軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1.まずは初めまして(ユリシーズ・次からはY表記)

「どういうことです、父上っ!」

執務机をダンッ! と叩き、侯爵であり、当主である父に怒りを向けた。

「何がだ」

「何故勝手に私の婚約が結ばれているのかと聞いているんです! 私は騎士として独り立ちすると言ったでしょう!」

「お前は本当に阿呆だな。騎士になろうが独り立ちしようがお前はオーウェル侯爵家の人間だ。絶縁でもしない限りな。

それとも籍を抜け、完全に家を捨てるのか? そうなれば今以上の地位に就くのは難しいだろうなぁ」

「ぐ…っ!」

クソ親父めっ!だが確かに、完全に家を捨てて平民になってしまえば、近衛騎士団では上にいけないだろう。

侯爵家というしっかりとした身分があるから、与えられた職務でもある。

「家の名を使うのであれば、家に利益を 齎(もたら) すのは当然だろう。それに、相手は子爵家といえども古くから続くバックス家だぞ。

次女のジャスミン嬢は17歳。とても可愛らしいご令嬢だ」

「17歳だなんてまだ子供じゃないですか」

「16を越えたら大人だろう。6歳も若い妻などありがたいと思いなさい。

婚約期間は一年。彼女が卒業したら結婚の予定だ。隊長にもその旨連絡済みだからな」

……外堀から埋めてきやがった。

「相手から拒否されるかもしれませんよ」

「その顔で? 何だったかな、白百合の騎士様?」

「……二度とその名を出さないでいただきたい」

「おお、そうだな。 燦(きら) めく白銀の髪に海を映したかのような涼し気な瞳。その美麗な姿から繰り出される 剣戟(けんげき) は「父上っ‼」

こんなにもムカつくオッサンが侯爵だなんて世も末だ。

「顔合わせは一週間後だ。家族総出だと可哀想だからな。まずはふたりで話が出来るようにしておこう」

「いや、いきなり二人きりもおかしいでしょう?」

「なんだ。また押し倒されそうで怖いのか」

「……もう12歳の頃とは違います」

私は何故か女性にモテる。異常な程に好かれてしまうのだ。

あれは12歳の時。つい、図書室のソファーでうたた寝をした私が馬鹿だった。人の気配を感じて目を開けると、そこにはメイドのどアップが。

ギリギリ唇を守ったが、メイドは口を守った私の手を自分の胸に押し付けながら馬乗りになってきて、ズボンのベルトに手を掛けたのだ。

「ぎゃ─────っっつ!!!」

屋敷に私の叫び声が木霊した。

その頃は小柄でまだ150cmに届かないほどで、10cm以上背の高い肉感的な女性にのし掛かられて動けなかったのだ。

あの時の恐怖と屈辱。二度と弱味は見せないと誓い、剣の道に進んだ。

だが、その後も 敵(女) は私を狙って来た。

訓練が終わると多種多様な香水をつけた令嬢が群がり、臭いに酔って吐きそうになった。

気持ち悪さにふらついた私を、

「私が介抱いたしますわ♡」

と、これまた胸を押し付けられ、あまりの気持ち悪さに気を失った。先輩が助けてくれていなかったら私はあの時食べられていたであろう。

その後も怪しげな手作りのお菓子や呪いのグッズのようなプレゼントが毎日の様に届けられた。

ついには夜会で薬を盛られて貞操と命の危機を迎えたりもした。ヤラないと死ぬくらいの媚薬ってどうなの。それってもう毒だよな?

何とか医師の中和剤が効いて命の危険は脱したが、あと少しでユリシーズ・オーウェルの死因が媚薬という恥ずべき最期を迎えるところだった。

「と言う訳で私は女性が苦手です。爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い」

本日は初めての婚約者との顔合わせの場。子爵令嬢と顔を合わせるなり、 如何(いか) に女性が苦手であるかを語った。

駄目なところを包み隠さず見せたほうが良いだろうと判断したためだ。

突然相手からこんなにも失礼な態度を取られたら、17歳の年若い令嬢なぞ泣いて逃げると思ったのだ。

それなのに──

「え?だって初対面です。爵位と外見以外に貴方様を判断できるものなどございませんよ?」

令嬢はきょとんとしながらも、何を言ってんのコイツ、と言わんばかりに可愛らしい声で答えたのであった。