軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミカライズ1巻発売記念ショートストーリー ベアトリスの至福のとき

ベアトリスは書斎にあった魔法書が面白くて、ついつい夜更かしをしていた。

そんな彼女を、アライグマ妖精の三姉妹が呼びにやってくる。

『そろそろ寝ないと!』

『明日、お寝坊しちゃうよ!』

『一緒に寝よ!』

「ええ、そうですね」

ベアトリスは魔法書にしおりを挟むと、アライグマ妖精の三姉妹と共に寝室へと向かう。 布団に潜り込むと、冷たいはずのシーツやブランケットが暖かかった。

「もしかして、温めてくれていたのですか?」

『そうだよ!』

『すっと待っていたの!』

『あたたかい?』

「ええ、とっても」

幸せな気持ちで、ベアトリスはブランケットに包まる。

そんな彼女の枕元に、アライグマ妖精の三姉妹が集まって丸くなった。

ふわふわ、いい香りがする彼女らに包まれていると、ベアトリスはホッとするのだ。

『布団で寝てくれるようになってよかった!』

『結婚していたときは、いつも机で寝てたの』

『心配だったんだ』

「ごめんなさいね」

元夫オイゲンはベアトリスに無理な量のポーションを作るように命じていたのだ。

日中では間に合わず、夜遅くまで作っていたのである。

最後は寝室に戻る気力もなく、机に突っ伏すようにして眠っていたのである。

その当時に比べたら、なんて満たされた日々を送っているのか、とベアトリスは思う。

そんな気持ちをアライグマ妖精の三姉妹に伝えると、ベアトリスに体をすり寄せてきた。

「ムク、モコ、モフ……あなた達が傍にいてくれるから、私は毎日幸せなんです」

『わたし達も幸せだよ!』

『一生傍にいる!』

『大好き!』

ベアトリスはアライグマ妖精の三姉妹を抱きしめながら、眠りに就いたのだった。

◇◇◇

翌朝――ベアトリスは台所に立つ。

オイゲンと結婚していたときは、一秒でも長く眠りたいと思って朝食をほとんど取っていなかった。

けれどもここへやってきてからというもの、朝になるとお腹がペコペコになるのだ。

今日、作るのは祖母のレシピ帳にあった〝とっておきパンケーキ〟である。

ベアトリスが尊敬する祖父の大好物だったらしい。

まずボウルに小麦粉とふくらし粉、塩、砂糖を入れて軽く混ぜる。

そこに卵を溶いて溶かしバター、牛乳と合わせたものを入れて 攪拌(かくはん) 。

強火で温めたフライパンを一度、濡れ布巾の上に置いて冷ましたあと、バターを落としたところに生地を流し込む。

ほんの少し火を通したら、生地の真ん中をフライ返しで掬い上げ、ハムとチーズを入れてもとに戻す。

あとは裏、表ときつね色になるまで焼いて、仕上げにバターを表面に塗ったら、〝とっておきパンケーキ〟の完成だ。

天気がいいので、庭にあるテラスでいただく。

生地の表面はバターがじゅわっと染みこんでいて、中からチーズが溢れてくる。

ハムのしょっぱさも生地とよく合っていて、最高のパンケーキだと思った。

こうしてゆっくり朝食を取る時間も、ベアトリスにとって至福となっている。

これからもどんどん、ゆったりのんびり過ごそうと思うベアトリスだった。