作品タイトル不明
277話 サクラ登場
三階まで上がったが、今度は地下だ。
「地下は酒コーナーだからな。ここは私が最もセキュリティに力を入れた。まず、気軽には行けない。地下に行けるセキュリティを持つ者のみ、扉を開けられる。せっかく三階に来たのだから、〝エレベーター〟で一階まで下りよう」
「「出た! チート!」」
アマト氏とスカーレット嬢に声をそろえて言われてしまった。
エレベーターで地下に着くと、地下へ行く廊下に出る。
「さて。ここからは〝SF〟の部屋だ。アマト氏やスカーレット嬢ならわかると思うが」
全員が絶句してキョロキョロと見渡している。
窓がなく、ランプがないのにぼんやりとミントグリーンの灯りが灯る部屋。まだここ廊下だけど。
壁面にはサハド君と私が作った、凝った装飾の酒瓶が宙に浮いたように飾られている。ちなみに酒は入ってない。
「俺、ここの部屋好きかも」
「わかるー」
ソードとアマト氏が言った。やっぱ男子はSFの方がウケるのかなぁ?
ツツツーとアマト氏が寄ってきて、つっついてきた。
わかったわかった。
私がうなずくと、アマト氏が張り切って皆の方を向いた。
「はい、注目!」
意気揚々としたアマト氏が指差した方向に光の粒子が集まり、女性が浮かび上がった。
茶色がかった黒髪のストレートボブに茶色の瞳、年齢は別世界だと二十代前半だがこちらの世界だと十代半ばほどの容姿の、スラリとしてほどよく胸のある、清楚な印象の美少女だ。
皆、レイスと勘違いしたらしくギョッとしたが、ソードはさすが落ち着いてる。
「ん? あのマップ出す仕組みか?」
って簡単に見破ってるし。さすが察知スキル持ち!
私はソードにうなずいて見せ、一言言った。
「アマト氏が作った」
「「「「マジで!?」」」」
皆びっくりしてるね。
「アマト氏はここに来る前、こういった仕事をしてたんだ。むしろ得意分野だろう」
私が言うと、アマト氏は苦笑した。
「AI部分は大半がインドラ様頼りでしたけどねー」
どんな仕事だよ? って皆さんの顔に書いてありますね、そうですね。
「魔素を集めて可視化しているのだ。レイスではなく、魔道具のような魔術のようなもので、イチから作った。外見は、アマト氏の好みのタイプだ。接客はうちのメイド嬢たちを参考にしている、言うなれば『案内ゴーレム嬢』だな。……アマト氏、名はなんと付ける?」
アマト氏、一瞬のためらいもなく、
「サクラ」
って言った。
それを聞いたサクラはにっこり笑った。
「初めまして皆様、私はサクラと申します。お酒をお売りする部屋へ案内いたします」
案内嬢なのでスーツを着せたかったが、アマト氏がナビゲーション妖精だから!とゲームの妖精風の衣装にした。
このナビゲーション妖精のサクラ、実はホーブが照射してる。
ホーブの副人格のような位置付けで、どのホーブからも照射出来るし、なんならタブレットからも浮かび上がらせる事が出来る。
SFにはこういったホログラフィのナビゲーションがつきものだものね!
男性陣、サクラを見て鼻の下を伸ばした。アマト氏の好みは男性陣の好みでもあったらしい。
唯一伸ばしてないのがソード。サクラをじっと見て考え込んでる。
「どうかしたか?」
声をかけたら振り返って私を凝視した。
「……お前に似てねーか?」
…………。
「そう思うか?」
私はソードに聞き返す。ソードは曖昧にうなずいた後、爆弾発言をした。
「なんとなく……。――つまり、アマトの好みはお前が女体化した姿なのか」
なんだとぅ!?
「どういう意味だ!?」
確かに私は無性かもしれないけど、ソードが言うな!
ソードが失言に気付いて慌てて弁解した。
「あ、言い方が悪かった。大人になったらあんな感じになるのかって意味だよ」
全然違うだろ!!
「そもそも、サクラの素体が私ってだけだ!」
「「「「えっ??」」」」
なんだその全員の疑問形は!?
「無から有を創り出すのは面倒だから、私を素体として、肉付けしたんだ。身長を伸ばし、適度に脂肪をつけ、目の大きさや形、眉、輪郭をほんのり変え、肌や瞳、髪の色を変えた。他の女性の裸体を参考にするわけにはいかないだろうが。メイド嬢に頼めばモデルになってくれるだろうが、かわいそうだろう? どうせ全てのゴーレムは私が産みだした、いわば私の複製品だ。声も私の声の音程を変えているだけだ。私は美少女だし、身体は未完成なので素体としては完璧だ。体型は好みがあるだろうからな、未完成の方が好きにいじれる」
ソードががく然とした後、アマトを振り返った。
なんとなく慌ててるアマト氏。
「あ、ソードさん、なんか勘違いしてるっぽい」
ソードがプルプルしながら私を指さし、
「スッポンポンのコイツの胸とか尻に肉付けしたってか? ちょっと…………犯罪じゃねーか?」
とか変なこと言い出したぞ。
犯罪者呼ばわりされたアマト氏、絶叫。
「やっぱ勘違いしてるしーーーー! 違うって、もっとメカニカルだから! 確かに元って言えば元だけど、人間としてのバランスを一から計算するのが面倒ってのでインドラ様の身体のバランスをスキャンして取り込んで数値化したんだよ! そっから数値をいじって成人女性としてはこんな感じだな、って割り出したの! 全然やらしい意味じゃないから! 普通に仕事でやってたから!」
私もうなずいた。
「人間の肉体を全て数値化するのは面倒なのだ。スキャンして数値を弄らないと、下手をすればアンバランスで奇怪なゴーレムが出来上がる。だからこそ未完成の素体、つまり私をベースにしたのだ。……お前も存外ムッツリスケベなのだな。アマト氏も私もそんなこと考えたことなかったぞ」
それこそソードがムッツリと黙り、周りは大爆笑した。