軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-30 (第二部 完結)

そうして、後日。

アレクシスはビーダイド王国を代表して、ベルツ帝国の皇帝となったカーロイドの即位式に参列した。

向こうの貴族の中には、山脈の向こう側の国からの訪問を快く思わない者もいたようだ。

まだカーロイドが皇帝になることを認めない者もいる。

弟達も、虎視眈々と帝位を狙っていることだろう。

さらにアロイスが皇弟を名乗っていたとき、彼に洗脳されていないのに、山脈を越えて攻め込むことに賛成した者も多数いた。

ベルツ帝国内は、いつ内乱が起こっても不思議ではない状態である。

向こう側の国の代表として現れたアレクシスは、そんな殺気立った会場内でも、平然としていた。

何事もなく無事に終わったわけではない。

ビーダイド王国に対する宣戦布告とばかりに、アレクシスを襲った者もいた。

だがアレクシスは護衛が必要ないほどの剣士であり、しかも光の加護を一番強く受けている王太子である。

あっさりと刺客を退け、その圧倒的な魔法で向こう側に恐怖を植え付けたようだ。

さらに、祝いの品として贈られた魔導具で、新皇帝カーロイドが雨を降らせてみると、集まった人々からは大地が揺らぐほどの大歓声が沸き起こった。

この魔導具が、ビーダイド王国産であること。

上手く国交を結ぶことができれば、定期的に輸入することができることを伝えると、あれほど他国との交流を嫌っていた貴族達にも変化が見られたらしい。

それほど、ベルツ帝国の食糧事情は緊迫していたのだ。

まだカーロイド皇帝の地位は盤石ではない。

けれど彼は、けっして焦らないようにと告げたアレクシスの言葉に、真摯に頷いたようだ。

時間が掛かるだろうが、いつか彼の理想は現実になるだろう。

ビーダイド王国でも、アレクシスの帰国を待って王太子妃ソフィアの懐妊が発表され、各地から祝いの言葉や贈り物が届いていた。

アレクシスが帰るまで硬い表情をしていたソフィアも、無事に帰国した彼に大切にされて、幸せそうだ。

そんなことが起こった後の、とある週末。

魔導具の開発が一段落して、魔法水の研究もユリウスに渡したアメリアは、マリーエの屋敷でのお泊り会に参加していた。

サルジュにはまだ肥料を完成させるという仕事があったが、それに関しては土魔法の分野なので、あまり手伝えることはない。

サルジュに行っておいでと送り出されて、彼には徹夜しないことを約束してもらい、こうしてマリーエの屋敷に来ている。

夜になるとマリーエ、リリアーネ、クロエ。

そしてミィーナと一緒に、部屋の半分を占めるほどの大きな寝台に転がり、互いに理想の夫婦を語っていた。

みんなソフィアの懐妊に、あらためて自分達の未来を考えるようになったのだろう。

「やはり尊敬し合って、支え合う夫婦でしょうか。ユリウス様のことは、尊敬しておりますから」

そう語るマリーエに頷きながら、リリアーネも自分の理想を語る。

「わたくしは、夫婦になっても切磋琢磨していたいですね。カイドはああ見えて、本当に強いので」

リリアーネは、アメリアが学園を卒業したら婚約者のカイドと結婚する予定だが、護衛は続けてくれるらしい。

アメリアにとっては心強い話だ。

「私は、いつまでも友達みたいに仲良しでいたいな。ソルとなら、そんな夫婦になれると思う」

ミィーナが従弟のソルと仲が良いことは、アメリアにとっても嬉しいことだ。

「私は、まだ婚約すらしていないけれど、もしエスト様ともう一度婚約することができたら、彼を支えられる人になりたいと思います」

クロエは穏やかにそう語った。

エストとクロエは、定期的に会っているようだ。

互いに年齢差を気にしてるようだが、ふたりが一緒にいるときの雰囲気は親密そうで、今ではアメリアもお似合いだと思っている。

「アメリアは?」

「わたしは……」

マリーエに促されて、アメリアは少しだけ考える。

「サルジュ様とは、今の関係が理想だと思っているから……。夫婦になれても、あまり変わらないかもしれない」

心から尊敬しているし、誰よりも愛している。

さらりとそう答えたアメリアに、マリーエはくすくすと笑う。

「知っていたけれど、アメリアが一番情熱的よね」

「そうですね」

リリアーネも即答し、クロエとミィーナも頷いていて、恥ずかしくなってクッションで顔を隠す。

「もう、からかわないで」

そう言ったあとに、みんなで顔を見合わせて、笑い合う。

大好きな友人がいて、最愛の人がいる。

そして大切な家族は、これからもっと増えていくことだろう。

リースの裏切りに傷付いていたあの頃は、こんなにも幸せな日を過ごせるなんて思わなかった。

お泊り会が終わって王城に戻る途中、アメリアはふと顔を上げた。

ちょうど学園の前を通り過ぎるところだった。

学園の隣に建てられている大ホールが見えて、サルジュに初めて出会ったとき、掛けてもらった言葉を思い出した。

『そろそろパーティが始まる。会場に入らないのか?』

すべてはあの日から始まったのだ。

アメリアはサルジュのように再現魔法を使うことはできないけれど、あの日のサルジュの声も、姿も、すべて鮮明に覚えている。

きっと何年経っても、この記憶は鮮やかに蘇り、けっして色褪せることはないだろう。