軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-23

ユリウスとマリーエの結婚式は盛大に行われ、各国からも祝いの言葉が届いた。

しあわせそうな姿に、ふたりを出会いから見ていたアメリアも、思わず涙を流す。

そんなアメリアを、サルジュは黙って抱き寄せてくれた。

サルジュとアメリアが結婚祝いとして贈った魔導具も、とても喜んでもらえたようだ。

とくにマリーエは、国外に出ることの多いユリウスをいつも心配していたらしく、これで少し安心できると、涙ながらに感謝を伝えてくれた。

ふたりの結婚式が無事に終わると、次はアメリアの番だ。

今回の主役のふたりからも周囲からもそう言われて、とうとうサルジュと結ばれるのだという実感が沸く。

サルジュの母である王妃とソフィアの関心はアメリアに移り、最近は学園が終わったあと、ふたりに呼ばれることが多くなった。

「頻繁に呼び出してごめんなさいね。でも、今のうちに決めてしまいたいことが多くて」

ソフィアと王妃はそう言って、ドレスのデザイン図をアメリアの目の前に広げた。

アメリアも今まで忙しく、結婚式を心待ちにしながらも、まだドレスさえ決めていなかったのだ。

たしかにもうすぐ農作物の収穫期で、データを集めることに忙しくなることを考えると、今のうちにしっかり準備する必要があるのかもしれない。

「あの子は、もしかしたら結婚はしないかもしれないと思っていたのよ」

ウェディングドレスのデザイン図を眺めながら、王妃はそう言ってため息をついた。

「昔からひとりでいることを好む子で、あまり周囲と関わろうとしなかったから。このままずっとひとりで生きていくのではないかと心配していたの」

たしかに出会ったばかりの頃のサルジュは、傍にいる護衛さえも煩わしいようで、よく彼らを置き去りにしてひとりで行動していた。

あの当時に比べると、サルジュも随分変わったと思う。

護衛騎士であるカイドを置き去りにするようなことはないし、アメリアの忠告も、嫌な顔をすることなく聞き入れてくれる。

アメリアだけではなく、兄たちの言葉も、よほど研究に集中していなければ言うことを聞くようだ。

それを、王妃はアメリアのお陰だと感謝してくれた。

「……そんな。わたしは、何も」

「いいえ、あなたのお陰よ。人と関わることの大切さを、あの子に教えてくれたのは間違いなくあなただわ」

「わたしも、サルジュ様に救われました」

王妃の言葉を嬉しく思うと同時に、自分もサルジュによって救われたことを伝えたくて、アメリアは語る。

「あのとき、サルジュ様が手を差し伸べて下さらなかったら、きっとわたしは、もう誰も信じられなくなっていたかもしれません。こうして今、信頼できる人たちと一緒に、しあわせに暮らすことができるのは、すべてサルジュ様のお陰です」

そう言うと、王妃はサルジュによく似た美貌で、嬉しそうに笑う。

「素敵ね。出会ったことで互いの人生が素晴らしいものになったのなら、こうしてふたりが結ばれるのは、運命だったのよ」

運命の恋。

アメリアも少女だった頃、憧れていた。

婚約者のリースがそうだったらいいなと、夢見たこともある。

けれど、もうすぐ結婚する婚約者のサルジュが、アメリアの運命だったのだ。

そう思うと、幸福感が胸に満ちる。

「はい。わたしもそう思います」

アメリアは、笑顔でそう言った。

こうして忙しいながらも、ソフィアと王妃のお陰で結婚式の準備は着々と進んだ。

先に王家の一員となったマリーエも、アメリアをサポートしてくれる。

ソフィアによる勉強会も再開され、マリーエと一緒に王家について学んだ。

ライナスも順調に育っているようで、ソフィアもとてもしあわせそうだ。

乳母もいるが、母親が子どもを抱かないなんてことはあり得ないと、ソフィアも率先して世話をしているようだ。アメリアもマリーエも、ライナスを抱いてあやしたりしている。

魔力を調整する腕輪のお陰か、機嫌が良くて、すやすやとよく眠っていることが多い。

「アレクシスが子どもの頃、この腕輪があったら良かったのに」

そう言う王妃の言葉は、少し切なそうだった。

アレクシスを隔離しなければならない国王と王妃も、つらい日々を送っていたのかもしれない。

「でも、これからはどんなに魔力が高い子どもが生まれても大丈夫ね。次はユリウスかしら。それともサルジュかしら」

王妃は、ユリウスの母である側妃ともそう言いながら、楽しそうに過ごしているらしい。

アレクシスの子どもだけではなく、これから生まれる子どもたちのためにも、あの魔導具を作れてよかったと思う。

サルジュはずっと、ベルツ帝国の問題にかかりきりで、アメリアと別行動することも増えていた。

それでも夕食後には必ずふたりで、寝るまでの時間を図書室で過ごす。

この日も図書室で、それぞれの仕事に着手していたが、ふいにサルジュがアメリアに声を掛けた。

「近いうちにもう一度、ベルツ帝国に行こうと思う」

「え?」

驚いて、思わず聞き返す。

そう言えばユリウスとマリーエの結婚式の前に、サルジュがアレクシスにそうしたいと言っていた。

それを思い出す。

ベルツ帝国の事情を忘れていたわけではないが、このところあまりにも忙しくて、日々の用事をこなすのが精一杯になっていた。

またユリウスと一緒に行くのかと思ったが、たしかユリウスは今、ソリナ王国に赴いており、アレクシスとサルジュが一緒にベルツ帝国に向かうことはないだろう。

「ユリウス様が、戻られてからですか?」

「いや、帝都にある古い建物の内部を調べるだけだから、カイドだけを連れていくつもりだ。二、三日で戻るよ」

「……そうですか」

一緒に行きたいと思うが、まだ学生のアメリアは学業優先であり、そろそろビーダイド王国の各地でグリーの収穫が始まる。さまざまな領地から集まってくるデータを、素早く集計しなければならない。

サルジュもそれがわかっているからか、今回はアメリアを連れていくとは言わなかった。

「どうかお気を付けて」

不安を押し隠してそう言うと、サルジュは笑って頷く。

「カイドがいるから大丈夫だ。アメリアも準備で忙しいかもしれないけれど、あまり無理はしないように」

優しくそう言われて、こくりと頷く。

(でも二、三日とはいえ、サルジュ様と離れてしまうなんて)

初めての公務のときも、役目は違っていたが一緒だった。

ベルツ帝国に赴いたときも、一緒に連れて行ってくれた。

けれど今回は、本当に離れてしまう。

少し不安になるけれど、皇帝カーロイドは回復して、犯人も捕らえられ、関係者もすべて罰せられた。

カイドも傍にいてくれる。

だから大丈夫だと、自分に言い聞かせる。

「必ず期限までには、必ず戻るよ」

「約束ですよ」

「ああ、もちろん」

そう言って翌々日には、カイドだけを連れて、サルジュはベルツ帝国に向かった。

「アメリア、大丈夫よ」

心配で、思わず何度も手を止めてしまうアメリアを、マリーエが慰めてくれる。

マリーエもソフィアも、何度もこうして、ただ待つことしかできない日々を過ごしてきたのだろう。

王族の妻となるからには、こんな日にも慣れなくてはならない。

それがわかっていても落ち着かない様子のアメリアを、リリアーネが慰めてくれる。

「カイドがお傍におりますから、大丈夫です。カイドはとても強いんですよ」

「そうね。うん、ありがとう」

たしかにカイドは信頼できる騎士だ。

アメリアはここで、自分にできることをやるしかない。

レニア領地でもグリーの収穫が始まり、父から収穫量を記載した手紙が届いている。

(お父様が、こんなに詳しいデータを作ってくれるようになったなんて)

以前の父は、アメリアが集めたデータに何の興味も示さなかった。

けれどアメリアがサルジュと婚約し、レニア領の一部がこの国の農業の試験場のようになってから、現地にいないアメリアの代わりに、事細やかにデータを送ってくれる。

領地の仕事にも、以前よりも積極的に取り組んでいた。

国の役に立っていることと、レニア領のデータが必要とされていることが嬉しいようだ。

ずっと抱えていた、土魔法に対する劣等感から解放されたことも大きいのかもしれない。

父からと、各地に依頼したデータが次々に届き、アメリアも忙しくなって、思い悩むこともなくなった。

それに、サルジュは二、三日で戻ると言っていた。

そうなったら、今度はベルツ帝国から持ち帰ったデータの整理で忙しくなるだろうから、今のうちに、できる仕事はしておいた方がいい。