作品タイトル不明
第107話 初めての友人
馬車がパカパカと走る。
エアと一緒に車内に乗り込み、アークは馬車の隣を小走りしている。
いわゆる箱馬車と呼ばれるタイプで、中は観覧車を広くして乗り心地を良くしたような造りになっていた。
それぞれ、エリアさんとメイドさん、私とエアに分かれて座っている。
マリンダさんと乗った幌馬車よりも揺れが少なく、ふかふかな椅子のおかげでお尻に衝撃が伝わってこない。お金持ちや貴族用なのかな。
「それでは、道中お願いいたしますわ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エリアさんと改めて挨拶を交わす。
「話しづらいでしょう? 普通に話していただいて構いませんのよ?」
「いえ、エリアさんは依頼人ですから」
「いいんですの。同年代なんですもの。ちなみに、歳はおいくつですか?」
「十六……かな」
正確な数字が分からないので、今適当に決めた。そう外れてはいないと思う。
「まぁっ、同い年!! やっぱり気楽に話していただけませんこと?」
「エリアさんも気楽に話してくださるなら」
エリアさんが嬉しそうに手を合わせる。でも、依頼人が丁寧な言葉を使ってるのに、自分だけ普通に話すのは抵抗があった。
「私は環境もあって癖になってますの。気にしないでくださいまし。それと、呼び捨てで構いませんわ」
「……うーん、分かった。それじゃあ、普通に話すね」
でも、ここまで言われたら、タメ口にしないのは失礼だよね。
思えば、前世でも同年代の友達なんていなかったし、今世でもバーバラ以外に同じくらいの歳の女の子と話した記憶がない。
いつも年上か年下ばかりだった。そう考えると、エリアと話せるのは嬉しい。
「エリアはいつもこうやって行商を?」
「いいえ、私が主導で行くのは今回が初めてですわ」
「え? そうなの?」
全体のリーダーとしてきちんと指示を出していたし、落ち着いてるから、てっきりもう何度もやっていて慣れてるとばかり思っていた。
「えぇ。父に商隊を率いる経験を積むように言われておりまして、そろそろ行こうと思っていたんですが、アイリスさんが護衛を引き受けてくださったと聞いて、すぐに行くことを決めたんですの」
「私?」
思いがけない言葉に私は首を傾げる。
「イトゥーから話を聞いて、ずっとお話ししてみたいと思っておりましたの」
「どうして?」
「だって、ダンジョンを踏破してしまう私と同じくらいの歳の女の子なんて、気になるのは当然ではなくて?」
「それは確かにそうかも。それで? 会ってみた感想は?」
前世の私に置き換えると、同い年くらいの憧れの芸能人が別の病室に入院してきた、みたいな感じかな。
だとしたら、私も気になるかもしれない。
「とっても可憐な方でびっくりしましたわ」
「いったいどんな人を想像してたの?」
「ダンジョンを踏破されたと聞いたので、てっきりオーガのような大きな方かと」
「なるほどなぁ」
ダンジョンを踏破する人はそういうイメージなんだ。
「そういえば、アイリスさんはどうしてお一人で冒険者を? あっ、言いたくなければ言わなくて構いませんが」
エリアが興味津々と言った表情で私に尋ねた。
「地元には同世代の友だちはいなかったし、お金を稼ぐには冒険者になるのが一番手っ取り早かったからかな」
処刑されたなんて言えないし、前世のことも説明できない。ぼかしつつ説明する。
「まぁ、そうなんですの? それなら、私がお友達に立候補してもよろしいかしら?」
「それは願ってもない申し出だけど、むしろエリアはそれでいいの?」
「もちろん。こんな機会二度とありませんもの!!」
「分かった。私に異論はないよ。これからよろしくね、エリア」
「こちらこそ」
異世界で私に初めての友人ができた。もの凄く嬉しい。転生して良かったと改めて思った。
「聞いてばかりでなんですが、どうして旅に出ようと思われたんですの?」
「いろんなところを見て回りたいと思ったから。私って少し前までほとんど家を出たことがなくて、外のこと全然知らなかったんだよね。だから、自分の目で直接見てみたくなったの」
「でも、女性が一人で旅をするのは危ないのではないですか?」
女性冒険者は基本的に同性同士でパーティを組んでいるか、元々の顔馴染みとパーティを組んでる場合が多いんだとか。
何をされるか分かったものではないため、知り合ったばかりの人とはあまりパーティなんて組まないらしい。
基本的にソロの女冒険者は、相当強いか、確実に身を守れるようなスキルや道具を持っているみたい。マリンダさんがソロだったから普通だと思ってた。
「問題ないよ。私自身も結構強いし、アークやエアも強いから」
「そうなんですのね。できれば、そのお力を見られる機会があるといいですが」
「次の街まで結構かかるだろうし、見せられるんじゃないかな」
「まぁ!! それは楽しみです!!」
私の返事を聞いたエリアは目をキラキラと輝かせた。
そんな風に喜んでもらえると、一刻も早くモンスターと戦いたくなってくる。でも、他の護衛の人たちを邪魔するわけにはいかない。
機会が来るまでは勝手なことはしないでおこう。
「私のことは結構話したから、今度はエリアのことを教えてよ」
「分かりましたわ」
私とエリアはお互いの身の上話をしながら馬車に揺られて過ごした。