軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23 チャンス

「リシューさん、自分が何を言っているのか分かってますか?」

「勿論分かっている」

「大丈夫ですか!?」

「私が、冗談でこんな事を誰にでも言うような男だと思われているのか?」

「それは……」

絶対にないと思う。仕事馬鹿で真面目な人だと知っている。天然タラシだという事も知っている。無自覚って、本当に恐ろしい!

「で……でも!婚約者って、そんな簡単に決められるようなものなんですか?離婚歴のある私よりも、若くて綺麗な令嬢なんていっぱいいるんですよ!?」

私が持っているものと言えば、仕事の能力だけ。恋愛結婚したのに裏切られた。顔だって至って普通。スタイルが抜群に良いわけでもない。

「簡単に決めたわけじゃない。そもそも、私は他人と一緒に過ごす事自体が苦手なんだ。特に、下心むき出しで近付いて来る女性や、香水のキツイ女性が傍に来るだけで辟易する。でも、マリレーヌさんだけは違った。マリレーヌさんとの会話は、それが仕事の事でもそうじゃない事でも楽しかった。もっと話がしたいと思うほどにね。それに、香水はつけてないのに、マリレーヌさんからはいつも良い匂いがして、心が落ち着いていた」

「な…………」

ボフッ──と顔が熱くなる。

ー本当に……この天然、どうにかしてくれませんか!?ー

“良い匂い”って何!?リシューさんの言う通り、私は香水なんてつけていない。

「だから、私としては、マリレーヌさんが婚約者になって、このままウチで過ごしてくれるのなら嬉しいし、護る事もできる」

「なるほど……」

伯父が、更にニコニコ笑顔になる。

「でも、無理強いするつもりはない。そこに、マリレーヌさんの気持ちが無ければ意味は無いから」

本当に、リシューさんは真面目な人だ。契約結婚だと言って、すぐにでも婚約を成立させる力があるのに、私の気持ちを考えてくれるのだから。そんなリシューさんだから、信じたいという気持ちがある。

「ここ数ヶ月は色々とあって気持ちの整理ができていないというのが本音なんです。でも、私も、リシューさんの事は嫌いではないし、好感を持っているのも確かです。でも……リシューさんの事は知らない事だらけなので、すぐに受け入れる事もできません」

「ふむ……それじゃあ、取り敢えず、マリレーヌはこのままコペリオン邸でお世話になったらどうかな?期間は半年。その間、お互いを知っていけば良い。そうしてお互いを知ってから、婚約を受け入れるかどうか判断するのはどうかな?」

「私はそれでも構わない」

「リシューさんが、それで良いのなら……」

伯父の提案に頷くリシューさん。リシューさんがそれで良いと言うなら、私も嫌ではないから受け入れるだけ。

それから暫くの間話をした後、伯父は夕方前にはナルターレル家に帰って行った。

その伯父を見送った後。

「加護持ちの事は、父にだけは言っておいた方が良いと思うけど、良いかな?」

「勿論です。でも、コペリオン伯爵の許可も得ず、私が滞在する事や婚約者にする事を決めてしまっても大丈夫なんですか?そっちの方が心配なんですけど……」

「あぁ、それなら大丈夫だ」

**リシュー視点**

まさか、マリレーヌさんが加護持ちだとは思わなかった──が、これからもマリレーヌさんがウチで過ごす理由ができた事は良かった。どうやって繋ぎ留めようか──と思案していたところだった。

マリレーヌさんとの会話は、本当に楽しい。“ブレイザー夫人だから”と、あまり深入りせず距離を取っていたけど、旦那が ア(・) レ(・) だったおかげで、一緒に居られる可能性ができた。好感も持ってもらえてる事も分かった。なら、後は私に気持ちを傾けてもらえるように努力すれば良いだけ。父の事を気にしているが、それは全く問題はない。

『彼女ほど優秀な者は居ない。絶対に逃すな』

と言われている。上手くいくだろうと思ってはいたけど、あの気難しい父が、あそこまで気に入るとは、本当に珍しい。勿論、宰相室の者達からも評判は良いし、王太子殿下も気に入っている。

ただ、叔母上からは『マリレーヌの嫌がる事をするようなら、私が全力で阻止するから』と、釘を刺されている。勿論、マリレーヌさんの嫌がる事はしない。

それよりも、一番に考えなければいけないのはアシュトン=ブレイザーだ。報告によれば、ろくに領地の管理もせず邸に引き篭もり、領民の不満が膨らんでいるという事だった。これから、あの男がどう出るのか──

心を入れ替えて領地運営に励むのか、逃げたまま追い込まれるのか──なら良いが、またマリレーヌさんとよりを戻そうとしたり、こき使う為に連れ戻そうとするなら──

「その時は、丁重にもてなさないといけないな」

とにかく、愚かな選択をしない事を祈っている。