軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

261話 Sランク試験を受けよう(なかった)

ひと眠りしたら、元気になった。

ソードはいつの間にか酒を飲んでいるし。

「復活! 元気爽快!!」

叫んで飛び起きたらソードに驚かれた。

「うわ! びっくりさせんなよ!」

私が目を覚ましたのに気が付いていたくせに。

「疲れていたのかもな。初めての体験でちょっと心細くなったが、もう大丈夫だ」

私がそう言ったら、ソードが私の頭をなでながら言った。

「あんま無理すんなよ」

「これっぽっちも無理はしていないのだが、自分の肉体を過信していたな」

五歳で死にかけからの復活を遂げて以降、病気知らずのケガ知らずだったのですこぶる健康体のように思っていたが、そうでもなかったらしい。

しかし元気になったからよしとしよう。

ソードにニコッと笑ったら、ニコッと笑い返された。

「平和なようだし、屋台だけちょっと開催してみて、入りが悪かったらとっとと町を出るか」

私が言ったら、ソードが手で制した。

「待った。この町でSランク試験やってるかもしれねーんだよ。どうせならお前も受けろ」

へー、そーなんだ。

「そうか、ドラゴンが現れない限りSランクになれないと思っていたが」

そう私が言ったら、ソードが予測を教えてくれた。

「ドラゴンが近くにいるのかもな。でもって、定期的に現れるから撃退してるんじゃねーのか?」

それは楽しみだ!

「残ろう残ろう。王都ダンジョンのフレイムドラゴンとアイスドラゴンは見たが、もっとすごいのだといいな。サンダードラゴンとかいないかな? 透明になったりするドラゴンとか……。地中に潜った後、すごい勢いで地中から突き上げるようなドラゴンも楽しいだろうな!」

ソードの腕を引っ張って私がねだると、ソードが私を見て笑う。

「元気になって何よりだ。お前が元気をなくしたのってひょっとして、依頼がまったくなかったせいかもな」

私をワシワシとなでながらソードが言った。

また冒険者ギルドへ。

ギルドマスターがあからさまに困った顔をしているのだけれど、気にせずに私は食らいついた。

「Sランク試験があるんだってな? それって、この町に定期的にドラゴンが飛来してくるということか? なら、その試験を受けたい。殺してはいけなさそうだから、追い払うくらいにしてやる。ウッヒョー! 久々の強敵! たぎってきたぁーーー!」

私が万歳して叫んだら、ソードが笑った。

「ま、王都を襲ったほどのデカいやつじゃないだろうけど、それなりのが襲ってくるんだろ? 俺も興味あるから教えてくれ」

ソードもワクワクしているらしい。

ギルドマスター、完全に困っている顔になった。

「…………説明させてくれ」

と、制され、ギルドマスターの部屋に案内された。

ギルドマスターは、席に着くなり言い放った。

「まず訂正しておくが、ここでSランク試験なんてやってない」

いきなりとどめを刺された感。

「度々ドラゴンが襲来する町が、こんなに栄えてるワケないだろうが。住民はおろか貿易船だって近寄って来ないわ!」

ギルドマスターに至極真っ当な説教をされた。

シューン。

ソードとうな垂れた。

ギルドマスター、せきばらい。

「……王都が魔族とドラゴンに襲われ、冒険者ギルドは撃退した者に『Sランク』を与えた。Sランク冒険者には冒険者ギルドの出来うる限りの優遇措置を与える代わり、通常の冒険者では達成不可能な依頼を片付けてもらう。現在のSランク冒険者は三名。それは変わってない。ただ、全てのSランク冒険者が全ての町を巡り全ての冒険者ギルドの依頼を片付けてくれるワケじゃない。事実、ここに来たのは、【迅雷白……」

「オールラウンダーズ!」

ソードが皆まで言わせずかぶせた。

「……の、Sランク冒険者が、ようやくだ。ここは貿易港と海と内海の境目で、様々な魔物やトラブルがなだれ込む。いつか来るかも知れないSランク冒険者などをあてにして待っている余裕はないのだ」

それはそうだろうな。

うなずくと、ギルドマスターが続けた。

「来ないSランク冒険者を待つよりも、Sランク冒険者に負けないような冒険者を育て上げる方がよほど期待がある。現在、このギルドで一番かつ唯一のBランク冒険者がさっきの【シャイニングライトニングスター】だ」

あっ、また寒気がした。

なんだろう、ギルドマスターの部屋が寒いのかな?

ソードが肩をすくめて納得した。

「なるほどな。別にそれに文句はないし、むしろ大変結構、って答えるべきかな。じゃあ、『次代のSランク冒険者』ってのは、いつかその実力をつけるって意気込みか」

私もしぶしぶ納得する。

「そうか……。ドラゴンは来襲しないのか……。それは楽しそうな町だと思ったのに、勘違いだったな……」

私がしょんぼりしたら、ソードが頭をなでてくれた。

「元気出せよ。せっかくだから、沖合まで行ってみようぜ? リヴァイアサンじゃなくとも、ダーキングオクトパスの成体とかいるかもしれねーじゃねーか」

私はうなずいた。

私たちの会話を聞いていたギルドマスターが、呆れたように教えてくれた。

「……確かに、ダーキングオクトパスではないが、ブルータルモーレイがいる。ただ、その海域は船が出んぞ。そんな命知らずはいないからな」

大きいウツボってことかな?

「大丈夫、コイツはSランク冒険者なんて目じゃないほどの大魔術師且つ大魔導師なんでな。海で軽快に移動するための魔導具を開発済みだ」

ソードが言うとギルドマスターが絶句しフリーズした。

私は腕を組んで倒した後を考える。

「倒すのは楽しそうだな。だが、食べるのはなかなか難儀だ。ぬめり気が多くて、巨大な場合は塩が山のようにいるだろうな」

「うまいのか?」

食いしん坊が聞いてきた。

「ふむん。海の幸はなんでもうまいぞ?」

それを聞いたギルドマスターが復活した。

「その通り! 坊主、分かってるじゃないか!」

坊主じゃない。もう慣れたからいいけど。

「とにかく行ってくる。身が多いなら皮はそぎ落とせばいいだろう。塩がもったいないしな。捌ける人間に声を掛けておいてくれ。寄生虫対策で氷漬けにし丸一日解凍できないようにするから、捌くのは二日後以降となることも伝えておいてくれ」

「わかった」

ギルドマスター、途端に元気になった。

「モーレイは食べたことがないのだが、その分だと期待して良いみたいだな」

私が聞いたら、ギルドマスターが頭をかいた。

「まぁ、うまいってのもあるが、薬になるんだよ。滋養強壮薬だ。牙も槍の穂先になるし、皮も加工したら防具になるだろう。めったに出回らないからな、期待してるぞ」

急に期待されたー。