軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミックス第1巻発売記念SS

「フィリア様~、今日もお務めご苦労様です~。こちら、お飲みください~」

「ありがとうございます」

聖女としてのお務めを終えた私はリーナさんが淹れてくれた紅茶を手にしました。

温かくて、美味しい……。彼女の淹れてくれる紅茶は香りから味まですべてにおいて一級品です。

パルナコルタ産の茶葉が私の口に合っているのかもしれませんが、他の場所で飲むよりも彼女が淹れてくれたほうが美味しいので、やはりリーナさんの技術が優れているのでしょう。

「オスヴァルト殿下からいいお野菜をいただきました。新鮮なうちに召し上がってほしいとのことでしたので、今日の夕食に使いましょう」

「まぁ、オスヴァルト様がいらしていたのですか?」

「ええ、今日は急ぎの用事があるようでして。フィリア様にはよろしくと、だけ」

殿下が屋敷に訪問していたことを知り、私はすれ違ってしまったことを少しだけ寂しく思いました。

今、パルナコルタ王国は復興事業に取り組んでいる最中ですし、そんな中で私たちも結婚式の準備を進めているので仕方ありません。

「殿下はまた明日来られるとのことですよ」

「ふふふ、フィリア様良かったですね~。寂しそうな顔をしていましたが、元気になりましたか~?」

「えっ? あ、あのう。私、そんなに表情に出ていましたか?」

「はい~。オスヴァルト殿下の話のときだけフィリア様はわかりやすいです~」

リーナさんがニコニコしながら私の表情をうかがい、感情を読み取りました。

どうやら私は油断していると心中を簡単に知られるようになったみたいです。

以前はよく何を考えているのかわからないから、と不気味がられましたが、そのときよりは良い傾向なのかもしれません。

「それとこれは仕立て屋が作った新しい聖女服です。以前よりも丈夫な生地で同じデザインのものを作らせました」

「ありがとうございます。もうアスモデウスやハーデスのように人智を超えたものと対峙することはないと思いますが、用心はしておこうと思いまして」

そして私はレオナルドさんから新しい聖女服を受け取りました。

どうも最近、ボロボロになることが多くてもう少し丈夫なものがほしいと思っていたのです。

「フィリア様~、聖女服のデザインって決まっているんですか~? ミア様やヒルダ様も似たような感じですよね~」

「アデナウアー家の聖女は代々このデザインに近いものですね。若干の違いはありますが……」

「そういえばエミリーさんやグレイスさんは色合いや雰囲気が違いましたね~」

「なるほど。マーティラス家も代々独自のデザインの聖女服ということですな。そういえば先代聖女のエリザベス様もマーティラス家のデザインに近い聖女服でした」

「そうでしたね~。なんだか面白いです~」

聖女服のデザインの話を興味津々に聞いているリーナさん。

なにも考えずに着ていましたが、そんなに面白い話でしょうか? グレイスさんたちの着ている聖女服とは確かにデザインは異なりますが、機能的にはあまり変わらないかと思うのですが……。

「デザインと言えば、フィリア様のウェディングドレスのデザイン、そろそろ考えなくてはならないんじゃないですか~?」

「えっ? それは王家御用達の仕立て屋さんが決める手はずではないのですか?」

「いえ、もちろんデザイン案は提案しますが当然花嫁であらせられるフィリア様のご意向も組み込むことになっております」

寝耳に水、とはこのことかもしれません。

先日ライハルト殿下からいただいた書類にはウェディングドレスは何代もの間、王家の衣服に携わってきたという仕立て屋さんが作られると書いてあっただけでしたので、私がなにかするとは夢にも思っていなかったのです。

「まぁ、そこはダムの設計図などを作られるフィリア様ですから、ドレスのデザイン案など簡単にできますでしょう」

「衣服のデザインは経験ありませんが、機動性や通気性を考えて――」

「さっそく嫌な予感しかしませんから今度既製品のドレスを見に行って参考にしましょ~!」

リーナさんが私の言葉を遮り、ドレスのデザインについてのお話はまた今度ということになりました。

和やかな毎日、そしてゆっくりと近付くオスヴァルト様との結婚式の日取り。

明日を楽しみにして過ごすことがこんなにも幸せだったとはあの日の私は知りませんでした。

どうかこんな日がずっと続きますように……。