軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第13話

とろとろのチーズをまとった具材を口に入れる。味はもちろん――

「「「ウマーイ!」」」

「おいしい!」

「うまいな」

――最高!

特産のヤギのチーズを使ったと村長さんが言っていたため、すこしクセがあるのかと思っていたが、あまり感じない。ただ、チーズとは違う匂いがふわっと香ってきて……。

「これは、さくらんぼ酒が入っているのか?」

ザイラードさんがふむ、と唇に指を当てながら呟く。

たしかに、そう言われると、ちょっとフルーティーな香りがした気がする。私にはそれがなにを使ったものかわからなかったが、ザイラードさんはその正体に気づいたようだ。さすがザイラードさん。できる男。

そんなザイラードさんの言葉に、村長さんがにっこり笑って頷く。

「おお、ご名答じゃ! さくらんぼ酒もこの村の名産でしてのぉ。風味付けに使っております」

「ああ、いい香りだ。ところでこれはアルコールは飛んでいるのか?」

ザイラードさんの言葉にハッと気づく。そして、慌ててレジェド、シルフェ、クドウ、コウコちゃんを見る。みんな酔っぱらってない!?

魔物たちにお酒を飲ませてしまったかと焦る。そんな私を、村長さんは「大丈夫ですじゃ」と落ち着かせてくれた。

「チーズはワインと混ぜて溶かしておりますが、先にワインは火にかけてアルコールは飛ばしてあるんじゃ。さくらんぼ酒は最後に風味付けに少量入れているだけなので、こどもでも食べて大丈夫ですじゃ」

「あ、そうなんですね、よかったです」

村長さんの言葉にほっと息を吐く。

一瞬想像してしまった、酔っぱらって暴れる魔物たちの図が消えていく。よかった。酔ってなんとなくとろけた魔物たちが暴れることはない。ここに蒲田くんは降臨しない。よかった。

私が怖い想像に身震いしていると、その本人であるレジェドがばさばさと翼をはためかせた。

「トール、オレ、モット、タベタイ!」

「ボクモ!」

「ワイモマダ食ベレルデ」

「私は次はお肉を食べたいわ!」

かわいい魔物たちが目をきらきらさせて私を見つめる。みんなが楽しそうで、心がぽかぽかあたたかい。みんなに応える私ももちろん笑顔だ。

「うん! いっぱい食べよう! みんなの分を取るからね」

「うむ。私は次は野菜にしよう」

みんなの分を作っていると、猫王子が当たり前のように頼んでくるが、まあしかたがない。猫はかわいいから。

そんなわけで猫王子の分を作ろうとすると、ザイラードさんが「大丈夫だ」と笑って、私から具材を奪う。そして、チーズをたっぷりつけると猫王子のお皿へと乗せた。

「お前はなんでもトールに頼むのをやめるんだな」

「私とて屈辱だ! だが、この手ではなにもできん!」

猫王子はそう言うと、オレンジのしましまの前足を私に見せるように上げる。

「くっ……」

見せてきた足裏はふわふわの真っ白な毛が密に生えていた。そして、そこにはとってもかわいらしいピンクの肉球。かわいいね……かわいいね……。

言葉を失くし、胸を抑える。

猫王子の挙動にうめく私に、ザイラードさんが「はぁ」とため息を吐いた。

「トールはかわいいものに弱すぎないか?」

「うっ……そうですよね、すみません。わかっているんですが、クラクラしてしまうんですよねぇ……」

はい。正直に言おう。

弱い。非常に弱い。

「……俺には?」

「……俺、ですか?」

ザイラードさんの言葉がよくわからず首を傾げる。

すると、そんな私の首の角度に合わせて、ザイラードさんも首を傾けた。

そして――

「――俺にはクラクラしないのか?」

――ぐぅっ色気!

眉尻が下がり、どこか寂しそうな空気。なのに目はじっと私を見て、なんとなくギラッとしている。そして、その唇がそっと私の耳へと近づき……。

「俺はいつもトールの魅力に参っているんだが」

「ひぅっ」

その言葉に頬がボッと熱くなる。というか、頬だけではない、なんだか体が熱い。胸がぎゅうと苦しくなり、なんだか居ても立っても居られないような、なにかこうどこかへ逃げたいような、けれどこのままここにいたいようなおかしな気分になった。

こ、これはよくない。おいしいチーズフォンデュとかわいい魔物たちで潤った心がなんだかそわそわする。そう。端的に言えば胸が爆発する。無理。

「あ、あ……あ……」

もう、これは言葉は出ません。クラクラするとかじゃないんですよ、ザイラードさん。もう、パンッて感じです。

熱い頬と体、そしておかしいぐらい早くなった鼓動のままなにも言えない私。

ザイラードさんは私の耳から顔を離すと、そんな私をじっと見つめる。そして、とても嬉しそうに笑って――

「……どうやら、トールは俺にも弱いみたいだな」

――おっしゃる通り。

***

東の村の集会所で透たちが食事をしている間、一匹の白いコウモリがパタパタと森を飛んでいた。

そこは村人たちが巨大な魔物が現れ、暴れたという場所だ。今は透と魔物たちの力によりきれいに整地されているが、当初は倒れた木が折り重なり、まさに災害の跡のようであった。

白いコウモリ――ベルナドット十一世は倒れていない木の枝に止まると、ボソリと呟く。

「……人間の食事を欲しがる巨大なネズミの魔物、ですか」