軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 お薬の時間

ようやくトレントの襲撃が収まった。

周りには沢山のトレントの残骸が散らばっている。その数が戦いの激しさを物語っていた。

「お疲れ様」

『ふんっ、この程度運動にもならんわ』

戻ってきたアークをワシャワシャと撫でて労う。

『ピィッ』

「エアもね」

馬車の上から「自分も」と飛び降りてきたエアも一緒に撫でた。

もふもふは最高だな。

「本当に助かりましたわ。アイリスさんたちがいなかったらどうなっていたことか」

エリアが馬車の中から軽く頭を下げた。

「どういたしまして。でも、まだ終わってないよ」

ここは森の真っただ中。

撃退はできたけど、無事に森を抜けられたわけじゃないし、まだ何も解決していない。むしろこれからが本番と言ってもいいと思う。

「そうですわね。それにしてもどうしてトレントがこれほど発生しているのか……」

「なんでだろうね」

モンスターに詳しくないから、原因はさっぱり分からない。ただ、よくありがちなのは支配者階級のモンスターが誕生した、とかかな。

『おそらくだが、トレントの上位種が絡んでいるであろうな』

『やっぱりそうなの?』

『うむ。そうでなければ、あれだけのトレントが一カ所に集まるなど考えられん』

アークが念話で口を挟む。

予想していたけど、やっぱりトレントたちを支配している存在がいるみたい。

『そのモンスターを避けて通り抜けられる?』

護衛としては、深入りせず、できれば戦わずに森を抜けられるのが最善。

『おそらく無理であろうな。あれだけの敵を撃退したのだ。目をつけられた可能性が高い』

『だよねぇ』

でも、それは難しそう。それなら倒して進むか、引き返すかの二択だ。

「アークが言うにはトレントの上位種がいるみたい。これからどうするつもり? 引き返す? それともこのまま通り抜ける?」

「そうですわね……引き返しても安全とは言えませんのよね?」

「だろうね」

おそらく今いる場所は森の道の半ば。ここで襲ってきたのはどっちに転んだとしても逃がさないためだと思う。

エリアの言う通り、引き返したとしても全員無事に帰れる保証はどこにもない。

「それなら、このまま森を通り抜けたいと思いますわ」

「了解」

今後の方針が決まった。アークの予想通り、このままいけば、トレントの上位種と戦うことになる。

『その上位種を倒したら、トレントたちはどうなるの?』

『そのまま残る』

『それはまた厄介だね』

ただ、上位種を倒したからといって、問題は全て解決、とはいかないみたい。

つまり、このまま放置したら、私たちが通り抜けた後にここを通る人たちが襲われることになる。それは寝覚めが悪いし、できればどうにかして解決したい。

「全員、無事みたいだね」

考え込んでいると、ヒイロさんたちもトレントの討伐を終え、商隊の周りに集まってくる。

しばらく警戒していたけど、攻撃される気配がないから戻ってきたみたい。でも、トレントには奇襲攻撃があるから油断は禁物。

「はい、おかげ様で」

「俺たちは近くのトレントを撃退しただけだよ。真の功労者はアイリスさんたちだ」

「いえいえ、皆さんがいたからこそこうやって全員無事で乗り越えられたんですよ」

「そう言ってもらえると俺たちもメンツが保てるかな」

ヒイロさんは苦笑いを浮かべて肩を竦めた。他の冒険者たちも似たような反応をしている。

「ヒイロさん、私たちはこのまま進みたいと思っておりますが、いかがですか?」

「引き返しても安全とは言えなさそうだもんね。うん、俺たちも問題ないよ。ただ、少し休みたいのが本音かな」

冒険者の人たちは、服や防具が切り裂かれ、砂まみれになって皆ボロボロだ。それに相当な数のトレントと戦ったため、疲労が見え隠れしてる。

このまま進むのは危険だ。

「それなら私が作ったポーションを飲んでください。回復ポーションとスタミナポーション。それに、頭がスッキリするポーションや魔力を回復させるポーションもあります。少しは楽になるはずです」

「いいのかい?」

「はい、構いません」

そこで私は自分が作ったポーションを提供することにした。こういう時に出し惜しみはしていられない。

皆の安全が最優先だ。

「アイリスさんに提供していただいた薬の分は別途きちんと報酬をお渡ししますわ」

「ありがとう」

それに、エリアもこう言ってくれてるし、何も問題なし。

私は皆にポーションを配って回った。

「それじゃあ、飲ませて貰うよ」

「どうぞ」

ヒイロさんが代表して先に四種類のポーションを飲み干した。

全種類飲んでも缶ジュース一本分もないからお腹がいっぱいにはならないはず。

「うぉおおおおおおおおっ!! なんだこれは!! 力が漲ってきた!!」

ヒイロさんの体から細かい傷が消え、強い魔力の波動がほとばしる。

ちゃんと薬が効いたみたい。

その様子を見ていた他の冒険者たちも、全てのポーションを呷った。

みるみる傷が癒され、疲労が色濃く出ていた表情が明るくなっていく。

全員めちゃくちゃ元気になった。

「よし、これなら休憩しなくてよさそうだ。皆、行くぞぉおおおお!!」

『うぉおおおおおおおおおおおっ!!』

これならトレントに襲われても大丈夫かも。