軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第109話 実力

「休憩後は外で護衛してもいい? 中だとちょっと状況を把握しづらいから」

「もちろん構いませんことよ」

休憩後、私とエアは馬車には乗り込まず、アークに乗ってエリアの馬車の横を並走する。

馬車の中と外ではやっぱり見える景色が全然違った。

中だと武器を振り回すには狭いし、外の情報が得られなくて、外からの不意な攻撃に対応が遅れる気がする。外で守っていた方が動きやすそう。

「ピピピッ」

「嬉しいの?」

「ピピッ」

それに、エアも馬車の中の閉じられた空間よりも外の方が好きみたい。アークの頭の上でパタパタと羽ばたきながらはしゃいでる。

外から馬車の中にいるエリアに尋ねた。

「今日は国境前まで行くんだっけ?」

「はい。防衛要塞で一泊して、次の日の早朝から出発してベルンの森を抜ける予定になっています」

マナビア自由都市連合とラビリス共和国の間には、抜けるだけでも最短距離で一日はかかる、ベルンという大きな森があるらしい。

この森には、街の近隣よりも強いモンスター多数が生息していて、たまに群れを成して攻めてくることもあるんだとか。

国境前の要塞には、その侵攻を止める役割があるみたい。

ベルンの森の中で一夜を過ごすのは危険すぎるため、できるだけ早朝に出発して、夜を迎える前にマナビア側に抜けるのが一番安全なルートらしい。

「森かぁ」

私は逆に森と聞くとテンションが上がる。

どんな薬草や木の実が生息してるんだろう。国境の森というくらいだから、それなりに広い森に違いない。さぞかしいろんな種類の植物が生えてるはず。

あぁ、採集したいなぁ……。

頭の中をいろんな薬草が浮かんでは消えていく。

『お前、採集したいとか考えてないか?』

『な、なんで分かったの!?』

『お前は分かりやすいからな。これが護衛だってことを忘れるなよ』

『言われなくても分かってるよ』

アークに私の考えがバレてしまった。気をつけないと。でも、すぐそばにレアな薬草があるかもしれないのに取りに行けないのは、ちょっと悲しい。

後でアークに護衛を任せて少し探しに行っちゃダメかな……ダメだよね……。

「それにしても、全然モンスターが襲ってきませんわね」

何も起こることないまま他愛のない雑談をしていると、エリアがポツリと呟く。

本来であれば、一度や二度程度。小規模なモンスターに襲われてもおかしくないらしい。

原因はすぐに思い当たる。

「多分アークのせいだと思う」

「どういうことですの?」

「アークが強すぎてモンスターたちが怯えてるんじゃないかな。前も似たようなことあったし。鈍感なモンスターは近づいてくることもあるけど」

「道理で。納得しましたわ。今回の道中は平和なものになりそうですわね」

私の仮説を聞いて、エリアが嬉しそうに笑う。

でも、アークさえ出し抜くような卵泥棒もいる。気を抜いてはいけない。ちゃんと釘を刺しておかないと。

『この先の雑木林に臭い人間たちが集まっているぞ』

そう思った矢先、アークから念話が飛んでくる。前をジッと見つめると、遠くにポツンと雑木林があるのが見えた。

「エリア、アークがこの先にある雑木林に人が集まってるって。光輝の剣の人たちなら大丈夫だと思うけど、一応報告しておくね」

「そうですか。念の為、言伝しておきましょう」

エリアが横を守る護衛の冒険者を呼び寄せ、ヒイロさんたちに伝えに行かせた。

しばらくして雑木林が近づいてくると、商隊の先頭から矢と幾つもの石のつぶてが飛んでいく。

木の上から人が落下するのが見えた。こっちから盗賊に仕掛けたみたい。

バレているとは思わなかった盗賊たちが慌てて雑木林から姿を現す。明らかにこっちの護衛の人数を上回る数だ。

まぁ、そうじゃなきゃ待ち伏せなんかしないよね。

「俺たちが前に出る。他のパーティは動かずに商隊を守れ!!」

『了解!!』

商隊を停止させ、ヒイロさんたち光輝の剣が盗賊に向かって走る。魔法使いと弓使いの人たちが後衛から盗賊たちの足止めや牽制を行い、勢いを削いだ。

「うぉおおおおおっ!!」

全身を重厚な甲冑に身を包み、巨大な盾を操る壁役の人が大きな声で叫ぶと、盗賊たちが引き寄せられるようにその人に群がっていく。

その隙を見逃すことなく、ヒイロさんと斥候役の身軽そうな人が次々盗賊たちを切り捨てていった。盗賊はあっという間に数を減らしていく。

一瞬で勝負はついてしまった。実力が違いすぎる。

「うわぁああっ、助け――」

「皆、逃げ――」

勝ち目がないと分かって盗賊たちが逃げ出していく。でも、全員撃ち漏らすことなくきっちり殲滅。ものの数分で盗賊は壊滅してしまった。

とても鮮やかな手際だ。これならアークの情報も必要なかったかもね。

その後、後始末を済ませ、移動を再開。

それからは特に何事もなく、淡々とした時間が続いた。

日が暮れてきたところで、左右に長く続く巨大な城壁が見えてくる。

「あっ、あれが要塞かな」

「はい、ベルンの森からラビリス共和国を守るストバーン要塞です」

要塞へと辿り着いた私たちは、その前で野営の準備を始めた。