軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

HAPPY WEDDING♡ 正式な夫婦になりました!

―ユリオスが遠征から戻って3日後―

※マーガレット視点

わぁー、夢じゃない。嘘じゃないんだぁ。

この国で一番大きな聖堂の荘厳さに、思わず身震いが起きる。式の直前。参列者の皆様は、ニールさんを除き、既に席に着いている。

ユリオス様は、「屋敷や兵士の方たちだけで、ひっそりと式を挙げる」と言っていたにもかかわらず、参列者である国王陛下が、ちらちらとユリオス様を見ている。それに、全く存じ上げないご令嬢が、いっぱい来ているのだ。

これはもう、驚くしかない。

純白のウェディングドレスを身に纏った姿で、私がユリオス様の横に並び、冗談ではないと実感しているところ。

この私がユリオス様と大聖堂へ来るなんて、誰も想像していなかったはずだ。

だって、だって、だって。結婚を祝うために、わざわざ国王陛下まで、足を運ばせる影響力をお持ちのユリオス様と、絵に描いたような地味な私が結婚式を挙げるんですもの。

偶然、運が良かったばっかりに、ユリオス様の横に並ぶのが私になったのだ。

こうなれば、この国の令嬢の皆さまに「私なんかで申し訳ない」と、お詫びしなくてはいけない気分だ。

「ユリオス様。私、もう二度と夜会や舞踏会には参加したくないのですが、……駄目ですか」

この状況、私は多くの令嬢たちから恨みを買っているはずであり、こうれはもう逃げるが勝ちだ。

「偶然だな。マーガレットが嫌なら、無理に行かなくてもいいと伝えるつもりだった」

「良かった~。ユリオス様ってば、私の我儘を何でも聞いてくれるから、もっと好きになっちゃいました」

「それは嬉しいところだが、なんだか罪悪感が酷い。夜会に行かないのはマーガレットの我が儘ではなく俺の願望だからな」

「ユリオス様はそうやって優しいんだから。結婚式だって、ありがとうございます」

「いや遅くなって悪かった。本来だったらマーガレットが来て直ぐに挙げるべきだったのに」

「いえいえ。式なんて考えていなかったので嬉しいですよ。でも、結婚式を挙げてなかったから、一生に一度しか受けられない大聖堂の祝福を、3人で受けられることになったので、もっと嬉しいですけどね」

「3人とはどういう意味だ、まさか他の男を数えているわけじゃないよな」

怪訝な顔をされるユリオス様。やはり、男性はこの辺りの感覚が違うのかもしれない。

それにしても、「他の男を数える」は、さすがに意味が分からない気もする。

「ユリオス様は、何を急に意味の分からないことを言っているんですか? おなかの赤ちゃんのことですよ。この子は、おなかの中でも祝福を受けられるんですもの、きっと、幸せになりますよ、ふふっ」

「腹に子がいるのかっ? うっ、嬉しいが、式の直前に聞かされて、混乱している。待て、待て、馬車で揺られて大丈夫だったのか? どうしてもっと早くに教えてくれない」

「ふふっ、馬車くらい大丈夫ですよ。でも、ユリオス様へ、ちゃんと言いましたよ、診療所へ行ってきたって」

「あの話か。……悪い、全然分かっていなかった。ニール! マーガレットが、マーガレットが、身ごもって」

慌て出したユリオス様が、ニールさんへ妊娠の報告をし始めた。

……ごめんなさい。先に謝っておきます。ユリオス様が知ったのは……、一番最後ですから。

小心者な私は、それを言い出せず、素知らぬ顔でニールさんへ託すことにした。

「何を言っているんですかユリオス様。屋敷の者はみんな知っていますよ。だから、薬草の件をユリオス様にお願いしたんです。しばらく暇なことですし、明日からお1人で、どんどん採ってきてくださいね」

「おい! 俺はマーガレットと一緒にいるために、くだらん戦争をさっさと片付けて戻ってきたんだ。身重のマーガレットを放って出掛けるなどできるか。誰か他の奴に行かせて」

突然、ニールさんが私の手をバッと握ると、至極真面目な顔と口調で話し始めた。

「マーガレット様、結婚式を取り止めるのは、まだ間に合いますよ。一度言ったことを撤回するような軽い男は、マーガレット様にはもったいないって、みんな言っていますし……、なんなら離婚もできますよ」

「はぁっ! 誰が、そんなけしからんことを言っているんだ、馬鹿を言うな」

「それは、屋敷の従者全員と、先日訪ねて来たカイル様の話だと宿舎の兵士の皆さまでしょう。あれ? マーガレット様のお父様も……」

「あーー、もうそれ以上言うな。マーガレットの欲しいものは俺が全部採ってきてやるし、俺のマーガレットは絶対に誰にも渡さない!」

「初めからそういう約束だったのに、つべこべ言うユリオス様が悪いんですよ! あっ、ちょっと、式の前にマーガレット様をそんなに抱きしめたら、せっかくのドレスが乱れますから、大概にしてくださいね」

「ユリオス様。私の部屋が草だらけなの、やっぱり怒ってますか」

「怒ってない。怒ってない。勝手に来た偉い奴が、悪い顔をしているんだ、俺から離れるな」

…どういう意味だろうか。

「マーガレット様、言ったでしょう遠慮はいらないって。屋敷の中でユリオス様が一番暇で体力が有り余っているんですから、どんどんお願いすると良いですよ」

「いいんですか! それではお言葉に甘えさせてもらいますね。実は、まだお渡ししていない薬草のリストもあって困っていたんです。採ってきてくれますかユリオス様」

「あ、ああ。当たり前だろう」

****

※ユリオス・ブランドン視点

ニールの奴……。

俺がアンドリューから夜会で聞いた話を、うっかりニールへ話したばかりに、屋敷の中で俺の立場は駄々下がりもいいところだ。

俺は、こんな人間ではなかったはずだ。

薬草採りへマーガレットと2人で行くのを楽しみにしていたのに、一緒でないなら話は別だろう。

そう思ったところで、やはりマーガレットに弱い俺は、妻の喜ぶ顔見たさにドンドン引き受けてしまう羽目になった。

まさか、軍を率いて、隣国との戦争に勝利したこの俺が、まるで少女のような妻に完敗するとは。

そもそも、俺の留守を守れる妻を求めていたが、当主の俺が可愛い妻の尻に敷かれる日が来るとは思わなかった。

……それもそうか。

初めて俺たちが出会ったあの日、彼女のことを見抜けなかった時点で俺の負けだったのだ。

俺のような、女性を見る目も、世の中の基準も分からなかった男が偶然、最高の花嫁を手に入れ、その妻が嬉しそうに笑って、新しい家族ができるんだ。尻に敷かれるくらい、なんてことはないか。

この国で一番の幸せ者だな、俺は。

****

『…………あなたは妻として、夫を支えることを誓いますか』

「誓います!」

神聖者様から問われた私は、とびきり大きな声で答えた。

私、マーガレットは、手違いの妻のはずでしたが、なんと正式な妻になりました!

華やかな貴族の社交界で、上手く会話もできないし、ダンスも踊れない私。

だけど、そんなことを気にしない奇特な男性がいるなんて、知りませんでした。

まさか、まさか、従者さんたちが嫌がった、薬草採り。

それを恐る恐るニールさんへお願いしたのに、今、横にいる旦那様は嬉しそうに笑って引き受けてくれるんですもの。

こんな優しい人がいるなんて、知りませんでした。

私の趣味の薬作りを、全力で協力してくれる、体力自慢の旦那様と結婚できるなんて、これはもう夢みたいな話です。

まだまだ掛かると言われていた隣国との戦争。それを、凄い早さで終結させた、誰にも負けない強い旦那様。

そんな方が、どんくさくて地味な私を愛してくれるなんて、これはもう奇跡としか思えません。

旦那様の部下の皆さんは、素人の薬を大袈裟に褒めてくれる親切な方たちばかりだし、屋敷のみんなも、優しくていい人たちばかり。

そんなみんなに囲まれて、今、愛しい旦那様の横で、私は最高に幸せな花嫁になりました。

~HAPPY WEDDING~