軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96話 キャンプファイヤー!

六十階層到達。

ふむ。

見渡す限りのススキ野。

「……これは……」

「なんかわかったか?」

見覚えがある。

「沼地ゾーンだ」

安全地帯っぽい階段を下りた直後の平原は沼じゃないが、進んだ先のススキ野は恐らく沼地だろう。

そして、お約束としては、毒の沼地があるだろうな。

「セオリーだと、ここは沼地で、全体じゃないだろうが、毒の沼地があるはずだ。この世界の毒状態はわからないが、入ったら毒状態になるはず」

「あー……。わかる、わかった」

ソードが頭をかいた。

上を見たが、洞窟なのに天井がない。

「簡単に行くのなら、シャールで天井すれすれを飛ぶ。ただし、やはりお約束として、舌が伸びて捕まえて食う魔物が生息すると思われる。射程範囲は天井すれすれがお約束。さて、どうしようか?」

そう言って腕を組んだら、ソードが手をパン! と打った。

「ま、ゆっくり考えるとして、そろそろ野営にしようぜ?

さっきので疲れたしよ、ここは安全地帯。

酒も飲めるってワケだ!」

…………。

いいけどね?

――ソードのテンションは落ちず、一緒にシャワーを浴びさせられたので、キャンプファイヤーぽくたき火をたいたり枝に刺して火で炙った串焼きなんかも出したら大喜びだった。

……普通の冒険者って、こういうことしないのかにゃ?

って考えてたらソードがリュートを持ってきて突き出した。

「なんか演奏してくれ」

…………。

「確かにお決まりだけどな? そのお約束、なんでお前が知ってるんだ?」

受け取りながら聞いたら

「なんか、たぶん、そんな感じがした」

とか言ってきた。

ヤヴァイ。

コヤツ、物事の柔軟性と対応力がパない。

――盛り上がられても困るので、クラシックギターと言えばお決まりの【禁じられた遊び】を演奏し、後はお決まりのキャンプファイヤーソングをいくつか歌った。

こっちの言語に当てはめて適当に歌ったのだが、思いのほか好評だ。

「……お前ってさぁ、それこそ歌姫になれたな。王都の劇場を埋められたかもだぜ?」

酔ったらしいソードがそんなことを言ってきた。

「歌姫は、パトロンが必要だな。私の知識だとな。……誰かに身体を与えてその見返りで歌を歌わせられる? 冗談じゃない」

「…………ふーん。音楽家って、そんなモンなのか」

たぶんね。

そもそもさぁ、歌姫っているの?

「……最後に、陽気な曲を歌ってくれ」

ってねだられた。

「……歌詞は適当でいいから、お前も歌え」

ソードがキョトンとした。

「は?」

「は、じゃない。音楽とはそういうものだ。鼻歌でもラララでもレレレでもいいから、適当に合わせて歌うものだ。ほら、これを振り回せ。お作法だ」

長葱がなかったので、ススキをむしって手渡した。

「じゃあ、いくぞ。【Ievan Polkka】」

リュースをかき鳴らしながら歌う。

一部分しかわからないので繰り返し歌ってたら、ソードも適当に歌いだした。

リョークも繰り返してたら覚えたらしい。

……そのうち、魔物も覚えたらしい。

あちこちから、ポルカの陽気な音楽が聞こえてきた。

――さぁ、朝日は昇ってないが、朝だ。

「シャールで飛ぶか」

ってことになった。

「この階のみでだが、有効な手段を思いついたぞ。頭上を飛びつつ、次の階での対策を練るか」

「どんな手だよ?」

「[輪唱]だ!」

ソード、無反応。

「今から歌う歌を覚えろ」

ソードがポカンとした。

「……なんだ? 今の歌」

歌い終わるとますますソードがポカンとした。

「なんだ? と言われてもな。覚えたか?」

「……まぁ、簡単っちゃあ、簡単だけどよ……」

「これを、このフロア全員で[輪唱]する!」

「お前、今、自分の言ってる言葉がワケわかんねーことになってるの、気付いているか?」

「適切な語句が見つからないのだ。うーん〝後追い歌〟かな? まずは私とリョークでひとまずやってみる。リョーク、私が『ハイ』と言ったら私が歌った歌を一人ずつ続いて歌え」

「「あいさー!」」

「ゲーコーゲーコーゲーコーゲー、ハイッ!」

「ゲーコーゲーコーゲーコーゲー」「ハイッ!」

「ゲーコーゲーコーゲーコーゲー」

三人で歌って、解せたらしいソードも歌いだした。

「ゲーコーゲーコーゲーコーゲー」

四人? で歌ってて、解せたらしい魔物たちも歌いだした。

「ゲーコーゲーコーゲーコーゲーッ」

説明しなくても、状況が分かったらしい、ソードと視線を合わせ、シャールに乗り込んだ。

歌いながら。

拡声魔術で輪唱を響かせつつ、シャールで飛ぶ。

全く襲われない。

襲われないが、合唱がすごい。

盛大な輪唱で、この階を抜けた。

「襲われたらためらいなく殺すが、昨夜、一緒にキャンプファイヤーで盛り上がった同士を殺すのも忍びなくてな。殺さずに済んで良かった」

ソードが苦笑した。

「歌が好きな魔物か。セイレーンかよ」

セイレーン、いるんだ?

「セイレーンの歌声に惑わされないようにするには、音程を外して一緒に歌うと良いそうだぞ?」

ソードが笑い出した。

「わざと外すのか。むしろ高等テクニックだな!」

「それはな? この世界の人間は歌わないから知らないだけで、音の通りに歌えない人間はたくさんいるんだぞ? むしろ、音楽に耳慣れてないこちらの人間の方が多いかもな」

ソードがギクリ、と身体を揺らした。

「…………俺は?」

「合ってたぞ? 良かったな」

ソード、心からホッとしたようだった。