作品タイトル不明
237話 女の子同士は料理で仲よくなるものよ?
ダンジョンから出てきてしばらく歩くと、イワナさんに遭遇。
もしかしてずっと待ってたのかな?
何時出てくるかわからないのにすごいな。
イワナさん、ソードを見るとウルウルして、タックルかまし……いやいや、駆け寄って抱きついた。
「……ソードさん! 良かった、無事で……!」
ソード、まさか抱きつかれるとは思わなかったらしく、硬直してる。
そして、助けを求めるような目でコッチを見ないでほしい。
私に抱きつかれても平気だし抱きついても平気なんだから別にいいじゃないか、減るもんじゃ無し。
「……パートナーがインドラなら、もっと難解なダンジョンだって無事に出てこれるよ。じゃあ、悪いな。疲れてるんでな」
ウソ吐け。あんなんで疲れるか。
ジトーッと見てたら、咳払いしたソードがイワナさんを引きはがした。
で、私を脇に抱えた。
「にゃっ?」
「じゃあ、先を急ぐんで」
ソードは片手をあげてイワナさんに挨拶したが、どこへ行く気だ。
そしてこの荷物抱きはなんなのだ。
イワナさんは慌ててソードを呼び止める。
「ソードさん! あの、宿屋でお祝いを……」
「悪い。疲れてるし、インドラの手料理が食いたいんだ。インドラは、これでも拠点でレストランを経営してるすご腕の料理人なんだよ」
ソードは遮って早口でどうしようもない言い訳を言った。
あーあ。
よりにもよって、なんという断り方をするのだコイツは。
私が思わずため息をついたら、ソードがチラッと私を見てさらに付け加えた。
「……料理人は、料理を作る方の立場で考えるから、俺がコイツの料理しか食わないことに一家言あるみたいだけど、俺はそこのこだわりは譲れないんだ。俺は、インドラの料理を食べるって、決めてるんだ」
だらーん。
私が力を抜いて死んだフリをしたら、
「うわっ!?」
ソードが驚いて落としそうになった。
死んだフリした私をソードは脇に抱えシャールまで運び、最終的に放り投げた。
「祝勝会だ。ごちそう作ってくれ」
……それが頼み事のあるやつのすることか?
だけどしかたがない。ダンジョン入る前は悩んでたみたいだしー。
「……風呂にでも入ってろ。仕込んどくから」
私はソードをシッシッと手を振って追い払った。
ソードがご機嫌で風呂に入ってる間に私は料理の仕込みをする。
それにしても……ごちそう?
憂いが晴れて爽やかな気持ちなのかにゃ?
ごちそうなら、ハンバーグかなぁ。
目玉焼きも乗っけてやろうか。
付け合わせはフライドポテトと、玉葱ドレッシングのサラダかな。
前菜に、蒸し野菜と蒸し肉の冷製コンソメジュレかなー。
確かコンソメジュレは作っといたはず。
フンフン鼻歌を歌いながら作ってたら、
「お母さん。お客様が来てますよ?」
ってシャールから警告が来た。
……お客様? とは?
首をかしげたらリョークが、
「イワナさんって呼んでましたー」
って教えてくれたので、外に出た。
「ん? イワナさんか。どうしたのだ?」
確かにイワナさんだった。イワナさんは私を見て戸惑う。
「えーと、インドラちゃん、だったよね」
「そうです。いかがしたかな? ソードは今入浴中だ。伝言なら受け取っておこう」
イワナさんが微妙な顔をした。
「直接言いたいんだけど、いいかな?」
「そうか……。うーむ、しばらくかかるが、大丈夫か?」
この世界での平民の風呂とは、行水だ。
だが、私たちの風呂とは、湯船につかることだ。
全行程を終えるのに三十分ほどはかかるだろう。
あ、乾かすまでね。
困る私を見て、イワナさんはニッコリと笑顔になった。
「中で待たせてもらって良い?」
それを聞いた私は首をかしげる。
……ソードの恋人の妹さんならいいんじゃないかな?
「まぁ、ソードのお客様だ。このシャールと名付けたゴーレムも、ソードのものだからな。いいだろう、たぶん」
招き入れた。
イワナさん、中に入って絶句。
「拡張魔術を使って広げてあるのだ。まぁ、ちょっと豪華なテント、ってところだな。家具は固定されてるので動かないのはしかたがないのだ。横転したときのことも考えてあるのでな」
しばしフリーズしてたイワナさん。
「……ここが、ソードさんがいつも使ってる部屋なのね?」
と念を押してきた。
「まぁ、そうなるな」
なぜかキラキラした顔になった。
よくわからないが、スカーレット嬢もそうなったので、女性ウケするのかもしれないな。
「では、しばしここに座って待っていてくれ。あ、あまり変なところに行くなよ。ここはそれなりにセキュリティが高い。好奇心に駆られてあちこち行くと、警告されたり場合によっては防犯装置が働くからな」
イワナさん、ビクッとした。
「何を作ってるの?」
キッチンスペースで作っていると、イワナさんがやってきた。
「ごちそうだ。ソードから所望された。……ダンジョンボスと話して少し憂いが晴れたようで、祝勝会をしてほしいそうなのだ」
「ふぅん。……手伝おうか? 君一人じゃ大変でしょ?」
しばし沈思黙考。
――私一人でも別に大変ではないが、手持ち無沙汰なのかもしれん。
料理が得意なようだし、女の子同士は料理で仲よくなったりするからな!
「うむ! そうだな、では、お願いしようか」
ポテトフライでも作ってもらおうか。
さして技術はいらないしソードも好物なので、イワナさんも覚えておいて損はないだろう。
「芋を、これくらいに刻んでくれ。これが見本だ」
「わかったわ」
ニッコリ笑って、刻みはじめ……
「あっ!」
声がして振り返ると、材料が入ったボールを落とすところだった。
ので、拾い上げた。
「……え?」
「大丈夫か?」
「え、ええ」
「すまないな。ゴーレムの中なので、キッチンスペースが狭いのだ。これは、こっちに置いておこう」
「…………」
イワナさんが立ち尽くして見ている間に場所移動。
これならぶつからないね。