作品タイトル不明
303話 シャールで砂漠を爆走するよ
叔父殿へは、酒を添えたお礼の手紙を送り、ついでにやんわりと「これからまた旅に出るのでもう贈ってくれるな」というお断りを入れて早々に出立した。
叔父殿が姪っ子バカなのはわかったから、もうフリフリは勘弁して。毎日着せ替え人形のようにメイド嬢たちに着付けられて、さすがに逃げ出したくなったのよ。
閑話参照のベン君からの依頼を楽しくこなした後、次に行くことにしたのは砂漠。
魔王の国の近くに砂漠地帯があるのだ。
ちなみに、魔王の国に行く方法は、海側を除けば砂漠を越えた先にある検問所の一箇所のみ。
山と砂漠で分断されている……というより、砂漠を進軍するのが困難なのでそこを国境としている、と地理歴史の本に書かれていた。
地図を見る限りは魔王の国は結構厳しい環境だなぁ。
砂漠も多いし、たぶん緑色が濃くて固まっているのはジャングル地帯じゃないか?
山も高山が多いし、連なっているし。
こういう過酷な環境でも生きていけるのが魔族なのね~。
…………ん? 待てよ。
知り合いの魔族、スミス君は絶対に生きていけそうもないのだけれど、他の魔族は平気なんだろか?
再度、地図を確認すると、王国側の砂漠地帯には比較的大きな湖と緑があるようだ。
「オアシスだな」
私が指さすと、ソードが顎をなでた。
「ふーん……。じゃあ、ここに行ってみるか?」
というわけで、オアシス目指してシャールで爆走。
砂漠をシャールが爆走するなんて、すっごい絵になるよね。
「お作法的には目を赤く光らせたいよなー」
私が言うと、ソードがその光景を想像したらしい。ちょっと薄ら寒そうな顔になった。
「……赤く光った多眼のデッカい魔蟲が砂漠を爆走してたら、なんにも寄りつかねーだろうな」
そうだろうね。
そうは言っても時折、魔物が出たりする。
砂中に潜れる魔物や、水分摂取を必要としないアンデッド。アンデッド出没率高し。
シャールのキャタピラで砕かれているけれど。
私はシャールに指令を出す。
「魔石あったら回収するんだぞ?」
『りょーかいです』
魔石はいくらあってもいい。
どんなクズ魔石だって加工したら燃料にもポーションにも私が作る玩具の部材にもなる。
ソードは「いらねーだろ」とかブツブツ言っているけれど。
私はソードに反論した。
「塵が積もると山になるんだぞ?」
「デッカいのは積もらせなくたって山になるだろうがよ。足りなかったら買えばいいんだし、ダンジョンに潜りゃいくらでも出てくるじゃねーか。王都に行ったら必ず潜ってダンジョンコア様からデカいのもらってんのに、なんでクズ魔石をみみっちく集めんだ?」
だってたくさん使うんだもん。
「ホーブをたくさん作ったからたーくさん必要なんだー!」
手でたーくさんの表現をしたら、ぐりぐりなでられた。
「わかったわかった。……お前って子供なんだか大人なんだかわかんねーやつだよな。オッサンみたいな冷めた発言するかと思ったら、手足バタバタさせて駄々こねるみたいなマネをするし」
駄々こねてないもん! というか、私は年齢どおりだよ!
別世界の知識があるからってさぁ、大人扱いはおかしいのよ。頭脳は大人だろうが、私は生きた年齢分だけしか歳をとってないんだから。
小さい子が誰かの一生分の映画を見たからってその年齢を加算して大人扱いするなんて、どんな神経をしているんだって思うぞ? 特に私の場合なんて、別世界の知識も生き様も途切れ途切れで全部覚えているわけでもないんだからさ!
ぶすったれたらソードが苦笑してなだめてきた。
「わかってるって。俺だってお前におっさん扱いされたり若造扱いされたりしてるからな。お互い、アンバランスだよな」
ソードはねー。男はいくつになっても子どもです、の見本だからねー。
って考えたらエスパーに読まれて、さらに激しくぐりんぐりん頭を回された。
お気楽メンバーは置いてきた。
砂漠地帯なんて、屋台をやるどころか人がいるかもわかんないからね! そもそも、現在進行形で誰もいないね。
ソードがけだるげに運転をしながら、遠い目になっている。
「……しかし、単調な景色だよな。飽きてくるぜ」
まぁ、砂漠だからしかたがない。でもさぁ、青とサンドベージュのコントラストが綺麗だと思うけどなぁ。
私は退屈しているらしいソードをなだめる。
「まぁまぁ。もうちょいでオアシスだ。面白い魔物や植物が見られるかもしれない。情緒あふれる魔物がいると良いのだがなぁ。一応、お作法としてターバンとジェラバを作ってきたのだ!」
ソードが私をキラキラ目で見つめてきたのだけれど。ガジェットと勘違いしているな?
私は首を横に振っておことわりを入れた。
「違うぞ。作ったのは服だ。砂漠で着るお作法なのだ」
あ、ガッカリした。瞳のハイライトが一瞬で消えたぞ。
私はふくれっ面をしてソードをなじる。
「むーっ! そんなにより取り見取りにはべらせてるのに、まだ新しい子がほしいのか!?」
「その言い方やめて」
ホーブだって、専用のがほしいとか言い出すし!
私がムスッとしていると、気づいたソードが弁解を始める。
「いーじゃんか。全部大切に侍らせているんだからさ。全部持って歩いてるんだよ? すごくない?」
「飽きて捨てたら祟られるぞ。私の作る魔道具やゴーレムは、魂が宿ってるんだからな!」
脅しておいた。
いよいよオアシスが近付いてきた。
「むむむ?」
私が望遠ズーム魔術で見てみると、その辺りは高い壁に囲まれているようだ。
魔物の侵入を阻む防壁だとすると、もしかして彼処に町があるのか?
ソードは索敵スキルで気付いたらしい。
「人がいるかもな。……となると、シャールで乗り込むと魔物と勘違いされるから、歩いていくか」
私はうなずいた。パニックになられて悲壮な覚悟で戦おうとされるのは、とっても勘弁です。