軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-34

結婚式には、たくさんの人たちが参列してくれたようだ。

ベルツ帝国からも、皇帝代理としてリリアンが来てくれた。

正装した彼女はとても美しく、ベルツ帝国民らしくない容貌を訝しむ者もいたが、アレクシスは彼女のことを正式に身内だと紹介した。

「リリアンは、ベルツ帝国の皇妃になるかもしれない」

驚くアメリアに、サルジュがそう囁いた。

だからこそ、アレクシスもその出自を明確にしたのだろう。

さすがにアロイスのことは伏せられているが、リリアンは隠れるのをやめ、表舞台に出る決意をした。

(リリアンさんはビーダイド王国の王家の血を引いているから……)

彼女を妻にすれば、カーロイドはアレクシスたちとも縁ができる。

魔力を持つ子どもも生まれてくるかもしれない。

アメリアの目には、リリアンも、カーロイドに対して好意を持っているように見えた。

カーロイドとベルツ帝国にとって、リリアンの存在は希望となるだろう。

たくさんの人たちに見守られ、祝福されながら、アメリアはサルジュと永遠の愛を誓う。

アメリアの指には、サルジュが制作してくれた結婚指輪がある。

魔導具ではあるが、デザインもとても美しい。

金細工に、エメラルドとサファイアの宝石が並んでいた。

サルジュがずっと前から、忙しい合間にこの魔導具を考案していたことを、アメリアは知っていた。

あのサルジュが、何度も試作品を作り、改良を重ねた渾身の魔導具だ。

それを結婚指輪としてアメリアに贈ってくれたのだ。

誓いのキスで初めて触れた唇に、アメリアは真っ赤になってしまい、サルジュはそんなアメリアを愛しそうに抱きしめる。

少し休憩を挟んだあとは、次は夜のパーティの準備に追われた。

パーティ用のドレスは、白にするかサルジュの瞳の緑にするか、ソフィアと王妃もかなり悩んだらしい。

でも婚約披露パーティも白いドレスだったのだからと、今度は緑色のドレスになった。

落ち着いた翡翠のような色のドレスはデザインも大人っぽく、かわいらしい感じだったウェディングドレスとは、まったく違うデザインだ。

「アメリアも、もう王子妃ですからね」

準備を終えたアメリアを見て、ソフィアもマリーエも上機嫌でそう言う。

「大丈夫、かな? 似合う?」

何度も鏡を見て確認する。

「もちろん。ただ、スカートの裾が少し長いから、ダンスのときは気を付けてね」

「ええ、わかったわ」

そう忠告されていたのに、パーティが始まり、サルジュとファーストダンスを踊っていたときに、ついスカートの裾を踏んでしまい、転びそうになった。

「きゃっ」

でも、サルジュが危なげなく支えてくれた。

その腕に掴まってほっとする。

さすがに、結婚式のパーティのダンスで転びたくない。

「サルジュ様、少し背が伸びましたか?」

新入生歓迎パーティで、初めて踊ったときに比べで目線が高いことに気が付く。

そう尋ねると、サルジュは嬉しそうに頷いた。

「うん。もうユリウス兄上と変わらないよ」

そう言われてみれば、そんな気もする。

思わずユリウスとサルジュを見比べると、それに気が付いたユリウスが少し複雑そうな顔になる。

「わたしなんか、昔とそんなに変わらなくて」

背も伸びず、なかなか学園を卒業しても大人びた身体つきにならない自分の身体を見て嘆くと、サルジュはアメリアの手を握る。

「アメリアはそのままでいい。アメリアの、好奇心の強くて、謙虚なところ。集中力。困っている人を放っておけない優しさ。虐げられても折れない強さ。すべて、愛しいと思っている」

「サルジュ様……」

普段はあまり言葉にしないサルジュが、こんなことを言ってくれるなんて思わなかった。

結婚式前は、見た目も好きになってほしい。綺麗だと言ってほしいと願っていた。

けれどアメリア自身を、アメリアという人間を好きになってもらえる方が、こんなにも嬉しく、得難いことなのだと知った。

「わたしもサルジュ様のことが好きです。サルジュ様と出会えたことで、わたしの人生は光を取り戻しました」

煌めく金色の髪に、光属性の魔法。

サルジュはアメリアの人生を、これからも照らしてくれる光だ。

そんなアメリアの言葉に、サルジュは嬉しそうに笑う。

ほとんど表情を変えず、いつも淡々としていて、まるで人形のようだと言われていた第四王子の満面の笑顔に、周囲の人間か驚いた様子でざわめく。

けれど親しい身内にとっては、アメリアと一緒にいるときの、いつものサルジュだ。

ファーストダンスが終わり、アメリアはサルジュから少し離れて、マリーエやクロエ。そしてミィーナや研究所の同僚たちと話をする。

祝福の言葉に笑顔で答えていると、ふと誰かがこちらを伺っていることに気が付いた。

「あ……」

見覚えのある顔に思わず声を上げると、彼女は思い切った様子で声を掛けてきた。

「あ、あの……。アメリア様、ご結婚おめでとうございます。私、あの日のことを謝りたくて」

「エリカさん」

学園の寮に入ったとき、隣の部屋だったエリカだった。

親しくなり、友人になれるかもしれないと思っていたのに、リースに陥れられたアメリアの評判を聞き、巻き添えになることを恐れて、去っていったのだ。

顔も知らない、誰かも知らない人に嫌われるよりも、親しく言葉を交わしたエリカに嫌われて、ショックを受けたことを思い出す。

(でも……)

エリカは勇気を出して、こうして謝罪してくれた。

マリーエやクロエと一緒にいるアメリアに声を掛けるのは、とても勇気が必要だったに違いない。

もしかしたら、アメリアが特Aクラスに入って、普通の授業に通わなくなってからも、あのときのことをずっと後悔していたのかもしれない。

「ありがとう」

だから、アメリアは笑顔でそう答えた。

「あのときのことも、もう気にしないで」

もう一度友人になれるとは、さすがに思えないけれど、それでもずっとあの日の後悔を抱えてほしくはない。

「アメリアは、優しすぎるわ」

少し休もうと休憩室に移動すると、一緒にいたマリーエが呆れたように言う。

アメリアは何も言わず、ただ笑顔を向けた。

アメリアだって、誰かを羨んだり、嫌な感情を覚えることはある。

でも、サルジュにふさわしい人間になりたいと思うと、そんな感情はすぐに消えていく。

満たされたアメリアの笑みに、マリーエも納得したように頷いた。

「でも、そうね。それが、アメリアだったわ」

どの瞬間を思い出しても、最高だったと思えるような一日だった。

これからはサルジュと、どんなときも離れることはない。

ずっと一緒にいられる。

そう思うと、今日がしあわせの絶頂期ではなく、始まりの一歩だということがよくわかる。

これからもこの幸福な時間が続くように、精一杯がんばろう。

一日の終わりに、サルジュと一緒に月を眺めながら、アメリアはそう誓う。