軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第177話 誰かさんにそっくりだね

オオサカの中心に聳え立つオオサカ城。

この地を治める領主トヨトミの居城であるそれは、五重に積み重なった搭状の建築物だ。

特徴的な淡い緑色の瓦屋根、そして至るところに施された黄金の装飾が、陽光を浴びて燦然と輝いている。

「……ええと、カナエ。これが本当にあなたのお父さんの実家ですか?」

「そうなんや。うちのおとん、生まれがこのトヨトミ家らしくてな」

そのお城をぐるりと囲む巨大な石垣とお堀を前に、アンリエットたちが思わず立ち竦む。

「いや、アンリ、じぶんかて領主の娘やんか」

「アンリエット殿は分かる。冒険をしていても、生来の貴族らしい気品は隠し切れていない。だがカナエ殿は……」

「ちょっ、フィーリアはん? それ、うちのことディスってへん?」

リオンは言った。

「うん、フィーリアお姉ちゃんの言う通りだと思うな」

「リオンはんまで!? ……まぁ、うちがここにおったんは数年くらいやしな。それにおとんはもちろん、そもそもトヨトミ家自体があんまそういう感じちゃうし」

そんな話をしながら、一行は城門までやってくる。

「ん? なんや? こんな時間やのに門が閉まっとるな。それに、よく見たらえらい警備が厳重やし……」

「お前たち、何の用や? 見かけない顔やな?」

近づいていくと、門を守護していたサムライらしき男が警戒した様子で立ち塞がった。

「今お城は厳戒態勢中や。関係者以外、何人たりとも立ち入りは許されてへん」

「厳戒態勢……? どういうことや?」

「生憎と詳しいことは教えられへんのや」

緊張感のある空気が漂っており、どうやらよっぽどの事態が起こっているらしい。

「えーと、一応うちはトヨトミに所縁あるもんなんやけど」

「なに?」

「うちのおとん、ヒデナカいうんや」

「ヒデナカ……? まさか、ヒデミツ様の弟君のっ……し、しかし、すんなりとそれを信じるわけには……何かそれを証明するものでもあるのか……いえ、あるんどすか?」

「そう言われると困るなぁ……」

と、そこへ牛が引く車が門へと近づいてきた。

牛車と呼ばれるこれは、この国では馬車の代わりとして重宝されているものだが、荷台の豪華さから考えて、恐らく身分の高い者が乗っているのだろう。

「なんや、何があったんや?」

「ヒデカツ様。実はこの者がヒデナカ公の娘であると……」

その牛車から降りてきたのは、まだ十五かそこらの少年だった。

「もしかして、じぶん、ヒデカツやないか?」

「っ! そういうじぶんは、カナエねえやないか!」

どうやらヒデカツと呼ばれた少年はカナエの知り合いだったらしい。

「えらいおおきなったな~」

「そういうカナエねえこそ……おおきなったやん」

少年はカナエの豊かな胸を凝視しながら言う。

「その辺は相変わらずやなぁ、じぶん……」

カナエは呆れたように息を吐いた。

「カナエお姉ちゃん、この人は?」

「うちの従弟や。小さい頃は女中の胸やお尻を触っては喜ぶ変態で、城中の女たちから嫌われとったなぁ」

「……誰かさんにそっくりだね」

従弟というのも頷ける。

そのカナエは先ほどのサムライを見遣り、

「これが証明になるか分からへんけど、他にもヒデカツのことは色々知っとるで? 女中の下着をこっそり隠しとったのは、畳の裏――」

「おいおい待て待てっ! うん、間違いない! カナエねえや! わしが保証する! せやからそれ以上、恥ずかしい過去を暴露するのはやめといてくれ!」

そうしてリオンたちは、オオサカ城内に入ることができたのだった。

トヨトミ家の現当主はヒデタツというらしい。

このヒデタツのすぐ下の弟がヒデナカで、それがカナエの父親に当たる人物だ。

そしてヒデナカの弟に、ヒデアツという人物がいる。

それがヒデカツの父親だった。

当主ヒデタツに近いトヨトミ家の者たちは、オオサカ城内に屋敷があって、そこで暮らしているという。

そして中央に聳え立つ天守閣とも呼ばれている本城には、当主とその子供たち、それから奥方たちが生活しているそうだ。

ヒデカツに案内されて連れて行かれたのは、ヒデカツの父ヒデアツの屋敷だ。

敵に攻め込まれたとき、真っ先に撃退に向かうことができるようにと、城門のすぐ近くにあった。

その広い庭には、ヒデアツ公が集めたサムライたちが集合していた。

まるでこれから敵と一戦交えようかという物々しさである。

「えらい物騒やな。一体何があったんや?」

「詳しいことは父上から聞いた方が早いわ。すぐ呼んでくるで」

しばらくするとヒデカツに連れられて中年のサムライがやってきた。

「「っ! ちょんまげ!」」

双子が思わず叫ぶ。

百年のうちにすっかり廃れてしまったようで、ヤマト国に来て初めて、その髪型をした人物を見たのだ。

「おお、カナエ! 久しぶりやな! 会いたかったで!」

チョンマゲ頭のサムライが気さくな感じで近づいてくる。

「あんときはまだ十歳くらいやったか? 随分おおきゅうなったなぁ! ……そっちの方も」

「おじさんは相変わらずやわ……。てか、親子そろって二言目がそれかいな。どないなっとんねん」

またしても嘆息するカナエだった。