軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第176話 心の友よ

「儲かりまっか!」

「ぼちぼちでんなー」

「まけてくれへんかー?」

「なんでやねん!」

「ほな、さいなら」

「おおきにおおきに!」

オオサカの街は非常に賑やかだった。

カナエとそっくりな癖のある喋り方があちこちから聞こえてきて、それがやけに耳に残ってしまう。

「これは確かに影響を受けてしまいそうですね……」

「せやろ。うちの訛りもまた強くなりそうや」

「カナエ殿、おおきにとはどういう意味なのだ?」

「ありがとう、みたいな意味やったと思うで。うちはあんま使わへんなー」

百年前は真っ直ぐエドに向かい、用事を済ませたらすぐに大陸へと引き返したため、リオンもここオオサカに来たのは初めてのことだった。

ちなみに勇者であるリオンがわざわざこんな極東まで足を運んできたのは、この地でしか手に入らないアイテムが必要だったためだ。

『そのときに拙者と会ったのでござるよ!』

「何人もと戦ったからあんまり覚えてないんだよな……」

外国から来た勇者。

その噂を聞きつけ、血気盛んなこの国のサムライたちが、己の名を上げるため次々と挑んできたのである。

いちいち一人一人のことなど覚えているはずもない。

『……拙者のような女のサムライは珍しいはずでござるが』

「うーん、いたような、いなかったような」

「こういう人なんですよ! 私のことも全然覚えてないんです! そもそも人間に興味ないんですよ、この人は!」

『ほんとにそんな感じでござるな』

なぜかシルヴィアまで割り込んできて、二人(?)そろって不満そうだ。

「前世の記憶なんだから曖昧でも仕方ないと思うんだが」

そのとき何か気になるにおいでも嗅ぎ取ったのか、双子がくんくんと鼻を動かす。

「「おいしそう」」

食べ物のにおいだったようだ。

相変わらず食い意地が張っている。

香ばしいにおいに釣られて、双子がふらふらと近くの屋台へと吸い寄せられていく。

「何だ、あれは?」

屋台では何かを焼いているようだったが、それはリオンも知らないものだった。

鉄板らしきものの上に、球状の物体が幾つも並んでいる。

「リオンはん、あれはタコ焼きやで」

「タコ焼き?」

「小麦粉の生地に、タコやらを入れて焼いた食べもんで、お好み焼きに並ぶオオサカの名物グルメの一つや。専用のソースをかけて食うと、これがまた絶品なんやで」

【食帝】の目で、リオンはそのタコ焼きを見る。

「なるほど。生地に混ぜる出汁や薬味、中に入れる具材、それに焼き加減やソースなどで、色んなバリエーションを楽しむことができそうだね。このお店は全体的にとろっと仕上げるタイプかな。あの串みたいなやつでひっくり返すみたいだけど、繊細な技術が要求されるね」

「……何で見ただけでそんなことまで分かるんや?」

初見でタコ焼きの神髄を分析するリオンに、カナエが首を傾げている。

「へい、おまち!」

できあがった熱々のタコ焼きを前に、双子は目を輝かせた。

ほくほくと湯気が立ち昇り、上にかけられた鰹節が威勢よく躍っている。

「熱いからフーフーして食べるんやで!」

店主のおじさんがそう注意するも、双子の耳には右から左だった。

すぐに小さな口へと丸ごと放り込む。

「「~~~~っ!」」

「おい、獣のボウズら、大丈夫か!?」

「「ほいひい!」」

「……へ? あ、熱くないんか?」

「「もぐもぐもぐ」」

双子のステータスを考えれば、ちょっとやそっとの熱さは問題ない。

それを知らない店主は目を丸くしている。

「う、うちのタコ焼きは噛むと中から熱湯のような汁が飛び出してきて、ほとんどの口の中を火傷するっちゅうのに……」

「な、なんじゃ、その危険な食べ物は……」

オオサカには随分と危険な名物グルメがあるんだなと、メルテラが頬を引き攣らせる。

「「もぐもぐもぐ……おかわり!」」

「お、おう」

「じゃあ僕も貰おうかな」

「うちもうちも!」

「あ、では私も一つ」

「まいど!」

双子があまりに美味しそうに食べるので、リオンとカナエも食べたくなって注文することにした。

アンリエットにフィーリア、負けじとメルテラもそれに続く。

興奮して「はぁはぁ……ロリショタに食べられたい……」と呟いているティナは放っておけばいいだろう。

「うん、美味しい」

「熱っ!? ちょっ、リオンはん、よくこれ冷まさずに食べれんな!?」

「ふふん、わらわだってそのまま食べれるのじゃ! あむっ! ~~~~っ!? あああああああああっ!?」

対抗して丸ごといったメルテラが悶え苦しんでいる。

ホムンクルスのくせに耐性が低いようだ。

「た、確かに熱々ですね……でも美味しいです」

「ああ。名物となるのも頷ける美味さだ」

アンリエットとフィーリアの真面目コンビは、しっかり冷ましてから食べている。

「う~、いつもこういうとき一人だけ交ざれないのが悲しいです!」

『シルヴィア殿、食べれないのは拙者も同じでござるよ!』

「はっ!? もしかして、もう私は一人じゃない!?」

『ああ、一人ではないでござる!』

「うえーん、やっとこの気持ちを共有できる人ができました~~っ!」

『おお、心の友よ!』

シルヴィアとキサラギは意気投合している。

「それで、カナエお姉ちゃんの実家ってどこにあるの?」

タコ焼きに舌鼓を打ったリオンは、カナエに問う。

「あそこやで」

と、彼女が指さす先にあったのは。

「え? お城?」

街の中心に聳え立つ城――オオサカ城だった。