軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第122話 元Sランクの(耐久)力

私はガンドさんに連れられて冒険者ギルドに併設された訓練場へとやってきた。

コロシアムみたいな造りになっていて、周囲に訓練を見学できる観客席がある。何組かの冒険者グループが模擬戦や連携の訓練をしている姿があった。

「すまん、皆、ちょっとあけてくれるか?」

「あっ、ギルドマスター。分かりました!!」

ギルドマスターの言葉で冒険者たちが場所を開ける。私とギルドマスターが十メートルほど離れて向かい合った。

「それじゃあ、試合を始める。気絶したり、参ったと言った方が負けだ。当然だが、殺すのは問題外だ。まぁ、それはないと思うがな」

鉄壁というくらいだから防御力に自信があるみたい。これは私の攻撃力を測るチャンスかもしれない。

「分かりました」

「武器はいいのか?」

「いりません」

武術の経験があるわけじゃないから武器を持っていても仕方ない。それに、多分私が使っても壊れない武器を探す方が大変だと思う。

「おいおい、ギルドマスターが対戦だなんてあの子は何者なんだ?」

「全然強そうに見えないが、大丈夫なのか?」

「俺たちも見ていこうぜ」

冒険者たちが騒めきながら観客席に上がっていく。

どうやら私とガンドさんの試合を見ていくつもりらしい。

「ふんっ」

「ピピィ!!」

「アイリスさん、無理しないように!!」

「勉強させてもらうよ」

観客席には、アークとエア、エリアやヒイロさんたちも座っていた。

「よし、いつでもかかって来い!!」

「いきます」

ガンドさんが両拳を突き合わせた後、挑発するように手をくいくいと動かした。

元Sランク冒険者がどの程度なのか楽しみ。お言葉に甘えてガンドさんに正面から迫って腕を突き出す。

「何!? くっ!?」

ガンドさんが驚いた顔をして、腕をクロスして私の攻撃を防ぐ。

デコピン"弱"。

――ドンッ

防御の上からデコピンを放つと、吹き飛ばされず、地面を引きずられながら後ろに数メートルほど下がるだけだった。

「ぐぉおおおおおっ!?」

「おおっ、凄い!!」

"弱"でもCランク冒険者のシルドさんを吹っ飛ばして、盾がバキバキになるだけの威力はあるんだけど、さすが元Sランク冒険者。

あまり効いてないみたい。次はもう少し強くしても良さそう。

「嬢ちゃん、いったい何をした?」

「ただのデコピンです」

「バケモンかよ。はぁっ、仕方あるまい。今度はこっちから行くぞ」

「いつでもどうぞ」

今度はガンドさんが私に向かってきた。

速い。アークやエアを除けば、今まで見た中で一番早いと思う。私の背後に回って攻撃するつもりみたい。

「はぁっ!!」

「よっ」

私は背後から振り下ろされた拳を紙一重で避ける。

確かに速い。速いけど躱せないほどじゃない。

「何!? くそっ!!」

「ほっ」

「せいやっ!!」

「ほうほう」

「ふんっ!!」

「なるほど」

追撃として拳や蹴りが何度も襲いかかってくるけど、その全てをギリギリのところで回避しながら、ガンドさんの動きを観察する。

武術らしい武術を見たことがないので、勉強になるなぁ。

「嬢ちゃん、ちょっと甘く見てたぜ。こっからは少し本気で行くぞ」

「望むところです」

「はぁっ!!」

ガンドさんの攻撃速度が上がった。

でも、まだ全然躱せる速度。

ある程度分かったので、私はガードしてガンドさんの拳を受けた。

――ガンッ!!

「うごぉおおおおっ!?」

硬い物同士がぶつかったような音と同時に、ガンドさんが手を押さえて蹲る。

「大丈夫ですか?」

「ふーふー、嬢ちゃんの体はオリハルコンかなにかでできてんのか!?」

近づいて声を掛けると、ガンドさんが手に息を吹きかけながら顔を歪めていた。

相当痛かったらしい。

「普通だと思うんですけど……」

自分で触ってみても柔らかさがあるので、人間の構成要素でできてると思う。

「これならどうだ!!」

不意打ちに放たれた蹴りを余裕をもってガードする。

「ぐわぁああああっ!?」

今度は足を押さえて転げ回るガンドさん。

元Sランク冒険者の力を持ってしても私の体には傷ひとつ与えられないらしい。

アークの方が速いし、攻撃も重かったので、少なくともアークは元Sランク以上の強さがあると言えるかな?

「まだ続けます?」

「このままだと俺の沽券にかかわる。使うつもりがなかったんだがな。はぁっ!!」

「おお!!」

ガンドさんが立ち上がって気合いを入れると、体の色が鉛色っぽく変化した。

メタルちょび髭おじさんだ!!

「あれはアイアンボディ!! ギルドマスターの二つ名の由来になった、体を鉄のように変えるスキルだ!!」

ちょうどいいタイミングで観客席にいる冒険者が叫ぶ。

なるほど。そういうスキルなんだ。

「いくぞ!!」

「どうぞ」

「はぁっ!!」

振り下ろされた拳をガードする。

――ガンッ!!

「くわぁああああっ!? な、なんでだ!?」

さっきの焼き増しみたいに、ガンドさんが叫びながら手を押さえた。

体を硬くしても私の防御力は突破できないみたい。

「それじゃあ、今度は私からいきますね。さっきよりもう少し強く攻撃するのでちゃんと防御してください」

「なに!?」

「ほっ!!」

「くっ!?」

デコピン"中"!!

さっきよりも力を込めてデコピンを放った。

――ドカンッ!!

「ぐおぉおおおおおっ!!」

ガンドさんは堪えられず、吹っ飛んでいった。

――ドンッ!!

そして、壁に激突。めり込んで磔みたいになった。

破裂しなくてよかったぁ。体の原型は留めてるから大丈夫だと思うけど……。

「ガンドさん?」

「うっ、くっ。はぁ……負けだ負け。俺の負けだ」

心配になって話しかけると、ガンドさんが痛みで顔を歪ませながら壁から抜け出してきて、両手をバンザイした。

体の色も元に戻る。

「ということは?」

「納得した。まさかCランクにこんな化け物がいるとはな」