軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149話 いつか、桜を

アマト氏のところに向かったら。

「わー! お前、わざとだろ! 違うとか白々しく言わない! って、またお前食べるのかよ! 太るって……わー! 突進するなって!」

魔物たちに遊ばれてるアマト氏がいた。

「あ! ご主人様だー!」

って、黒太が気付いて、アマト氏放置してみんなやってきた。

「おぉ! かわいい魔物たちよ! 元気にしてたか? 何か不満はないか?」

「元気ー!」

「変な人がきたよー」

「変な人ー」

「モテない人ー」

モテない人とか言われてるけど。

「うるさいっ! ソコ、全部聞こえてるぞ! モテない人とか言わない!」

わぁ。アマト氏もイキイキしてるー。プログラマーより牧場経営の方が向いてたんじゃない?

「アマト氏、無事に着いて何よりだ」

「おかげさまでー。あの水鉄砲と唐辛子爆弾で命拾いした」

水鉄砲じゃないっ!

「つーか、あの唐辛子爆弾、すごかったけど。当たった人だけじゃなく、周りの人まで転げ回ってた」

「え! マジで転げ回ってたの? ソイツら大丈夫だったの?」

ソードが襲ってきた人間の心配をしているぞ?

「うーん、命に別状はなかったみたいだけど。でも、ずーっと助けてくれって言ってたかな。どうしようもないから、ごめんね、って謝った」

「おぉ、優しいな、アマト氏」

「え……ドSのお前からすると、優しいんだ?」

当たり前だろ。相手、殺しにかかってきた奴だぞ。私ならもっと酷い拷問に掛けた後惨殺してやる。

「そうだ、アマト氏、見せたい物があるんだ。手が空いたら食堂に来てくれ」

アマト氏がゲンナリした。

「手は、空いてるよ? アイツらが邪魔しなけりゃさ」

魔物たちを指差す。

「会話出来るのが楽しいのだろう。いいじゃないか、懐かれるのは良いことだぞ? では、またな」

一旦わかれて、食堂に作った桜をセットした。

やっぱり散るのも見せないと、と思って、もっかい貼り直す。……と、続々と集まる使用人たち。

みんな見たいのかな?

「お前たちも見たいか。……これは、麗しの君プラナヴァーユが作った土台を私が買い取り、サハド君と三人で作りあげた玩具だ。なかなかに計算されていて、私も見たとき唸った。こういう発想は大事だぞ? という見本だ。サハド君も独学で土の食器を作りあげたしな。お前たちも、失敗を恐れず、発想を凝り固めず、柔軟に持ち、そして『なぜ?』という疑問も忘れずにいろいろ試していけよ」

「「はい!」」

プラナとサハドが照れている。

かわいいねー、初々しいねー。って思いながら二人を眺めていたら、ソードに言われた。

「……ホントお前って、人以外には優しいよなー」

うるさいっ。私は人かそうじゃないかで区別してないだけで、優しいんだっ。

……ソードはぴったり私の後ろに立って、肩や頭に手を置いたりしている。たぶん、これを見て泣いたから、心配なんだろう。

いや、もっと泣くのは……。

「うわー、勢揃いしてる」

って入ってきた、アマト氏だと思う。

「……って、コレ、[桜]のフィギュア⁉ すっげ、インドラ様が作ったの?」

「そうだ、土台はこちらの美少女エルフだが、全体像は私と今回スカウトした仲間で作りあげたぞ!」

「さっすが、インドラ様ってすげーな」

感心されたが、まだまだだ。

「いや、これは、まだまだこれからなんだ。よく見てくれ」

起動し、風が舞う。そして桜吹雪が踊る。

おぉー! と歓声が上がった。

だが、アマト氏は……。

絶句して固まった後、ツーッと、涙が零れた。

「桜吹雪を作ったんだ。私の知識の中を再現した。私は実際に見ていないが……アマト氏は見たんだろう? どうだ? 再現出来ているか?」

それで、アマト氏が泣いていることに全員が気付いた。

アマト氏は、泣きながら頷いた。

「…………俺、社畜で、花見は、最近行ってなかった。でも、ようやく納品して、一度家に帰る、ってとき、こんな、ふう、だった。桜が咲いてて、もう桜の時期かー、って思って、見上げた。すげー、奇麗で、コンビニ寄って、発泡酒片手に、ブラブラ歩いた。そのとき風で花びらが舞って………………」

アマト氏が、目を閉じた。その光景を思い出しているんだろう。

暫くして、ソードがアマト氏の肩を叩いた。

「……俺とインドラは、この桜を探しにいこうと思う。まぁ、観光しがてらだけどよ。…………お前も、来るか?」

言われてポカンとしてソードを見た後、しばらくして首を振った。

「俺、待ってるよ、ここで。俺って元々アクティブじゃないし、だから会社でずっと泊まり込んで作業してても平気だったんだし。今は、魔物の世話して、生き物係? みたいなのやってるからさ。見つけたら、苗木でも持ってきてよ。どっか庭の隅に植えたら、俺、育てるから。大木にして、それを魔物たちと見るよ」

ソードが笑った。

「そうかよ。……じゃ、今度は土産に[さくら]を持ってくるから。それまでは、インドラのこの作品を眺めててくれよ」

「わかった」

アマト氏は頷くと、また桜を見た。

あり合わせの材料で作ったが、結構再現出来たよな。

私たちの記憶にある桜を。

使用人たちが、場所を作ってくれて、桜は飾られた。

うん、夏とかに見るとちょっと違うとか思うけど、まぁ、雛人形のように春になったら出してとも言えない。

というか、かなりのお気に入りらしく、結構皆さん動かしてます。花びらも自分たちでくっつけて、舞い散らせてます。

意外と好評なようで。