ったんだろうね。
私は早速、料理を始める。
やっぱり、さっき倒したばかりの新鮮な魚介類がいいよね。
アークとエアに解体してもらう。シーサーペントはちょっと大きすぎるから、ツナトロとクロカッツォだけ。面倒だからマグロとカツオと呼ぼう。
やっぱり新鮮な魚といえば、刺身。まずはなんと言ってもこれだよね。まぁ、私はあんまり生で食べたことないんだけど。
大量に薄切りにして見た目は気にせずに山盛りにする。アークが器用に部位別に解体してくれたので、部位ごとに器を分けた。
量が多いので、二人の分の醤油とわさびは桶に入れて出す。少し多すぎるかもしれないけど、足りないよりはきっと良い。
「先に食べていていいから。この醤油を少しつけて食べてね。こっちのは辛いからつけすぎないように」
「これは、お前の料理によく使われている調味料だな。こっちは少しツンとした匂いだな。どれ……ごほっごほっ!!」
アークが私の説明を無視してワサビをそのまま食べてむせる。
まったく、人の話を聞かないんだから。
「辛いって言ったでしょ。わさびだけで食べるなんてただのバカなんだから。それはちょっとつけて食べるの」
「まさか我がむせるほどとは。これはもはや兵器ではないか?」
「そんなことないでしょ。ちょっとだけつけて食べてみてよ」
「うむ……なるほど、これは美味いな!! ツナトロの味をしょうゆが引き出し、この兵器の辛味が魚の生臭さを完全に消して調和している」
「ピピピィ!!」
アークが前足を使って醤油とワサビをつけて食べ、エアは風を操って食べ出した。二人ともとても器用だ。
二人が食べている間に次の料理を作る。クロカッツォはやっぱりカツオの叩きにしないとね。
塩を振ってしばらく置いておき、それとは別にマグロとカツオを短冊切りにして別々に醤油ベースのタレにつけておく。
その間に、マグロとカツオを焼いてステーキに仕上げて器に盛った。
そして、塩を振っておいたカツオから出た水分をエアに飛ばしてもらい、平鍋に油を引いて強火で熱してカツオを置いて焼き色がついたらさっと返して全面に焼く。
エアの風を当てて冷やしてる間に、玉ねぎ、みょうが、しょうがのもどきを切って水に晒して、器に大葉と玉ねぎを敷いた。
上に冷えたカツオを切って盛り付け、ニンニクもどきを乾燥させたチップと小口切りしたネギもどきを散らして完成だ。ポン酢はないから醤油ベースのタレで食べる。
最後にタレにつけておいたマグロとカツオのを取り出して盛り付け、最後に卵黄を乗っけてマグロとカツオのユッケ二種の完成。
全部できる頃にはすでに刺身が無くなっていた。私の分は避けていたので良かった。
「うむっ、タタキ(?)もユッケ(?)というやつも美味いではないか!!」
「ピッピピィッ!!」
二人はタタキもユッケも気に入ったみたいだ。
「美味しい!!」
私も刺身から食べる。
これが本当の刺身の味!! 魚と醤油とわさびの味がマッチして美味すぎる。
タタキも刺身に香ばしさが足されていてこれもまた善き。そして、ユッケは卵のまろやかさが味をまとめていてこれもまた良かった。
アッサリしてるからいくらでも食べられそう。次々口に放り込む。
私たちは競うように食べ続けた。