軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六十話

午前中の議論も一段落しましたので昼休憩を挟むことになりました。

神隠し事件の話は、悪魔対策の話になり、私はアリスさんに話を振って下級悪魔の捕捉方法などをご教示してもらいました。

その後は結界術や治癒術についての情報交換。

各国の聖女たちは、各々が様々な工夫を凝らしていましたので、非常に有意義な意見交換が可能となり、それだけで 聖女世界会議(セイントサミット) を開いた価値があったと思っています。

「フィリアさん、あ、改めまして、自己紹介させてください。だ、ダルバート王国の聖女、アリス・イースフィルです」

会議が終わり、皆様が会議室の外に出て休憩などに向かう中、ダルバート王国の聖女で先代大聖女であるフィアナ・イースフィルの子孫であるアリスさんが話しかけて来られました。

エルザさんから退魔師としての力もかなりの腕利きだと伺っていますので、私も積極的に彼女の話を聞こうとしたのですが――。

彼女も私と同じく人見知りみたいでしたので、何だか悪いことをしたと反省しています。

「フィリア・アデナウアーです。申し訳ありません。是非とも退魔師でもある、アリスさんの意見を聞きたくて色々とお話をさせてしまって」

「いえ、わ、私こそ、何回も噛んでしまって……、あの、ええーっと、聞き取り難かったですよね? い、いつもダメなんです。緊張すると上手く話せなくて。幼馴染のエルザにも怒られる始末です」

「分かりやすくて簡潔で、助かりましたよ。……エルザさんとは幼馴染なんですね。彼女にはお世話になっています」

自信が無さそうに話されるアリスさんでしたが、悪魔対策の説明は初めて悪魔について知った方でも理解しやすくて、感心しました。

さすがは大国ダルバート王国をたった一人で守っている聖女です。

それにしてもエルザさん、アリスさんと幼馴染なんて一言も仰ってくれませんでしたね。

あまり身内話をするタイプの方ではありませんので、不思議ではありませんが。

「え、エルザ、失礼なこととかしていませんか? いきなりマモンの首を切り飛ばしたり――」

「……はい。大丈夫ですよ。もう慣れましたから」

「だ、大丈夫じゃないですよ。エルザったら、あれほど、フィリアさんには丁寧に接するように言ったのに……」

エルザさんのことで、涙目になられるアリスさんを見て、彼女らがどれだけ仲が良い友人なのか理解出来ました。

私にも仲が良い友人がいれば……いえ、ジルトニアに居たときはそう呼べる方はいませんでしたが今は――。

「なんだか、フィリアさんと話していると他人と話しているって感じがしません。温かい気持ちになるというか、ご先祖様であるフィアナ・イースフィルの生まれ変わりというのも、何となく納得できます」

「そうでしょうか? 未だにあの大聖女様の生まれ変わりだと言われても、あまりピンと来ないのですが」

「はい。とても緊張していたのですが、今はこのとおり、震えもなくなりましたから。……エルザのことよろしくお願いします」

ペコリと頭を下げて、アリスさんは待たせていたダルバート王国の護衛の方と会議室の外に行かれました。

どうやら、皆様、自衛も兼ねて各々の護衛の方と共に居るみたいですね。

これだけ足並が揃っているとアスモデウスが何かを仕掛けてきたとしても手を打ちやすいです。

私も外の空気を吸いに中庭にでも行きましょう。

会議室を出て、私は王宮の中庭を目指しました。

おや? あそこにいらっしゃるのは――。

「フィリップさん。特訓をされているのですか?」

「フィリア様! 休憩ですか! いやー、フィリア様の考案されたこの槍ですが、使い心地が最高ですな! 任せてください! 悪魔が何体来ようとこのフィリップがフィリア様をお守りいたします!」

中庭で赤い槍を振り回していたフィリップさんに話しかけると、彼はいつもどおりの元気な声で返事をしました。

先日、オスヴァルト殿下に手渡した対悪魔用の武器の試作品がいくつか出来上がったみたいですが、当然彼も受け取ってくれたみたいですね。

槍の先端にはエルザさんのファルシオンを参考にして作った魔力を吸収する金属を加工して作られた刃が備え付けられています。

エルザさんの武器との違いは“魔力の吸収”という特性に特化したところです。

フィリップさんやオスヴァルト殿下は魔力を保持していないので、魔力を流し込んで武器を強化することは出来ません。

しかし、悪魔の高い再生能力を金属を介して魔力を吸い取ることで、妨害することは出来ます。

つまり、フィリップさんの人並外れた膂力はそのまま悪魔への殺傷能力に活かされることになるのです。

「あの日、エルザさんとマモンさんがやって来た日から、フィリップさんやヒマリさんの元気がなくなったように見えましたので、日頃の感謝も込めて恩返しが出来て良かったです」

「フィリア殿……! 自分たちのためにそこまで……! うおおおおおおおおっ! 感動して涙が止まりません!」

大きな声を出しながら泣き出すフィリップさん。

そ、そういえば、初めてお会いしたときもミアの話を聞いたと泣いていたような――なんとも、お優しい方です。

「フィリップさ〜ん、うるさいですよ〜〜!」

「フィリア様が困っておられる。私の故郷では真の武人とは親の死目以外では泣かぬものだ」

「フィリップ殿、困りますなぁ。何事かと思って飛び出してしまいましたよ」

リーナさん、ヒマリさん、レオナルドさん……。

会議中は部屋の内外でひっそりと私のことを見守って下さっていた彼女らが、揃って姿を現しました。

「むっ! フィリア様! 申し訳ありません! 醜態を晒してしまいました!」

「いえ、そんなに喜んでもらえると思っていませんでしたから、嬉しいです」

リーナさんたちに咎められたからなのか、少しだけ気まずそうな顔をしたフィリップさんでしたが、私は素直に嬉しいと感じています。

こうして喜んでもらえるとやり甲斐がありますから。

「あー、それって対悪魔武器ってやつですよね〜〜? 私も貰いましたよ〜!」

「このクナイでフィリア様の敵を全て屠ります」

「赤い靴も洒落ていて良いものです。まるで、あの頃に若返った気分ですな」

どうやら三人とも完成品を受け取ってくれたみたいです。

そんな皆さんを頼もしいと思うと共に、私の気が散らないように配慮しながら守ってくださっていることに私は感謝しました――。